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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
第一章 1
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召喚される


その部屋は壁も床も大理石で作られ20畳程の広さがあり

部屋の隅近くには見るからに豪華そうな飾り柱も置かれていて

どう考えても私には縁も所縁も無さそうな部屋だった。


見ると自分は何か怪しげな紋章の上に座っている。

そしてその紋章を囲むようにして佇む怪しげな人が5人

皆床を引きずるほどの丈の長いローブを着こみただ無言で俯いている。


自分にいったい何が起こっているのかを理解しきれずにいると

正面の一段高い場所で豪華な椅子に座った人物が言い放つ。


「これが聖女だと言うのか」


「・・・・・」


「聖女とは美しく清らかな乙女と聞いている、何かの間違いであろう」


「・・・・・」


「返事をせんか、お主たちの失敗なのか」


「いえ、その様な事は・・・」


何やら信じられないけれど少し理解したと言うか頭にきた。

多分異世界に召喚されたんだよね?

なのに何、私が美しくないから失敗だって言うの?

言っておきますが、清らかな乙女に間違いはありませんからね。

それにしても

何なの何なのこの私を置き去りにした目の前のやり取りは。


確かに私は子供の頃からお世辞にも美しいと言われた事は無いよ

専門学校出て就職した会社ではカーストにも派閥にも乗れずに

みなし残業の上にサービス残業押し付けられて

下手したら雑務までやらされて

ほぼほぼ寮と会社との往復だけの毎日

ストレスは食で解消しようとしていたために

確かにここの所かなり太ったと言う自覚もあるよ。


でもさぁ、あからさまに美しくないと貶められる謂れは無いよ。

ましてやそっちが勝手にこんな所へ召喚したくせにさ

考えれば考える程頭にきた。

私は無言で立ち上がり金で装飾された立派な扉を目指し歩き出す。


するとローブを着た何人かが慌てて私の後を追いかけて来る


「お待ちください聖女様、少しばかり説明をさせてください」


何の説明をするって言うんだよ?

私が美しくない確認をまた一から始めようって話じゃないよね

私は振り向きもせず構わずにズンズンと歩みを進める。


「お待ちください聖女様」


追い縋る様にして私の肩に手をかけて来たその手を振り払うと

例の偉そうに豪華な椅子に座っていた奴が怒鳴り出す。


「ええい、取り押さえ牢にでも放り込んで置け」


ええぇぇ、牢屋に入れられるって言うの?

それはあまりに酷すぎる仕打ちでしょう

もしかしたらその後処刑なんて話になったりするの?

これはもうこんな所には居られない

何が何でも逃げ切らなくちゃ。


「お待ちください王よ、聖女様にその様な」


誰かが止めている様だがそんな事に構っている暇なんてない

私は急ぎ足で扉に駆け寄りドアを開け様としたその時

その扉は向こう側から開いて何人かの衛兵がそこに現れた。

そして私は抵抗する間も無くその衛兵の何人かに羽交い絞めにされ

長い廊下を歩かされ地下にあった牢屋へと入れられてしまった。


「大人しくして居ろ」そう投げ捨てられ私は冷静にはなれなかった。


如何にかしてでもこんな所から逃げ出さなくちゃ

私の人生をこんな所で終わらせる訳にいかない。

そう思うも厳重なこの牢屋から脱獄できる術が思い浮かばない。


取り合えず牢屋の隅に腰を下ろし何処か壊せそうな所は無いか

念入りに視線を這わせてみるが

汚ればかりが目に付き気分が悪くなって来るばかりだった。


どうして私がこんな所に召喚されてしまったのか

どうして私だったのか

どうしてこんな事になっているのか

どうして、どうして、どうして、考えても考えても答えは見つからない。


私は頭を抱え急激に襲い来る悲しみに涙が出そうになって来た。

こんな所で泣いている場合じゃないそう思えば思う程

自分の無力さに怒りより悲しみが増していく

もう諦めるしか無いのだろうか

そんな事を思っているとこの牢屋へと近づく足音が聞こえてくる。

いよいよ処刑でもされてしまうのだろうかと身構えていると


「聖女様、少しお話を宜しいでしょうか」


多分あの召喚の間に居たローブの人がそう静かに囁いた。

私は一縷の望みを掛けて交渉してみる。


「ここから出してくれるのなら良いですよ」


「勿論でございます。」


そう言って牢屋の鍵を開けるとご案内いたしますと先を歩き出した。


何処へ連れて行こうと言うのか分からないが

逃げ出すチャンスを得て私の気分も少し回復した。

悲しんでなんかいられない、こんな所何が何でも逃げ出してやる

私はそう新たに心に誓い逃げ易そうな所を探し

彼方此方を隈なく見回しそして記憶して行った。



読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 工場の作業員を馬鹿にしたかのような描写だな
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