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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
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怒髪冠を衝く


ノームの大陸結合には39日掛かりウィンディーネは43日掛かり

そしてシルフは既に50日目に入っているのにまだ終わらなかった。


私は森の中央部精霊の通り道付近に籠り

魔法のレベル上げにひたすら勤しんだが

さすがに攻撃魔法のレベル上げは魔法練習場に場所を移した。


時たまナルセスとセラムとかち合う事があり

その時は私は黙って魔法練習場を後にしていたが

ある時セラムに声を掛けられた。


「ちょっと待ってくれ」

私はまた珍しい事もあるのもだと軽い気持ちでいたが

セラムの方は何だか身構えている様な様子に

いったい何を言われるのかと私も身構えてしまった。


「すまなかった」

セラムはそう絞り出す様に私に言って来た。


その予想外の言葉に私は警戒を少しだけ解き

「何が?」とそう聞いていた。


するとナルセスがセラムの頭をポンポンと掌で優しく叩き

「よく頑張った、後は僕が説明しよう」とそう言った。


私はいったい何を説明してくれるのかと

ナスセスの次の言葉を待っていると丁寧な説明が始まった。



セラムに言わせると自分の父親に召喚して貰っておきながら

責務も果たさずに逃げ出して運よく精霊を手下にして

自分の父を殺し国を崩壊させたくせにその責任も取らず

のうのうとこんな所で贅沢三昧しているのが許せない

諸悪の聖女のせいで自分がどんな境遇に陥ったか見せつけ

分からせ謝らせてやると言うつもりでいたそうだ。


本来なら第4王子の自分は要職に就き

父や兄達の手助けをして行くつもりでいたのに

ウィンディーネに救い出された時は幽閉状態だったらしい。


そして気持ちの整理もつかないままに

ここエリシオンに連れて来られ

実際に私を見れば呑気に贅沢三昧して

そして偉そうにしている様子が許せなかったそうだ。


その能力を何故グロシアート国のため

そして自分達の為に使わなかったのかと

謝らせる位では腹の虫が収まらないでいたと言う。


しかし実際には私に何をする事も出来ず

日々偉そうにしやがってと言う思いが募ったそうだ。


ウィンディーネに諭されてはいたが

その言葉はなかなかセラムには届かずにいた。


しかし私の姿を見かけなくなって

精霊達やエリシオンのみんなが

それぞれに忙しそうにしたり自発的に何かに励む姿を見て

少し冷静になり考える様になって行ったらしい。


そしていよいよウィンディーネに最終通告として

これ以上私を受け入れられない様なら

エリシオンを出て貰うしかないと言われ改めて考え出した。


そしてナルセスと話し合う内に自分の一方的な考えに気付き

そして謝る気になったそうだ。


「それはエリシオンにこのまま居たいって事?」

「ウィンディーネ様にこのまま師事して頂きたい」

ナルセスがそう言った。


「良いんじゃない私はウィンディーネのする事に反対しないし

介入する気も無いから」

「それではウィンディーネ様に許して貰えないだろうが」

今度はセラムが苛立たし気にそう言った。


「それって私に関係あるの?」

「すべてお前のせいだろう」と大声を荒げたセラムは息を切らし

他にもまだ何か言いた気にしていたが私は構わず話した。


「召喚して貰っておきながらですって

私がこんな世界に召喚されて本気で喜んだと思っているの?

ろくに食事も与えられず聖女だって決めつけられて

何を教えてくれるでもなく当然だって押し付けられて

出来もしない事を遣らされようとしていたのよ

それにあなたの父親は勝手に召喚しておきながら

あろう事か私を容姿で判断して牢屋にぶち込んで

あのままだったら処刑されかねない状態だったのよ

それなのに私に果たさねばならない責務なんて何があるの

奴隷じゃあるまいし使い捨てられる聖女の肩書を

どうして喜べると思うのか意味が分からない

召喚して貰っておきながらですって冗談じゃない

誰が頼んだって言うのか是非聞いてみたい物だわ

それに呑気に贅沢しているですって

私がここに辿り着くまでどれだけ苦労したと思ってるの

簡単に言ってるけど運よく精霊に出会ったんじゃないわ

それに手下にもしていないし

あなたのその考え方本当に身勝手で一方的で吐き気がする」


他にも言いたい事は山ほどあったが怒髪冠を衝く状態で

上手く言いたい事が思いつかなかった。


暴れ出したいほどに興奮していた。


出来る事ならあの王様にぶちまけて殴り倒したい気分だった。


しかしこんなに興奮していては

私の中に居るシルフの作業に支障が出ると

そんな考えが急に浮かび私は努めて冷静さを取り戻そうと

深呼吸を繰り返した。


多分私の中に居るシルフが

私の興奮を静めてくれ様としたのだろうと思った。


そして呆気にとられる二人に努めて冷静に

「私は今でもあなたの父親の事も

そしてグロシアート国の考え方も許してないから

別に私の事も許す必要なんてないよ

これからも関わらない様にしよう

それからこの魔法練習場は私がしばらく使いたいから

あなた達は遠慮して、私の為に作ったんだから当然だよね」

私はそう言って彼らが出て行くのを待った。



考えてみたら私が遠慮して出て行く必要なんて無かったんだ。


そうだよこの魔法練習場は私の為にノームが作った物だ。


それに何より

こいつ等に許して貰わなくちゃならない事なんて何もしていない。


ウィンディーネが連れて来たって理由だけで

何でこいつらに遠慮してたのか考えてみたら本当におかしな話だ。


ウィンディーネごめん協力するつもりでいたけど

やっぱり私には無理だ、偉そうとか言われようと

嫌な物は嫌、嫌いな物は好きになれない

ましてや嫌われてるって知りながら愛想よくなんて出来ない。


出て行く様子を見せない二人に

「早くここから出て行って」

私は静かにゆっくりと冷酷な雰囲気を持って言い放った。



するとナルセスが至極冷静に

「コオ様のお考えを始めて聞かせて頂きました

私達は何か考え違いをしていた様で申し訳ございません

しかし私達も今まで詳しい事情を聞かされる事無く

ただ聖女の悪行として色々聞いてた為の行き違いです

そこの所は少しご理解頂けませんでしょうか」

「すべては私のせいなんでしょう」

私は最大限の皮肉を込めてそう言った。


「今はそうは思っておりません

しかし私共も少し冷静に考える必要がある様です

少し時間を頂いて後日また話し合いをお願いしたいと思います」

「私はその必要はないと思っています」

「申し訳ございませんがもう一度だけチャンスを頂きたい」

「何のチャンスよ

あなた達はウィンディーネが目的なんだから

ウィンディーネを説得すれば良いんじゃないの

私はもうあなた達と金輪際関わりたくないの早く出て行って」

私はそう言って出入口を開けると

早く出て行けと言わんばかりに手で合図した。


すると彼らは漸く諦めたのか大人しく出て行ったのだった。


そして私はもっと早くにこうして話していれば

彼らもウィンディーネに執着する事無くエリシオンから去ったのかもと

そんな事を考えずにはいられなかった。



読んでくださりありがとうございます。

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