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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
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ウィンディーネの眷属


(コオにお願いがあるのよぉ)

唐突にウィンディーネがそう言った。


ウィンディーネは私にあまり無理を言った事は無いが

いつでも突然突飛な事を言い出したりするので

何となく身構えてしまったが

(そう言えば私も聞いてみたかった事があるの)

そう言って少しだけウィンディーネを牽制した。


(あらぁ、やっぱりしばらく会わない間に

コオは随分と成長したみたいじゃないのよぉ)

いったい何をもって成長したと感じたのかは分からないが

ウィンディーネは私の成長を認めてくれた様だった。


(私だってただ遊んでた訳じゃ無いですからね)

私は褒められた嬉しさをこそばゆく感じながら

それを誤魔化すかの様な返事をしていた。


すると突然の様に

(ここにはね私の眷属である人魚が居るのよ

海の中の安全のために魔物と戦ってくれているの

でもそれはあまり人間に知られたくない事だから

出来る事ならこの大陸にはあまり人間を近づけたくないのよ)

ウィンディーネはいつもの様なのんびりとした言い方でなく

強い口調で私にそう言って来た。


(どうして人間に知られたくないの?)

(人魚を同族の様に受け入れる事が出来ないと思うのよ

それで争いが起こるのは私の望む所じゃ無いの)

(まぁ陸と海で済む所が違うのは確かだけど

受け入れられないって事は無いと思うんだけど)

(そうね私が少し臆病になっているのかも知れないけど

エルフやドワーフがどの位受け入れられるか

それを見てから考えようと思っているのよ)

ウィンディーネの考えは何となく私にも理解出来た。


私はおとぎ話で人魚の存在を知っているけど

この世界の人達はどう感じどう受け入れるかなんて

まったくの未知なんだから心配するのは当然だ。


ウィンディーネにもそこまでの予測が出来ないとなると

それは当然なのだろう。


(この島々にはそう簡単には来られそうも無いから

人間がここに立ち入るのはずっと先の話だと思うよ

だからそれまでにはウィンディーネの心配も少しは減るかもね)

気休めではなく私は心からそう願って言ってみた。


それにしてもウィンディーネにも眷属がいたのか

どうりでサラマンダーが眷属の誕生を熱望する訳だ。


と言う事はアウラにも眷属っているのだろうか

私はふとそんな事を考えていた。



(それで私に聞きたい事って何かしらぁ)

すっかりと口調が戻ったウィンディーネは私にそう聞いて来た。


(あのナルセスとセラムの事よ

かなりしつこく私に関わってるんだけど何かあるの?)

(あらぁ、私は本当にあの子達の能力に惚れたのよぉ)

(だって素性も事情も知っていたんでしょう

私かなり感情的になっちゃったよ)

(そうねぇそれを乗り越えてあの子達を認めて頂戴なぁ

コオにとっても損は無いと思うんだけどぉ)

(損得じゃなくてお互いが歩み寄れていないのよ

その時点でまったくダメじゃないの)

(あらぁコオも成長したんですものぉ

あの子達だって成長していると思うのよぉ

後は歩み寄る切っ掛けって所じゃないのかと思うのよぉ)

まるですべて分かっているかの様なウィンディーネの言葉に

少しイラっとしたが、言っている事は私なりに理解出来ていた。


少なくとも私に召喚された時の事を忘れさせないため

では無かったと言う事が確認されたのは確かだった。


(今はなるべく関わらない様に避けてるって所よ)

(ふふ、それも良いんじゃないのぉ

コオの事はコオが決めれば良いのよぉ)

私に期待しているのかと思えば

この突き放したかの様な言い方で

本当の所いったい何を考えているのかまるで分からない

いつもこうやって煙に巻かれていた気がする。


私がきっちりと理解出来る様に説明する気は無いのだろう。


もっとも私も深く考えるのは苦手で

結局の所流れに身を任せている様なものだから

それが妥当な所なのかも知れないと納得していた。


(機会があったら歩み寄ってみるよ)

私はそう言ってナルセスとセラムの話を終わらせた。


(それよりサラマンダーがね

私に眷属を産んでくれって言ったんだけど

そんな事って可能なの?)

私は避けては通れない問題を聞いてみた。


(あらあらぁ、サラマンダーはなんて言ったのか

私もう少し詳しく聞きたいのだけれどぉ)

(だから人間の眷属を誕生させたいから

私に子供を産んでくれって

その為にはウィンディーネの力が必要だって

そんな風に言っていたと思う)

なるべく正確に言われた事を思い出しながら伝えた。


(あらぁ、サラマンダーは人間の眷属が欲しかったのねぇ)

(いずれ国を作るって言ってたかな)

(ふふ、サラマンダーの野望って所かしらぁ

そうねぇ、もう少し力を取り戻したら協力するわぁ)

(いや、私はまだ決めた訳じゃ無いから

ただ気になってたから聞いてみただけだから)

(あらぁ、サラマンダーの願い位聞いてあげなさいなぁ

そんなに身構える程大変な事でも無いと思うわぁ)

ウィンディーネはさも簡単な事の様に言って

さらにサラマンダーの願いを叶えてやれって言われ方をすると

私もそうだなって気になって来るから不思議だった。


恋愛とか結婚とか出産とか

元の世界での形式とか常識とかに縛られて

私が固く考え過ぎているだけなんだろうか。


私が精霊の為に出来る事なんだって考えれば

そんなに身構える程の事でもないんだろうか。


いや、でもやっぱり、一人の人間を誕生させるんだから

そこには責任が伴って来るんだよ

それは簡単に考えて良い事じゃ無いと思いたい。


それに出産は大変な事だって古くから言われてるし

やっぱり私には簡単に返事なんて出来ないよ。


(私が完全復帰するまで考えると良いわぁ)

ウィンディーネは私の迷いも考えも見抜いている様で

そう言って捻話を終わらせた。


そうだね、まだ考える時間はある

こればかりは真剣にきちんと考えてみようと

改めて自分に言い聞かせていた。



そうしてウィンディーネとの捻話を終わらせたけれど

アスターとディアンが合流してくるまでは魔力を流そうと決め

私は変わらずに地脈の中心部へと魔力供給していた。


人魚が居るんだとしたら私は会ってみたいけど

人魚の方が敬遠するんだろうか。


それに何処へ行けば会えるかも分かっていないし

もう少し詳しくウィンディーネに聞いておけば良かったと

何となく後悔していた。


ドワーフにもエルフにも性別があって集落もあった

と言う事は人魚にも性別があり集落もあるって事だよね。


人魚の集落となったら当然海の中だろうから

私が見つけたいと思っても探しに行く術を持たないって事か。


逆に向こうから会いに来てくれる様な方法を考えれば良いのか

たとえば海岸で会いに来てと念じてみるとか

人魚姫の物語を参考に船上でパーティーでも開いてみるとか

嵐の日に出航してみると言うのは命がけになるから却下だな

やっぱり私の考える事程度じゃどうも無理っぽい。


その内ウィンディーネに頼んだら会わせて貰えるんだろうか

うん、きっとそうなるって信じておこう。


人魚の事はそう結論付けて

私はまた魔力供給に集中して行った。



読んでくださりありがとうございます。

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