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質問くらい答えてほしい sideエミリア




促された食堂へ入るとさすが王宮なだけあって内装も家具も豪華である。すでにエミリア以外の王族は席に座っており、どうやら自分が最後であったようだ。普通は遅れないように侍女や従僕が呼びに来るのだがユリアーナにそんなものはいないので時間に間に合うように彼女は自分でここへ来ていた。ここの使用人たちの教育は最悪レベルだとエミリアが格付けチェックをすると王族たちを見る。皆無言で席に座っており空気は重い。よくこんな重苦しい中で食事をしようと思えるものだ。奥に座っているライトブラウンの女性が王妃メアリー、その向かいにいるのが王太子レオナルド。王妃と一席分開けた隣に座っている赤毛の二人が第二側妃アンジェリーナとその娘である第一王女ジェシカだ。この二人、嗜好が見通っているのか非常に悪趣味なドレスを纏っている。そして彼女たちの向かいにいる黒髪の青年が同じく第二側妃の子である第二王子ツェッド。ユリアーナの記憶にある情報と照らし合わせて彼らの顔を確認した。

側妃とジェシカが一瞬驚いた顔をするとあからさまに早く座れと目で訴えてきたがその他は全員無視でこちらを見ようともしない。一番奥に座っている国王にいたっては全身真っ黒な服装でまるで喪服のようだ。彼のアメジストの瞳は暗く濁っており無表情だがどこか虚ろな雰囲気を感じる。これはとても期待できないと感じたが立ち止まってはいられないので軽く深呼吸をすると、覚悟を決めて王族たちに問いかけた。


「皆様、これからお食事のようですがここはどこで私は誰ですか?そこにいる赤毛の方に階段から突き落とされて私には記憶がありません。皆さまとの関係もわかりませんので、誰か教えていただけませんか?」


エミリアの発言に国王以外の全員が驚いてこちらを見てくる。ジェシカだけは顔を露骨に歪めてこちらを睨んでくるがそんなもの全く気にならない。無表情でジェシカを見つめると彼女は一瞬怯んで負けじと睨み返してきた。

だがジェシカは睨んでくるだけで何も言ってこない。他の王族たちも困惑しているようだが何も言ってはこなかった。どれだけユリアーナの存在を認めたくないのだろう。もう呆れを通り越して感心しそうである。しかしこれでは話が進まないのでしかたなく一番反応してくれそうなジェシカに話しかけた。


「赤毛の方……ああ、化粧の濃い年増の方ではなく、香水のキツいお若い方です。あなた、どうして私を突き落としたの?」

「なっ……!!」


ジェシカの母である側妃が顔を真っ赤にさせながら頬をピクピクさせている。もちろん側妃を煽るようにわざと言ったのだが効果は抜群のようだ。散々ユリアーナを影で虐げてきた女に一言くらい余計なことを言ったってバチは当たるまい。


「わ、私は突き落としてないわ!証拠もなしに言いがかりはやめてくれる!?」

「なら左腕を見せて。私を突き落とした時にあなたの腕を爪で引っ搔いたの。左腕に引っかき傷が三本あるはずよ。私、そこだけはちゃんと覚えているの」


ジェシカは目を見開いて咄嗟に自分の左腕を押さえた。今はドレスの袖で見えないがきっと傷が残っているのだろう。こんなに分かりやすい表情と仕草をするなんて彼女は王女としてちゃんと教育を受けているのだろうか。

そんなことを頭の隅で考えていたらジェシカは黙ってしまった。他の人たちも別の生き物を見るようにこちらを伺っているし埒が明かない。まただんまりをされても困るのでエミリアはつかつかと大股でジェシカの方へ行くと彼女の左腕を掴んだ。


「なっ、なにするのよ!?」


驚くジェシカを後目にエミリアは彼女の悪趣味なドレスの袖を無理矢理捲った。そこには三本の引っかき傷があり、ユリアーナを階段から突き落とした証拠だ。しかし掴んだ左手の手のひらには無数の赤いできものがあり、化粧で見えにくいが彼女の口の周りにもできものがある。無表情でジェシカを見つめながらエミリアは目を細める。また会話が途切れても困るのでとりあえずこのできものも一緒に指摘しておこう。


「やっぱりあなたが私を突き落としたのね。何故なの?それにこの手のひらにあるできもの、今騎士団で流行ってるって噂の病気じゃない?メイドが話してた症状にそっくりよ。食事が終わったら医者に診てもらいなさい」

「お、お黙り!さっきからありもしないことを言って何て失礼なの!誰か、彼女を連れて行って!寒さで頭がおかしくなった違いないわ!」

「頭がおかしいのはあなたたちよ。私が聞いているのに誰も答えてくれないなんて口がきけないのかと思ったわ」

「衛兵!今すぐこの娘を連れていきなさい!完全におかしくなっているわ!部屋に閉じ込めておいて!」


とうとう耐えきれなくなったのかジェシカと一緒に側妃まで騒ぎ出した。どう考えても医者に診せるべきはお宅の娘さんなのだけど。

騎士たちは側妃に言われて一応こちらへやってきたが困惑しており国王の方を伺っている。中途半端にしか命令に従えないなんて騎士の質も悪いとみた。この国の王宮仕えの人たちの教育はどうなっているんだと呆れかえる。



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