人手不足解消?
ウィンディーネが5人の少年少女を連れて帰って来た。
弟子を探しに行くとは言っていたけれど
まさか5人も連れて帰るとは思っていなかったので
私は『お帰り』と言う一言も口から出せずに固まった。
「あらあらぁ、出迎えてはくれませんのぉ」
そう言うウィンディーネの言葉に我に返り
「いったいどうしたのこんなに大勢」
「あらぁ、弟子に決まっているじゃないのぉ」
「そうじゃなくて、大丈夫なの、攫って来たりしてないよね」
「あらあらぁ、勿論ご両親の了承も本人の了承も得ていますわぁ
ああ、この子は孤児ですけどねぇ」
そう肩を叩かれた男の子は軽く頭を下げた。
「みんな自己紹介をしてくださいなぁ」
ウィンディーネがそう言うと
それまで大人しくしていた子供達が一人づつ自己紹介を始めた。
ロロナ、アーシャ、ソフィー、リディー、と言う女の子と
ロジーと言う男の子の5人だった。
ロロナとソフィーは17歳ロジーが16歳
アーシャとリディーは15歳とみんな年頃は同じだった。
「取り合えず転移石は1つ置いて来ましたわぁ
この子達をこれからよろしくねぇ」
ウィンディーネは簡単にそう言ったが
私はどうするつもりなのかをもっと突っ込んで聞きたかった。
「宜しくってこの子達ウィンディーネの弟子にするんでしょ
ちゃんと面倒は見るんだよね?」
「当然じゃないのぉ」
「そこの所をどうするのか詳しく聞きたいのだけど」
「サラマンダーやノームと同じよぉ
ここで働かせながら様子を見るわぁ」
「5人も一遍に?本当に大丈夫なの?」
「あらぁ、私まだ連れて来るつもりですわよぉ」
「いやいや、これ以上はダメでしょう」
「あらぁ、だってぇ私才能のある子は好きよぉ
みんな大事に育ててみたいわぁ」
「それは分かったけど取り合えずこれ以上はもうダメ
この子達をちゃんと育ててからにして」
「あらあらぁ、仕方ありませんわねぇ考えておきますわぁ
では私は他の転移石も置きに行ってきますわねぇ
その間この子達をよろしくねぇ」
ウィンディーネはそう言うと転移してしまい
まるで嵐が去った後のような静けさだけがそこにあった。
私は取り合えず子供達にエリシオンで働きながら
ウィンディーネに師事する気は本当にあるのかを確認した。
すると子供達はそれぞれに
「精霊様に才能を見出されて嬉しい」とか
「両親がとても喜んでいる」とか
「強くなれるならなんだってやる」とか
「俺には行くところが無いからどこでも一緒だ」とか
「私は本気ですのよ」とか言っていて
気持ちが変わる事は無い様だった。
取り合えず女の子たちはずっと空き家になっていた
オール電化の家に住まわせる事にして
男の子はリアンとアスターの所かエドガーに預けようと考え
街を案内がてら全員を連れてエドガーの所へ相談に行った。
「エドガー、ウィンディーネが5人も連れて来た
この子達をここで働かせながら師事させるんだって
住む所と仕事を決めようと思うんだけど少し相談に乗って貰える」
「でしたらリアンとサラマンダー様そしてアウラ様もお呼びしましょう」
「そんなに呼ぶの?」
「ええ、その方が良いと思いますよ」
私は言われた通りサラマンダーとアウラに捻話を送ってみた。
今までそんな事はした事無かったけれど
叫べば慌てて飛んで来てくれた事が何度もあったから
出来るんじゃないかと何となく思っていたので試してみたのだ。
(アウラ大事な相談があるのエドガーの所まで来て)
そうアウラを思い浮かべながら念じ
(サラマンダーリアンを連れてエドガーの所まで来てくれない)
次はサラマンダーを思い浮かべながらそう念じてみた。
すると最初にアウラが次にサラマンダーがリアンを連れて
エドガーの執務室に現れた。
私にも捻話出来るじゃんとちょっと嬉しく思っていたが
既に座る席も無い程人で溢れかえる状況に
「居酒屋の方に場所を移そうか」と私は提案した。
そうして居酒屋へと移動するとそこにノームとシルフも現れて
結局全員集合状態で話し合いは始まった。
「ウィンディーネにも困ったものだ」
「しかしヤツは本気だと思うぞい」
「私もそう思います」
「本気だったとしても
こんなに大勢大丈夫なのかを心配してるのよ
親御さん達から預かって来てるのよ今までと訳が違うわ」
「奴なら心配あるまいて」
「そうですぞ、ウィンディーネの戦闘能力は私に負けず劣らず
魔力の方もかなりの物ですからな」
「そうなの~ウィンディーネちゃんはとっても強いの~」
「そんな風には全然見えないけど」
「奴の舞うように踊る姿は見惚れて手も出せんぞい」
「それに魔法攻撃もかなりの物ですよ
私でも勝てるかどうか自信がありません」
「そんなに、でもアウラを怒らせると怖いって言ってたよ」
「怒らせたらみなさん怖いですよ」
そう言う精霊達の話を聞きながら私は覚悟を決めた。
そうエリシオンにこの子達を受け入れる覚悟
そしてウィンディーネの手助けをする覚悟をだ。
以前から弟子を欲しがっているのを知っていながら
私は手が足りないとウィンディーネを縛り付けていた
それなのに弟子になる事を逃げ続けた私の責任でもあるんだ
それに良く良く考えてみたら
万年人手不足を解消させ様と考えてくれたのかも知れない
きっとその為のこの年齢の子達なんだろうとそんな風に思えた。
だって前に師事させるには7歳位が丁度良いって言ってた
そう思うと本当に色々考えてくれているんだと
私はウィンディーネに感謝するしかなかった。
「それで女の子達と同じ家って訳に行かないでしょう
だからロジーをエドガーかリアンに預けたいんだけど」
「それならば教会を大きくしてみんな一緒にするが良いぞい」
そうノームが提案して来た。
「そうですな、家を分けるよりその方が良いだろう」
「それってリアンもアスターもって事?」
私のその質問に答える事もなく
ノームはエドガーを連れて教会へと行ってしまった。
私は後を追うつもりで席を立ったがサラマンダーに止められた。
「この子達の仕事を決めてしまうのが先だ」
「そうですね、このままじゃこの子達も落ち着きません」
二人にそう言われ私は座り直し改めてシフトを考える事にした。
アーシャは温泉施設ロジーは宿泊施設へリディーはオフィスへ
そしてロロナとソフィーは居酒屋の手伝いをさせる事になった。
街の案内をした時に仕事内容などを説明したので
本人たちの希望を聞いてから決めたのだ。
アーシャはマッシュやディアンの着ていた
カフェ店員の制服を気に入りあれが着たいと言い
リディーはオフィスの店員にとても興味を示し
ロロナとソフィーはお酒の勉強をしてみたいと言った。
ただロジーは何処でも良いと言うので
リオンの補助にしようかとも考えたが
無口なリオンにはロジーは荷が重すぎる気がして
宿泊施設へ行って貰う事にした。
これで少しは人手不足も解消されたと思いたい所だった。
読んでくださりありがとうございます。