天才は鉛筆なぞ握らない
『なろうラジオ大賞4』参加作品です。
どこかの映画の前振りを真似て…
『このような塾はまだ日本にあるのかも。たぶん』
冬季合宿中は、スマホはおろか腕時計の持ち込みすら禁止なので、はっきりとは言えないが、今は恐らく1月2日の午後。
目張りされた窓から僅かに外の明るさが窺えるから
教室には時計がない
あるのはモニターに大写しされたカウントダウンを終えたタイマーだけだ。
「違う!! ケツだせ!!」
震える手でスカートを下ろした鈴木さんのお尻に容赦なく振り下ろされる塾頭の竹刀…嗚咽を押し殺した彼女の目から零れ落ちる涙。
「次、佐藤!」
「はい! 7月はオールスター、8月は甲子園があり、産まれた子供に対し野球にまつわる動機づけが行われる機会が多いからです。」
「お前の誕生日は7月18日だよな」
「はい」
「で、どこのファンだ?」
「僕は、特には…」
「ダメだ!!」塾頭の声が発言を差し止め、佐藤は黙ってズボンを下ろす。
「鈴木の発言からその程度しか付加できないとは情けない! あと、お前は答案用紙に『僕』と記述するのか? よって3倍の15発! タイツも脱げ! クソ野郎!!」
白のブリーフに振り下ろされる竹刀の鈍い音が教室に響き渡る。
「満額回答が出るまで倍々で行くぞ!心して考えろ!! 次、金田!」
「えっ?!」
「何が『えっ?!』だ! お前は佐藤が竹刀を受けている間、寝てたのか?」
問い詰められた金田は顔をクシャクシャにして嗚咽を上げてしまう。
「そうか、机の上をさっさと片付けろ! ゴーホームだ! 今、受講費精算の茶封筒を渡してやる!」
教卓の上には塾生全員分の茶封筒が積まれていて…金田の名前が引き抜かれた。
小六クラス50名足らず
前年の実績 開場中 5名 桜陽中 7名 …
驚異的な合格実績を誇るこの私塾に
『指導方針に一切、意義は申し立てません』との念書と共に送り込まれた“私”
「いいか! 天才なんてこの世に居ない! 人の歴史はしょせん模倣の連続だ! そのお遊戯の中で、死ぬまで擦り切れあがくヤツだけが上に立てる。そうでないヤツは邪魔だからオレの前から消えろ!」
何が正しいかなんて関係ない。
金田はその烙印を押された。
アイツが甘んじる“これから”は…“私”のなりたくない未来だ。
だから“私”は死に物狂いで考える。
ただ、目の前の問題だけに
全神経を集中して…
時々マンガなどで描かれていて…私が『嫌だなあ』って感じるバイオレンスを可視化したく、書いてみました。
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