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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
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またもやプロポーズ?


街道作りは既に手慣れたものだった。


街道作りの為だけに編み出した新しい整地魔法と工事魔法

そして要領の良い作業工程も見つけ出していたので

さらにスピードアップして街道を整えて行けた。


今までは地形に合わせて上ったり下ったり回り道していたけど

削ったり盛ったりトンネル作ったり

なるべく最短距離で辺りに事故の無い様に強度を付けながら

街道をきっちり作って行く方が断然効率が良いと気づいたのだ。


そう私はトンネルも作れる様になっていた。


ダンジョン作成の理論を応用して

暗くもなく換気も出来る優れ物のトンネルなので

少々長くなってもまったく問題が無かった。


ただの道標的な道とは違い既に国道並みには作れていた。


ダンジョンまでの道標に

こんなに立派な街道が必要だったかは分からないが

グレードアップした私の能力を使って見たかったと言うか

誰かに見せつけたかったのかもしれない。


心のどこかでエドガーがひれ伏す姿を思い浮かべながら

ちょっと良い気になっていた。


もっともエドガーに限って私を大仰に褒めちぎっても

ひれ伏すなんて事はあり得ないのだけれど

一度で良いから慌てた姿も見てみたい物だ。


そんな妄想が私のモチベーションを維持していたので

作業スピードが落ちる事も無くサクサク進んで行った。


そしてその作業もいよいよ終盤を迎えた時に気が付いた。


ダンジョン作ったのも街道作ったのも

エドガーに相談もしていないし報告もしていない。


あれ程事前に相談と報告をする様に言われていたのに

またもや私の思い付きで始めてしまっていた。


ドワーフの街の様に誰が関わったと言う事も無いのだけれど

もしかしたらこのサラマンダーの大陸にも利権が絡むのかも

それに始める前に交渉をしろとも言っていた。


私はそんな事を考え始めたら少しだけ恐ろしくなり

恐ろしくはあったが急いでエドガーに事後報告をした。


(ごめんなさい、またやらかしてしまったかも)

(ダンジョンの話と街道の話ならディアンから聞いてます)

私はその返信に胸を撫で下ろしたが

自分の思慮の浅さや反省してもすぐ忘れてしまう欠点が

途方もなく情けなくなっていた。


アスターとディアンはまさに私の欠点を補うお目付け役ですか

と言った感じで二人に頭が上がらなくなりそうだった。



私はきっと一人だったら簡単に何もしないを選択して

ずっと引き籠り生活をする事も出来るだろう

でもこうして大勢の人達と関わる様になって

精霊達に色んな能力を貰っていざ活動を始めてみると

一人だった時の癖が抜けきらずあまり周りの事を考えないで

思い付いたままに動いてしまうのは悪い癖だ。


いつだって精霊達が助けてくれたり

今はこうしてエドガーを筆頭にみんなが助けてくれて

そしてどうにかしてくれている事をもう少し肝に銘じなければ

私だけがまったく成長出来ていない様で情けなくなって来る。


そうレベル的能力的には成長しても

人間として大人として精神的にまったく成長出来ていない

きっとそこが一番の問題なんだ。


私は久しぶりに激しく落ち込むほどに反省していた。


(そんなに自分を責めなくても良かろう)

不意にサラマンダーの声が脳裏に響いた。


「サラマンダー」

私はなぜか嬉しくなってそう叫んでいた。


(もう少し控えていようと思ったが

あまりに落ち込んでいる様子なのでつい声を掛けてしまった)

(落ち込んでいると言うより反省してたんだよ)

(その様であったな、でもそれは我らの責任でもある)

(なんでよ)

(我らが煩わせたくないと庇い過ぎたせいもあろう

我らにもコオ殿を利用する後ろ暗さがあったのでな)

(利用してたの?)

(そう取られても仕方のない事をしていたと思っている)

(大丈夫だよ私はそうは思っていないから)

(それならば私の願いを聞いて貰っても良いだろうか)

(願いってサラマンダーの?)

(そうだ、これは精霊達の総意ではなく私個人の願いだ)

(私に出来る事なら何でもするから言ってみてよ)

(この大陸にもいずれ国を作りたいその為の願いだ)

サラマンダーはそう言うと私に分かり易く願いを言って来た。


(この大陸にはまだ人の住めるような土地は少ないが

結合して統合した結果いずれは人も増え国も出来て行くだろう

その礎となる村をまずは作って欲しい。

そしていずれこの大陸を纏め上げるために

私の眷属となる私の子を産んでは貰えないだろうか)

私は一瞬耳がスベった。


何を言っているのか理解するのに時間が掛かった。


子供を産んでくれってそれって・・・・・


「プロポーズですか~~~~~」


自分の声の大きさにも驚いたが

話を理解した瞬間の驚きはもっとだった。


(いや、少し違う)

(ち、違うって何がどう違うのでしょう)

(私の眷属となる人間の子を産んで欲しいと言う事だ)

(えっと、何がどう違うのかが良く分からないのですが)

(私と婚姻関係を結ぶのではなく

ウィンディーネが復帰次第私の分身ともなりえる

人間の子を宿して貰うと言う願望なのだが理解頂けたか)

理解するも何も結婚もしないで子供だけ産んでくれって

それって逆に酷い話じゃ無いのか?


いやその前に精霊と結婚出来るかって話もあるんだけど

ついこの間エドガーに結婚を考えろって言われてはいたよ

でもそればかりは縁だと思っていたのに

今度はその結婚も通り越して子供だけ産んでくれって

かなり酷い話の様に思うのは私だけだろうか。


正直に言えば一時期確かにちょっとだけ

サラマンダーにときめいた事はあった。


でも相手は精霊だと自分にブレーキを掛けたと言うのに

その相手に子供だけ産んでくれって言われて

プロポーズかと思えば違うって

もうホント失恋するより悲しいのですが

私は今悲しんだら良いのか怒ったら良いのか

あまりに現実味の無い話に

自分でも自分の気持ちが良く分からなかった。


(何か誤解をしている様だが説明させてくれ

ウィンディーネに頼んで眷属を作る事は出来る

だがそうすると精霊色が強くなりすぎてしまうのだ

人間として私の眷属を誕生させるには

一度コオ殿に宿して貰いそして産んでもらう必要があるのだ)

(それって言ってしまえば私じゃなくても

人間の女性なら誰でも良いんじゃないの?)

(それはダメだ、私はコオ殿を必要としているのだ

その役目はやはりコオ殿だから頼めるのだ)

私はサラマンダーのその強い物言いに

何か熱い物を感じたと言うか冗談じゃない何かを感じた。


もうそれって私の感じ方次第って言うか

『愛』だと受け取ってしまっても良いんじゃないだろうか

そんな風に思い始めていた。


精霊との間に恋愛が成立する事があるのかどうかも分からない

でもサラマンダーが強く私を求めているのは嘘じゃないと思う

だとしたらそれはもう『愛』だと勘違いしても良いよね。


(さっきからウィンディーネの名前が出ているけどそれはどうして)

(ウィンディーネは生命の誕生を司っているのは知っているだろう

ウィンディーネだったら私のこの願いを実現させてくれるだろう)

(えっとそれって、交わりを無しに子を宿すって事ですか

それって私は聖母マリアになるって事だよね

それって私はいよいよ神様になるって事なのか

いやこの場合精霊様になるって事か?)

(だからそうではない人間の子を産んで欲しいと言っている

精霊の子を産んで欲しい訳でも精霊になって欲しい訳でもない)

私はぶっちゃけ色んな感情が入り混じり

色んな事を考え過ぎて面倒になって来ていたのもあるが

もう話がこんがらがって深く悩む気にもならなくなっていた。


(何にしてもウィンディーネが復帰しない事には

これ以上は話は進まないのでしょう

だったら私の答えもそれまでは保留にしても良いかな

一応エドガーにも相談してみるよ)

私がそう返事をすると漸く安心したかの様に

(では私はその間休ませて貰うとしよう)

そう言って捻話が途切れた。


サラマンダーも実は体力的に無理をしていたんじゃないかと

そんな風に感じていた。


そしてそうまでしても願った事なのだと

村作りと眷属の誕生を少し真剣に考えてみる事にした。


と言うか心はもう決まっていた。


ホント言うと結婚なんて無理じゃないかって自分でも思ってた。


でも結婚しなくても自分の子供を持てるなら

それはそれで有りかなって気がしている自分もいる。


それにそうなればもう結婚を無理強いされなくて済むかもしれない

そんな事も考えたら私にとってもそう悪い話じゃ無いと思っていた。


ただ実際に現実味を帯びた時にまた心が変わるかもしれないが

なる様になるんだろうとそう考えていた。



読んでくださりありがとうございます。

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