かみ合わない1日
素材買取所のカウンターでお客を待っているとフィリップが現れた。
まだ何かあるのかと思って身構えていると
「さっきはすまなかった」と謝っている様だった。
私は何と答えて良いのか分からずに
「何がだろう?」と素で答えてしまった。
するとまたも黙り込んでいるので
もしかしたら新手の嫌がらせか?
それとも商売の邪魔するために来たのかと疑っていた。
「私に話しづらいなら2階にエドガーが居ますから
そちらに行ってください」そう促していると
丁度エドガーが降りて来て
「私がお話を伺いましょう」そう言って
一階の応接室へとフィリップを連れて行った。
エドガーって察知能力でもあるのかとそんな事を思っていた。
その後冒険者達はチラホラと店を訪れていたが
待っている時は思う様に冒険者は現れず
思う様に商品も売れはしなかった。
やはりラインナップを変えるか増やすかした方が良いのだろうか
それともいっその事ショーウインドウでも作ってみようか
そんな事を考えていると冒険者とは様子の違う人が入って来た。
3人組で一人は品の良さそうな服をキチンと着込み
清潔そうではあったが何処か風来坊的な雰囲気で
あとの二人は冒険者と言うより自由人と言った感じで
今でいうならチャラ男と性別不詳と言う雰囲気。
とても個性的と言うしかない組み合わせだった。
内心でこれがアウラの言っていた商人一行かと思い至った。
「いらっしゃいませ」私は取り合えず挨拶をすると
「ココには珍しい物が沢山あると聞いて来てみたんだが
本当に珍しい物ばかりで驚いている」と
何だかキザったらしい勿体付けた言い方をしていた。
「それはどうもありがとうございます」一応お礼を言うと
「いったいどこから仕入れているのだろうか
まぁ商売上秘密にしておきたいだろうと分かっているが
ダメもとで聞いてみるよ答えてくれるかい」
なんだか警戒する気も失せるその様子に
「異世界です」とはっきりきっぱり正直に答えていた。
「君も面白い事を言う子だねぇ、それははぐらかしてるのかい」
「だから異世界から仕入れています」
「もう一度聞くが異世界とはどこの国を言っているのだろうか」
「私が居た世界の事です」
「あらやだぁあなたお国はホントに何処なのその答えとっても面白いわ」
その受け答えに
私もあなた方をとっても面白く感じていますよとは言えず
どう答えいようかと迷っていると
「君見えない物が見えたりする人?」そう聞いて来るので
「ええ、人には見えない物(瘴気)が見えるみたいです」
そう答えると
「やはり教えてくれる気は無いらしいね
僕も商売人だそれじゃぁ潔く諦めよう
でも出来るなら僕たちにも
君の扱っている商品を扱わせてくれないかい」
そう言うので相手にするの疲れ適当にあしらう事にした。
「良いですよ、好きな物を好きなだけ買って行って
好きなだけ売ってください」
「良いのかい?それで利益分配などはどうなるのだい」
「別にいりませんよ、定価でキチンと買ってくれれば
私の方は何の問題もありません」
「本当に良いのかい」
「売っている物なら何でも買ってください」
「それじゃぁ色々と物色させて貰うよ良いかい」
「好きな様にどうぞ」私がそう許可を出すと
本当に遠慮なくあれこれと手に取って色々物色し始めた。
「売り物じゃ無い物は下手に触らないでくださいね」
私は一応注意だけしておいた。
自販機の防犯ブザーを鳴らされても煩いだけだし
セリスなどの商売の邪魔をされても面倒くさいそう思ったのだ。
それにしてもこの一行確かアウラが馬車を諦めたって言ってたよね
何をどれだけ買ってどうやって持ち帰る気だろう
この人達の商売のセンスをちょっと見させてもらおうか
それとも等価交換様を見せて驚かせてやろうか
私はひそかにお笑い3人組の動向を楽しんでいた。
「温泉施設の方の商品はもうご覧になりました?」
私は商品を進めると言うよりからかい半分で声を掛けていた。
「温泉施設にも何か売っているのかい」
「ここは冒険者用の商品が多いですが
温泉施設にはお土産用に色々取り揃えていますよ」
私がそう教えると
「ではそちらも見に行ってみようじゃないか」
「そうね行ってみましょう~」
そう賑やかすだけ賑やかして一行は出て行った。
一行を見送りながら本当におかしな人も現れ出したと思っていた。
それにしても今日は冒険者が現れないどうしたんだろう
諸悪の聖女捕縛隊もしくは討伐隊は絶滅したんだろうか?
もしかしてこれからはさっきの様な
おかしな人達が集まり出すんだろうか
そんな事を考え始めたら少し不安になってきた。
そもそもこの森を彷徨いながら
獣討伐していた冒険者達の為に作った素材買取所だから
この森を彷徨う事無く到着する人達は
売る素材を持っていないのは当然だかと
この素材買取所の存在意義を考え直そうかと思っていた。
それに何日も彷徨い続けて到着した冒険者と違い
帰り道に迷う心配も無いから備蓄食料もそれほどいらないし
折角作った素材買取所も畳む事になるのか
と言うかやはり私の考えが足りなかったって事か
それじゃぁいっその事ここも何か別の物に作り替えようか
そんな事を鬱々と考えていると
応接室からフィリップが出て来た。
そう言えばエドガーと話をしていたんだっけ
すっかりと忘れていた。
フィリップに続いて出て来たエドガーが
「フィリップさんがもう一度雇い入れて欲しいと言ってますが
コオ様どういたしましょうか」と私に聞いて来る。
何で私の判断を仰ぐ?
私にいったい何と言わせたいんだ?
そんな事を考えてはみたが
「私を嫌っている人は使えない」ときっぱりと答えていた。
「その事は反省なさった様ですよ」エドガーはそう言うが
「ココはみんな私の事を思って
一生懸命働いてくれる人ばかりなんだよ
その人達に迷惑を掛ける様な事は絶対に出来ない」
マリーさんやダリルの顔も浮かびそう答えていた。
「そうですね、女性も子供もみなさん一生懸命働いてますね」
「第一大事な事を自分で言えない人は信用できない
だから絶対に無理
でもココの管理はエドガーに任せてあるから
エドガーが雇いたいなら私は反対しない
ただ私は関わらないだけそう思って」
私はそう言って話を終わらせた。
しかし「困りましたね」そう言って
エドガーは困った様子などまったく見せずに
寧ろ面白がっている風にフィリップを見ていた。
そしてここまで言っても黙っているフィリップに愛想が尽きた。
進展のないやり取りもだが一緒にいるのも嫌になり
「今日はお客さんも来ないみたいだから
少し外を廻って来るね」私はそう言って外に出た。
いったいエドガーは何を考えているんだろうか
フィリップをどうしたいんだろうか
私には考えもつかない考えがあるんだろうか
堂々巡りする考えとフィリップのせいで
むしゃくしゃする気持ちを抑えようと温泉施設に向かった。
久しぶりに温泉にでも浸かって少し考えようと思ったのだ。
そして今日は何か歯車が合わない一日だとそう感じていた。
読んでくださりありがとうございます。