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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
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気の無い返事


「アウラ~、私サンダーマスターしたよ」

姿の見えないアウラに向かって叫んでみた。


するとしばらくして練習室にアウラが現れた。


「マスターしたのですか?」

「そう思う」

私は試に強さを変えて『サンダー』を撃ってみた。


「サンダーは強さも変えられますが

もっと練習すれば形と速さも変えられます

その事を念頭に置いて研鑽に励んでください」

「まだまだって事だね」

「そうは言いませんが練習を怠らない様にと言う事です」

アウラはそう言いながらも

次に『ライトニング』を伝授してくれた。


「コオの得意の聖魔法と雷魔法の複合魔法です

アンデット系の魔物には特に威力を発揮しますよ」

「アンデット系の魔物ってそんなのも居るの?」

「そうですね数は少ないですが出没する所もあります」

「やっぱりいるのか・・・」

出来る事ならそんなのと戦いたくはないよね

私がそう考えていると

「苦手なのですか?」とアウラが不思議そうに聞いてきた。


「苦手と言うより気持ち悪いじゃない」私がそう答えると

「魔物と変わりませんよただの黒い影です」

不思議なものでアウラがただの黒い影ですと言い切った事で

それが脳裏に焼き付いて怖がるのも馬鹿らしくなっていた。


本当に言葉とは不思議な物だと感じていた。

そうこうしているとアウラが何かに反応した様子を見せた。


「サラマンダーが戻ったようです」

私はその言葉に反応して出迎えるために私の家の庭へと急いだ。


転移石を私の家の庭に置きそこを転移元と決めていたのだ。


「瘴気溜まりへまっすぐ進めばもう少し早く帰れたのだが

リアンが町や村の様子を知りたいと言うので

寄り道をしてしまい遅くなってしまった」

そうサラマンダーは言い訳の様に言っている。


「遅くなんて無いよそれに寄り道は私が頼んだんだし

寧ろもっと時間が掛かるかと思ってた」

私がリアンを庇う様にそう言っていた。


「そうでしたか、私はただ気が急いてしまいました」

「冒険の旅だと思っていたけど

リアンに野宿させる気ならもっと荷物を持たせなくちゃ」

私は思った通りに助言すると

「そういう事もあるかも知れません

その為の準備も必要なら頼みたい」

サラマンダーは真面目な顔でそう言っていた。


私は何だかリアンの苦労が偲ばれた様な気がした。


リアンはこの状況に不満は無いのだろうか

そんな疑問が脳裏を横切った。


大体口数が少なく自己主張もあまりないリアンだ

サラマンダーに押されて仕方なくしているかも知れない

そう思うと確認せずにはいられなくなった。


「ねえリアン、サラマンダーと旅に出る事に不満は無い?」

「コオ殿それではまるで私が無理強いしている様に聞こえますよ」

「そうじゃないけどリアンはどう考えているのか気になって」

「私は強くなれるのが嬉しいです」

「それはこの訳分からない旅の事も含めてって事?」

「はい」

「コオ殿訳分からないとは何ですか

瘴気溜まりを解消するための策ですよ」

サラマンダーがそう言えばそう言うほど

言い訳の様に聞こえたが

リアンに不満が無いなら良いのだろうとそう思っていた。


「それではコオ殿早速出かけましょうか」と

今すぐに瘴気溜まりへと出かけようと言うサラマンダーに

「今日はゆっくり休んで明日にしましょうよ

リアンも疲れているだろうし私も疲れています」

そうきっぱり言うと

サラマンダーは諦めた様に

「では今回は誰がダンジョンを作りますか」と聞いてきた。


「それはみんなで話し合って決めてください」

私は精霊達にダンジョンの話は丸投げした。



「リアン、アスターはエドガーの家に居るからね」

私がアスターの居場所を伝えると

「どうして」と言うので

「リアンが留守の間一人では寂しいだろうと思って

エドガーに頼んで部屋を貸して貰ってるの」そう答えると

「そうですか」と表情も変えずに答えていて

私はリアンが何を考えているのかとても知りたくなった。


「リアンもその方が安心かと思ったけどダメだった?」

「いえ、ありがとうございます」

リアンはそう言うと早速エドガーの家に向かった様だが

この時間ならまだ仕事中だと教えるべきか迷った。


もしかしてリアンってあれで動揺しているのだろうかと

そんな事を考えながらつい見送ってしまった。



夕方居酒屋で精霊達と飲んでいると

案の定ダンジョンの話になっていた。


私が加わっても仕方ないと思いカウンターで一人

精霊達の話を聞くともなしに聞きながらお酒を飲んでいた。


すると温泉施設からマッシュとディアンが連れ立って来た。


その二人の制服姿に思わず脳内が沸騰しそうになった。


今はマッシュとロックさんとディアンには

カフェ店員の制服を着せている、これがまた超カッコイイ

エドガーにも着せたかったが白衣や燕尾服や学生服と

色々着せすぎてそれ以降は拒否られてしまい

結局エドガーは最初に渡したスーツを定番にしている。


その他の男子はコック服のデザイン違いを何着か渡し

各自ローテイションで着用して貰っている

勿論女の子達にも替えで何着か渡してあった。


「仕事が終わったのに着替えないの?」

制服姿のままなのが今日はやけに気になって聞いていた。


「着替える場所が無いだろう」

そう言われてそう言えば従業員用の更衣室が無い事に

今初めて考えが及んだ、それを言ったら休憩室も無いよ

「今までどうしてたの」

「今までって、普通にお客の使う更衣室で着替えてたけど

最近は混む事も増えて帰りはともかく

昼間の着替えは少し抵抗があってな

最近はもう良いかと思って制服で通ってる」

そう言うマッシュに私もついまあいいかと思ってしまった。


元の世界だったら制服での通勤は禁止されていたが

ココはそんなに厳格にしなくても良いだろう

第一それで不都合が起こる事も無いだろうと思ったのだ。


そしてマッシュはカウンターに座るとお酒を注文し

ディアンは厨房に入って行った。


きっとフィリップを手伝う気なのだろうと思っていた。


そうして私がマッシュを相手に飲もうとしていると

精霊達の話し合いが終わったらしく

「明日は私とアウラとで出かけます」

そうサラマンダーが言って来た。


結局アウラかサラマンダーがダンジョンを作る事になったらしい

「分かった」

私は気のない返事をしながら明日は早いのかと考えていた。


正直な話新しいダンジョンは楽しみでもあったけれど

折角覚えた魔法のレベル上げをしたい気持ちの方が大きかった。


一人練習場で黙々と練習するのは結構好きだった。


それに精霊達が意気揚々と進めるダンジョンの話は

何となく何か私に知らされない精霊達の思惑もありそうで

気が進まない所があったのは確かだった。



読んでくださりありがとうございます。

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