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咲良家の食卓




 気を取り直して咲良さんの家に着いた俺たちは、特に会話をすることも無くコンビニで買った弁当を食した。


 食事の時こそ無言ではあったが、ゲームが始まると咲良さんはさっきまでと打って変わって元気に声を出してコントローラーを操作する。いつもの咲良さんだった。


「音無くん強いねー。私も少しはやれると思ってたのになー」


「一番好きなゲームだからね。負けられないよ」


 今やっている大乱闘をするゲームは、俺の最も得意なソフトで、オンラインでも特別戦に参加できるほどやり込んでいた。


 その後一時間、俺は様々なキャラクターを用いて連勝した。咲良さんはかなりの負けず嫌いなようで、ハンデや別のゲームを提案することなく、ずっと挑み続けた。


「ただいまー!」


 咲良さんがお花を摘みに席を外している時、玄関から元気な声が響く。すっかりリラックスをしていた俺は、体をびくりと震わせ、足音が近づくドアを見つめる。


「お姉ちゃん、玄関にあるくつ⋯ってだれ!?」


 俺はその初対面の女の子を知っていた。ハツラツとした声に、咲良さんを姉に持つ人は一人しか知らない。しかし


「えっと、あの⋯」


 すっかり慌ててしまった俺は、いかにも怪しい人のように挙動不審になり、まともな言葉が出ない。


「その声⋯あなたが音無さん?」


「あっ、うん。はじめまして、になるのかな?音無です」


「咲良蒼です。はじめまして⋯?」


 お互いに電話の時とは違い、よそよそしい雰囲気になってしまった。やっぱりリアルで話すのはハードルが高い⋯。


「蒼帰ってきてたの。おかえりー」


「ただいまお姉ちゃん。私、部屋にいようかな」


「蒼も一緒にゲームしようよ!私より蒼の方が強いでしょ?」


 気を利かせてしまった蒼ちゃんを、咲良さんがこちらに誘う。蒼ちゃんは言われるがまま、コントローラーを手に取りゲームに混ざった。




「お兄さんつよすぎー」


「蒼ちゃんも上手いよ。さっき負けちゃったし」


 ゲームは人同士の距離を縮める。今日、俺の中でその説が立証された。


 乗り気ではなさそうだった蒼ちゃんは、ゲーム数を重ねる度に通話の時のような元気なテンションに戻っていった。それに比例してゲームも強くなり、危うい試合が増えた末、一試合落としてしまった。


 ーー最初は『音無さん』と呼んでいた蒼ちゃんも、『お兄さん』という呼び方で定着したのは謎だった。


「⋯私全部ドベ」


 俺と蒼ちゃんと壮絶な戦いに巻き込まれた咲良さんは、三人乱闘で毎回真っ先にKOされ、負けず嫌いなその心もズタボロになっていた。


「別のゲームにしよ!実力差が出にくいやつ!」


 とうとう限界を迎えた咲良さんが、列車で全国の目的地を目指すゲームを提案する。俺と蒼ちゃんは目を合わせて笑い、それを了承した。




「なんでこれでも負けるの⋯」


 結果は、蒼ちゃん一位だった。咲良さんは⋯もちろん最下位。


 時間をちらっと確認すると、既に18時を回っていた。俺はそろそろお暇しようかと、言い出すタイミングを伺っていると⋯


「あら?知らない靴ね」


 咲良さんのお母さんーー由希さんが帰宅した。程なくして、リビングのドアが開く。


「こんばんは。お邪魔してます」


「音無くんの靴だったのね。三人揃って楽しそうね」


 俺が向き直して挨拶をすると、由希さんは微笑ましそうにテレビを囲む俺たちを眺める。


 ーーいいタイミングだしそろそろ⋯


 俺が帰ろうと席を立とうとすると


「音無くん、ご飯食べていかない?」


 全てを見透かしたようなタイミングで由希さんが食事に誘う。俺は申し訳ないので断ろうとしたが、蒼ちゃんと由希さんから視線で圧を感じ、俺は厚意に甘えることにした。




「なにかお手伝いできることはありませんか?」


 親に『友達の家でご飯食べてくる』と連絡し、料理の手伝いをしようとすると、由希さんは首を横に振った。


「大丈夫よ。紫音も手伝いはいいから、ソファで休んでなさい」


 そう言われ、仕方なくソファでご飯ができるのを待つ。蒼ちゃんもしれっとソファに座ろうとしたが、「蒼は手伝ってね」と由希さんに釘を刺され、トホホとキッチンに戻って行った。


「夜ご飯までお邪魔してよかったのかな」


「半ば強引にごめんね。たぶん、嬉しいんだと思う」


 咲良さんは呆れ口調にキッチンの方を向く。俺もつられてそちらを向くと、由希さんが時折こちらを見てはニコニコと微笑んでいた。


「それも咲良さんの努力の結果のひとつだよ」


「そうかな。そうだといいなあ」


 ほんわかしたところで、蒼ちゃんが食器の配膳を始める。俺と咲良さんも参加し、あっという間にテーブルに料理が並んだ。


 ご飯にコロッケにポトフにサラダ。バランスよくカラフルに彩られた食卓に、自宅との違いを実感する。


 後は美味しいご飯をゆっくり味わって食べるだけ⋯と思ったが。



「お兄さんは、お姉ちゃんのことどう思ってるの?」



 蒼ちゃんの一言を皮切りに、蒼ちゃんと由希さんから総攻撃を受ける羽目になった。




年末年始は時間を見て執筆しようかと思いますが、投稿できるかは未定です。ご了承ください。


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