エルフの集落
シルフの大陸は私達とは別に調査隊が出向いていた。
マップも元々出来ていたので探索らしい探索は必要無かったが
シルフの復帰のために私の魔力を供給するのに
ダンジョンの作成と街道を作るのには協力する事にした。
アスターとディアンは私に同行する必要も無いと思ったのだが
二人は私と同行する事は譲れないと言い張り
結局一緒に行動する事になった。
シルフがこの大陸にも聖女を誕生させると言っていたが
その話はどうなっているのかも気になったが
私にそれを確認するすべが無かったので
少し感じる瘴気を頼りに瘴気が溜まりやすい所を探した。
そしてそこに定番となりつつあった大樹のダンジョンを作り
一人満足していると何かに呼ばれている様な感覚を覚えた。
別に名前を呼ばれるでも来いと言われているでも無く
引き付けられる様なそこに行かなくてはならない様な
そんな気が急くような感覚だった。
こんな事を感じるのは初めてだったので自信は無いが
呼ばれていると言うのは確かな様な気がしていた。
私はそれをアスターとディアンに上手く説明出来ず
「誰かに呼ばれている気がするんだってば」
そう言い張ってその方角へとひたすらワープを続けた。
するとそこは精霊の森から少し離れた場所にある
ひと際大きな森の中の一画だった。
地図を見ても別段森以外に町や村がある訳でもない
ただの大きな森の中だった筈なのに
大きな木の洞を利用して家の様にしてあったり
太い枝の上に櫓のような物を組み建て
そこには小屋が作られていたりと
そこはまるで誰かが住む集落の様だった。
気配を探知すると20人程の気配を感じたが
誰も建物から出て来る人影は無く
私はいったい誰に呼ばれたのか
それともそう感じたのは気のせいだったのか
その場に立ちすくみ考えこんでいた。
気が付けばアスターとディアンの姿は傍に無く
途中で逸れたか何処かへ置いてきてしまったのか
少し不安になりながらこの先どうすべきかを考えていた。
するとその内の一つの扉が開き中から出て来たのは
スラっとした体形のとても聡明そうな白髪のエルフだった。
ドワーフが居たんだからエルフもいるかもとは思っていた
出会えるとしたらこのシルフの大陸だろうとも思っていた
しかしまさかこうして呼ばれるとは思ってもいなかった。
私はいったいどうした良いのかと考えていたために
挨拶をするのを忘れてしまいただ立ちすくむだけだった。
「お呼び立てして申し訳ない」
エルフが私にそう言って来た事で我に返り
「やはり呼ばれたのは確かだったんですね」
私はまたまた挨拶も忘れそう答えていた。
「あなた様の強大な魔力を感じ
お願いがあってこうして来て頂きました」
エルフは話を急いでいる様で
挨拶や自己紹介より核心の話を始めたい様だった。
なので私も挨拶も自己紹介も省き
「私に出来る事でしょうか」そう聞き返していた。
「シルフ様の復帰に向けて私共に協力して頂きたい」
何を頼まれるのかと身構えていたが
まさかシルフの復帰の話が出るとは思っていなかった。
「いったいどうすればいいのでしょうか」
なので思わず前のめりで即座にそう答えていた。
エルフの説明によると大陸には地底に地脈と言う流れがあり
そこに魔力を流す事で
大陸や森の維持や管理が出来が出来るだけでなく
シルフにも力と影響を与える事が出来るそうだ。
シルフが消えた事を感じたエルフ達は
その地脈に向かい魔力を流し続けていたが
目に見える効果が現れずに少し焦り始めていた所
この地で感じた強大な魔力に助けを求める事にしたそうだ。
そもそもエルフ達はシルフの眷属であるらしく
長命で森の管理をするための能力に長けていて
シルフの手伝いの様な事を生業にしていたのだが
最近は人間の集落に出て行くエルフも増え
この集落に住むエルフの数も減ってしまったと嘆いていた。
「それで私はどうすればいいのでしょうか」
話が長くなり始め愚痴が出始めた所で
私は話を遮る様にしてそう尋ねた。
「ご協力してくれると言う事ですな」
改めてそう聞かれたので
「私もシルフの早い復帰を望んでいるのです」
そう答えると
「シルフ様をご存じでしたか」と
いたく感激した様子で私の手を取って来たので
「同行者と逸れて心配しているのです
早く終わらせて彼らを探しに行きたいのですよ」
私が手を振りほどく様にしてそう言うと
「あの人間お二方の事でしょうか
それでしたら心配はありません
ここに入れる様に手配をしておきましょう」
って、結界でも張って入れない様にしていたのか?
だとしたら尚更二人は心配していただろうと
私は今更ながらに二人に思いを馳せていた。
それにしてもどう考えても私の同行者なんだから
初めっから一緒に入れてくれても良さそうな物を
それとも私が協力の話を断っていたら
私も即座にここから出されていたのかも知れない
そう思うとそれ程までにここは秘密の場所なのかと
そんな風に思っていると
アスターとディアンが私の目の前に現れた。
二人とも初めはキョトンとした様子だったが私の姿を確認すると
「心配したんですよ」
「そうだよ置いてくなんて酷いだろう」と
抱き付かんばかりに言って来た。
「これでご安心頂けましたかな」
エルフは少し高飛車にそう言うと
まるで私に何か貸しでも作ったかの様な態度だった。
その様子に少し思う所もあったが
シルフの復帰は私の望む所でもあったのでそこは我慢した。
そしてそれから連れて行かれた場所は
祭壇とはちょっと違う何か神聖な物を感じる場所だった。
そこでは何人かのエルフ達が地べたに手を付き
そこから魔力を流し込んでいる様だった。
私は早速そのエルフに混じって魔力を流し始めた。
エルフ達は魔力が枯渇すると交代するらしく
私が地底深くにあると言う地脈を一応意識しながら
地面へと魔力を流し続ける間
何度も入れ代わり立ち代わりしていた。
その様子を感じながらひたすらシルフに話しかけていた。
(早く声を聞かせて、今いったい何処で何をしているの)
するとシルフより先にエルフから声が掛かった。
「まだ大丈夫なのですか」
私は何を聞かれたか一瞬分からなかったが
魔力が枯渇しないのかという話なのだろうと理解して
「まだ大丈夫です」と答えた。
「それでもまだ時間が掛かりましょう
一度休まれては如何ですか」と
先程の高飛車な雰囲気とは違い気遣う様に話しかけて来た。
なので私も「そうですね」と答えてから
ワープ魔法を使いここと自宅とを行き来する許可を貰い
私達は一度自宅へと戻る事にしたのだった。
読んでくださりありがとうございます。