創造は錬金術?
私は精霊達がくれた能力について考えていた。
殆ど実態が無いので実感も無いのだが何となく想像はついた。
ウィンディーネの『魔法創造』などはきっと
属性魔法の組み合わせで新たな魔法を生み出せるのだろう。
ノームのくれた『創造』の能力はノームの言葉から推測して
ノームのように建造物を建てるだけでなく
きっと錬金術みたいなものなのかと思っていた。
(もっと分かり易く説明してくれれば良かったのに)と
そう思いながら魔法が想像で発動出来るのなら
あながちアニメやゲームの錬金術と違いが無いかも知れない
だって錬金術ってそう言うものだったよねと考えていた。
(取り敢えずやってみれば分かる事か)
そう考え目の前の土で作れそうな物をあれこれ想像してみた。
するとびっくりした事にただの土だった筈なのに
石になったりレンガになったりコンクリートになったりと
土属性の物にならなんにでもなるらしかった。
そしてその形も変幻自在だった。
(私の考えた物が形になるって結構楽しいかも)
私はその後もあれこれと色々試してみた結果
うんやっぱり錬金術の様なものだと言うのが私の結論だった。
あのジャングルダンジョンの恐竜の魔物達はみんな
それぞれの属性魔石もドロップしたのを見て魔道具を考え出し
そしてその属性魔石の中で氷属性の魔石を見つけて
これで冷蔵庫が作れないかと何となく考えていた。
そう思いついたら炎属性の魔石でレンジ台
風属性の魔石で洗濯機なんかが作れないだろうかと
あれこれアイデアは膨らんではいたけれど
今まではじゃあどうやってが思いつかないでいた。
でも今なら材料を揃えれば作れるって事なんだよね?
私は試に挑戦してみる事にした。
冷蔵庫を思い浮かべどうやってと思った時に
頭の中に色々と閃いた物があった。
熱伝導率の良い金属に氷魔石を組み込み冷気を放出させ
それを木材と鉱物で作った冷蔵庫型の物の中に組み立て
その間に断熱素材を埋め込んで行くと言うものだった。
私はその閃いた物に合わせ材料を調達した。
氷魔石はすでに手元にあったので
それを組み込む鉱物に鉄板を選び
冷蔵庫型に組み込むために箱型を想像して
冷蔵庫型の木材は森から調達した。
断熱素材は頭に色々浮かんだが一番手に入れ易かった
森にある蔦の繊維だけを取り出して乾燥させた。
そうして材料を揃えると思う様に組み立てる事が出来た。
自分で作っているのに信じられない位にスムーズに
簡単に冷蔵庫を作り上げる事が出来ていた。
それは氷魔石を組み込んだ庫内は冷凍庫に使い
その余熱で冷蔵庫内の温度が保たれる仕組みの
シンプルな家庭用冷蔵庫の出来上がりだった。
「これが創造の能力か」
私は何故か知らないがとても感心してそう呟いていた。
私は何だか創造するのが楽しくなって
他の物も作りたくなったのだがここで問題が生じた。
冷蔵庫の様に魔石を組み込むだけで作れる構造とは違い
他の家電を作ろうと思ったら
魔石から流れる魔力を操作する必要が出来たのだ
魔力操作と言いうより止めたり点けたりのスイッチの様な
そんな命令系統の話だったのだけれど
それをどうし様かと悩んでいると魔法陣が頭に浮かんだ。
そうか魔法陣を作れる様になれば
その命令系統を書き込んで組み込む事が出来るのか
それならば私は迷わず魔法陣創造のスキルを得るだけだ。
私はそう決めてジャングルダンジョンの泉へと向かい
魔法陣創造のスキルを新たに手に入れた。
そのお陰で色んな家電をさらにサクサク作れる様になった。
スタンドライトや懐中電灯にランタンなどの照明家電に
1口コンロや2口コンロにオーブンなども作り
全自動は無理だったが2層式の洗濯機も作った。
以前オール電化の家電を見せた時
どんな魔法だと聞かれたのを思い出し
魔法の応用で作る事が出来たじゃんと思っていた。
と言う事は雷の魔石を手に入れたら
電気も作れるのだろうかとそんな事を考えた。
しかし作り上げてみて新たに考える事があった。
折角作ったけど私にはこれを広める術を持たない
作りあげたこれらをどうするのが良いのかも思い浮かばない。
取り敢えずエドガーにでも知らせて相談してみるか
私はそう思い立ち久しぶりにエドガーに連絡してみた。
等価交換様の共有保存機能の通信を使い
『冷蔵庫などの家電を作ってみたけれどどうしたら良い』
とだけ書き込んでエドガーに送った。
するとすぐに『レオに見せる事』とだけ返信が来た。
そう言えばエドガーは今どこでどうしているのか知らないが
精霊達が居なくなって転移も出来なくなった筈だ
その辺はいったいどうしているんだろう。
そんな事を考えながら久しぶりにオフィスへと向かった。
オフィスは相変わらず賑わっていたので
私はセリス達に気付かれない様にそっと2階へと上がり
レオの執務室をノックして
「はい」と言う返事を確認して中へと入った。
「あれ、珍しいですね、ご無沙汰してます」
「久しぶりだね、相変わらず忙しいの?」
「エドガー様の抜けた穴は大きいですが頑張ってます
それで今日はまたどうしました?」
「そうそう家電を作ったんだけどレオに見せろってエドガーが」
「家電ですか?」
不思議そうに聞くレオに家電の数々を出して見せた。
「これはまた凄いですね、電気を使ってないんですね」
「そうよこの世界でも作れる様に考えてみた
でもこれはきっと精霊達の意志なのよ
魔石が無かったら考えもしなかったもの」
「これであのオール電化エリアの研究者たちは国へ帰れますね」
「何でそうなるの?」
「この家電の技術を盗むために今まであの場に居たんですよ
結局解析も出来ず作る事も出来ず帰れずにいたんです
この作り方を実物と共に公表すれば
彼らにはあそこに留まる理由は無くなりますよね」
「そっかそういう事か」
「早く彼らを国に帰してあげましょう
それに交渉次第ではこの技術レシピも高く売れますね」
そう言って何か腹黒い感じの笑顔を浮かべるレオは
しっかりとエドガー化している様な気がした。
「そう言えばレオにも必要だよね」
私はそう言って共有保存端末(※スマホ)を渡し登録した。
使い方を教えながらそこに家電を保存すると
「では少し出かけてきます
コオ様はこの家電の数々をもう少しご用意ください」
そう言って何処かへと出かけてしまった。
一人取り残された私は
(こういう時の対処はもうすでに覚えたんだよ)と
スマホに保存した家電を売りそしてすぐにそれを買った。
驚く事に冷蔵庫は100万円で売れ300万で購入だった。
他の家電擬きもどれもこれも同じように高値で
もうその値段にびっくりだったが
私の作った家電擬きの価値の高さが伺えて
取り敢えずもっと安い値段で広く普及する事を願い
等価交換様に価格崩壊の為の大量売りをお願いした。
すると「今はまだ様子を見た方が良いでしょう」と
等価交換様からコピー作戦に待ったが掛かった。
「どうしてよ?」
「もう少しこの世界の情勢が落ち着いて
各国の経済状態が安定した時を狙った方が売れます
今は技術レシピを高く売る方が効率的です」
等価交換様はいよいよ世界情勢まで言い出していた。
「じゃぁそのタイミングは等価交換様に任せるよ
でも今回用意しろって言われた分はコピーしてくれる?」
「それなら大丈夫です」そうして等価交換様は
家電擬きをそれぞれ幾つかコピーしてスマホへと保存した。
読んでくださりありがとうございます。