思いもよらない話
私は久しぶりにエドガーに会いたいと連絡を入れた。
するとエドガーは
(今すぐにでもお出で下さいと)返事をくれた。
(何処へ行けば良い)と返信すると
(自宅においでの様なら私が伺います)と言う返信と共に
エドガーが目の前に現れた。
暫く呆気に取られてしまった。
久しぶりのエドガーの姿が
何だかとても立派になっていたのにも驚いたが
目の前にいきなり現れた事にも驚いた。
「私もワープをかなり使いこなせる様になったのですよ」
「そうみたいね」
私はそう言うのが精一杯だった。
「何度も連絡していたのですが気付きませんでしたか」
「ごめんなさい」
「嫌がっていたのは分かってましたからもう良いのですよ
しかし考えておいて欲しい事がありまして
連絡をお待ちしておりました」
私はその物言いに何故か身構えてしまった。
私の直感があまり良い話じゃないと言っていた。
聞かない方が良いと頭の中でサイレンが鳴っている様だった。
「その話どうしても聞かないといけないの
私は今回の騒動の事をきっちりと謝って
これからの国の運営に関してどの位お金が必要なのかとか
そんな話をしたかったのだけれど」
「おや、謝って頂けると言う事は
悪いと自覚なさったと考えて宜しいのですね」
「もう、意地悪な言い方しないでよ
無視して逃げ回わる様な事してごめんなさい反省してます」
「これからは協力して頂けると考えて宜しいのですか」
「出来る事はするけど出来ない事はやっぱり無理だからね」
「お金に関しては今の所はどうにかなっています
これから国民を飢えさせないための雇用を考えたり
子供達の教育を考えたりと問題は山積みですが
公共設備に関しては私共は有利な立場にありますからね」
「それは良かった、私も今等価交換様のレベルアップを目指し
色々考えている所なんだけど知恵は出し尽くした感じで
気分転換と休憩を兼ねて
ちょっと新しい大陸を見て廻ろうと思ってたんだ」
「新しい地図作りにご協力頂ける様で喜んでいます
アスターとディアンだけでは少々不安がありましたのでね」
「私の護衛じゃないの?」
「コオ様に必要なのは護衛よりお供では無いでしょうか」
「ええぇ~私ってそんな認識なの」
「今や精霊様方に次ぐ実力の持ち主だと思っていますし
世間的にもその様に広めていますよ」
「いや、あながち間違いじゃないと思うけど
それをわざわざ広める必要なんてあるの?」
「あるからそうしているのですよご理解ください」
エドガーがこういう言い方をする時は
詳しい理由は話すつもりが無いって事なんだよね
私はそう理解して話を変えた。
「二人がワープを使える様になったら旅立つつもりだけど
これからは連絡をくれたらきちんと確認するし
用がある時は出向くようにするから許してくれる」
「許すも何も初めから怒ってもいません
ただ連絡がまったく取れなくなるのは少々困りました
それだけの事です」
私はもしかしたらそう簡単に許して貰えないかもと考えたり
エドガーの怒りが深かったらどうしようなどと考えていたので
もっと真剣に謝るつもりだったが少しだけ安心した。
きちんと謝った気はしなかったが
エドガーがもう良いと言うのでしつこく謝るのは止めた。
それよりもこれからの行動で示す事の方が重要だろう
私はそう考えたのだった。
「それで私の話を聞いて頂いても宜しいでしょうか」
何気にその危険な話を避けようとしていたのに
そうは行かない様だった。
やはり私がエドガーを相手に勝てる訳など無く
諦めて話を聞く体制を整えた。
「聞くだけは聞くけど考えて欲しい事って何よ」
「婚姻に関してです」
ちょっと待って、思ってもいなかった
考えてもいなかった殆ど天変地異の様なその話に
思わず思考も停止して恥ずかしい事を口にしてしまった。
「相手なんていないわよ」
「そんな事は分かっていますよ
ただ各国から婚姻の申し込みが殺到していまして
断り続けるのにも限界がありますから
その様なお相手が居れば早く婚約でもして頂ければ
問題が一つ片付くかと思いましてね
それにこればかりは早急にという訳にも行きませんでしょうし
心に留めておいて頂きたいと言う話です」
「それも影武者に頼むって訳に行かないの」
「コオ様はそれまで彼女に押付ける気ですか」
「ごめんなさいそうじゃなくて彼女をそのまま女王にって
「出来るわけ無いでしょう、それは私が許しません」」
私はエドガーの強い物言いに圧倒されて何も言えなくなった。
でもどう考えてもそんなに簡単な話じゃないし
簡単に返事が出来る様な事でもない
私は困惑し困り果てていると
「だから心に留めておいてくださいと言う話です
今直ぐにとお願いしている訳ではありません
ただこれからは
そう言う話もあると言う事は覚悟しておいてください」
改めて念を押す様に言うエドガーの言葉に
私は自分の戸惑いよりもエドガーの強い思いを感じとり
「分かった心に留める位はしておくよ」
そう返事をしていた。
「でもさぁ、出会いがまったく無いのに
心に留めた位で相手が見つかるなんて期待しないでよね」
「何でしたらお相手になりそうな方の条件を教えて頂ければ
それに合った者を集めますよ」
「ひ、必要ないわよ、そう言うのは縁だと思てるし」
取り敢えずエドガーには余計な事をしない様に釘を刺した。
それにしても私に結婚を考えろとはびっくりにも程がある
恋愛経験さえないと言うのにどうしたら良いんだ?
そもそも恋愛したいと思って出来る物なら
元の世界でだって苦労する事なんて無かったって話だよ。
こちらの世界じゃ15歳で結婚出来て
私の年じゃ当然の様に考えられている様だけど
女が一人で生きて行くのだってあまり煩く言われる事の無い
そんな時代から来たんだよ私は
それなのにいきなり結婚を考えろって言われても
恋愛を通り越して結婚だなんて
本当にこの私にいったいどうしろって言うのよ
私は簡単に返事してしまった自分に呆れ果て
頭を抱えるしか無かった。
これ逃げ回ったら勝手に婚約者決められて
知らない間に結婚なんて話になるんだろうか?
良く考えたら私って追い詰められたんじゃないのか
自分の言動には責任を持つって心に誓ったはずなのに
またもや逃げ出したくなっていた。
読んでくださりありがとうございます。