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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
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時計です


温泉施設に向かって歩いていて気が付いた

街から冒険者達が消えていた。


みんな一斉に帰ってしまったのだろうか?


私は疑問を抱きながら施設内へと入ると

さっきのお笑い3人組がセリスとコントを展開していた。


時計を教えている様だった。


私はそれを見て今更だが思っていた。


そもそもこの世界の人達は

時間を数字で考えると言う概念すら持たないんだったと。


なので当然時計を理解させるのに手を焼いている様だった。


そう思うとココのみんなは何故簡単に理解出来たのだろう?


私はそんな事を考えていた。


「ですから1日を24個に割って現しているんです」

「でも君これには12個の数字しかないじゃないかい」

「そうよぉ、それに何のために24個に分割するのよぉ」

「朝と昼と夜は変わらずに来るのに数字にしてどうするのさ」

「1日の長さをご存じですか」

「1日は陽が昇って陽が沈むまでに決まっているだろう」

「違いますわ、陽が昇って次にまた陽が昇るまでですのよ」

「それじゃぁ1日の終わりに飲むエールはどうなるのよぉ」

「1日が終わる前に飲むエールになりますわ」

「この際エールは関係ないんだ詳しく教えてくれたまえ」

「それは私のセリフですわちゃんと聞いてください」

「それで1日を24個に分ける意味だよ」

「日中の12時間と夜の12時間を合わせると24になりますのよ」

「夜はそんなに長いのかい?」

「ええ、寝ていて気が付かない様ですが長いのです

例えば夜中に不意に目が覚めて今は夜だと分かりますが

夜の何時なのか夜明けまで後どの位かが

この時計を見れば分かる様になると言う事ですよ」

「それはとても便利だね」

「では君は陽が沈む時間まで分かると言うのかい」

「ええ、今はお昼を過ぎた所ですから

真上にあった太陽は少し傾きました

そしてどんどん傾いて行ってこの6の数字の辺りで沈みます

要するに太陽の位置を正確に数字で教えてくれる物なのです」

「それではこれがあれば陽が沈むまでどの位掛かるか分かるのかい」

「さっきからそう申し上げていますわ」

「君のいう事が本当か試してみようじゃないかこれを一つ頂こう」

「お買い上げありがとうございます~」

お笑い3人組は時計を一つ購入しセリスに腕に嵌めて貰っていた。


「身に着けるのだね、お洒落じゃないか

それで陽が沈むのは何時と言ったかな」

「ですからこの短い方の針がこの位置に来る頃ですよ

ここから1時2時3時と来てそしてこの位置を6時と呼ぶんです」

「分かった短い方がこの位置だね」

そう言ってお笑い3人組は時計とにらめっこを始めた。


「店先に居られたら邪魔ですわ何処か別の所へ行ってくださいな」

「ああそうだねお邪魔したよ」

そう言ってお笑い3人組は何処かへ移動していった。


「セリスなんか苦労していた様だね」

3人組が居なくなったのを見計らってセリスに声を掛けた。


「そうでもありませんわ、簡単に理解してくれた方です」

「そうなの?」

「そうですわ、知らない事を教えるのはとても大変な事だと

シスターの偉大さを最近理解しましたわ

私もシスターに教わって昨日漸く時間を理解しましたの

本当にこの時計って便利ですわね」

そう言ったセリスの言葉に今さらながら驚いていた。


「ええぇぇ、今まで理解出来ていなかったてこと?」


「初めは時間と言われても何を言っているのか分かりませんでしたわ

ただ何となくこの数字に意味があるのだろうとは思いました」

「じゃぁ何で売店に置こうなんて言ったの」

「だってどう見てもとても貴重そうで誰も持っていませんでしたわ」

貴重性に価値がある様な言い方にセリスの商魂を見た気がした。


「じゃぁ冒険者達も時間を知らずに購入したの?」

私が改めて聞くと

「見るからにお宝ですからね

でも私も時間を理解しましたから昨夜冒険者達に教えましたの

ですから今日はみなさん時計を試しに森に散策に出かけましたわ」

そう返って来たが何のためにと新たな疑問が沸いていた。


「時計を試すって?」

「時間を理解しようとしているのですよ、先程の3人組と同じですわ

ただ冒険者はじっとしているのを勿体ながって森に出かけましたの」

その言葉にこの世界の人に時間を理解させるのは大変なのか

じゃぁそれを教えたシスターってやっぱり凄いと心から思っていた。


まず自分で解き明かして理解して子供達に教えたって事だよね

考えてみたら自分も子供の頃時間を教わった時

それを理解するのはとても大変だった記憶があった


私は知っているのが当たり前だと思っていたけどそうではなかった。


そして改めて時計の貴重性重要性を感じていた。


それで今日は冒険者達が街から消えたのか

ちゃんと理由があったんだと分かってみると自分の迂闊さよりも

やはりココのみんなの凄さを改めて感じた。


私が渡した未知のものをただ未知のものとしておくのでなく

それを理解しようと努めそして広めようとしている

その姿勢みたいの物は私には真似出来ないと思っていた。


「じゃぁ今はみんな時間を理解出来たのかな」

私は確認する様に聞くと

「ロックさんもマリーさんもシスターの所へ来てましたわ

子供達はもう少し時間が掛かるかもしれませんね」


大人だけじゃなく子供たちまで学ぶ姿勢を持つと知り私は嬉しくなった。


「後でシスターの所へお礼に行くって言っておいて」

私がそう言って別れようとすると

「分かりました、それでお姉様はこの後どうしますの」

そう聞いて来た。


なので「温泉に浸かろうと思って来たのだけど気が変わったわ

頑張っているみんなに何か美味しい物でも差し入れしながら

様子を見て廻ろうかしら」と素直に答えると

「それが良いですわみんな喜びます」とセリスも賛成してくれたので

「セリスがじゃないの?」

そう言ってセリスに片手ですぐに食べられそうな物の中から

クレープを選んでイチゴとチョコと生クリームたっぷりのそれを渡した。


セリスは目を輝かせて喜んだので

私は他のみんなへもクレープを配る事にしたのだった。



読んでくださりありがとうございます。

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