拳マン第2部 1話
あれから、2年の月日が経ったな...俺はこぶし、拳マンだ。
今は適当な宿を作って寝泊まりをしている。それをまた転々としている。
いわゆる隠居生活だ。
あの後から、誰にも会いたくなかった。俺はあの時から全てを失った。守る約束も、親友も、信念も..何も残っちゃいない...
精神を保つのがやっとの生活をしている。
ここ2年は、食事に喉が通らない。それどころか、
拳「ウッ!ぉおぇ」
吐いてしまう。正直飲まず食わずでも生きてはいけるが、水分とは違い、エネルギーを補給しなければ、通常の力を出せない。今だと半分以下の力しか出せない現状だ。
松本にやった過ちに対して、トラウマになっている。 どうかしてんな..俺。
拳「ぁぁぁ...松本..松本...」
ここで嘆いてもしょうがない。また人が来る前に、立ち退けの準備をする。俺に残された余生は、逃げるだけの運命だ..
拳「そうえば、神田さんとか碗玖達は何をやっているのだろう。最近は気にも
留めて無かったな」
そんな独り言を嘆きながら外に繋がる扉を開けようした直前、
ドンッドンッ!激しく扉を叩く音が聞こえる。
拳「(人間の気配)..」
俺はその扉を開いた。そこには人がポツンと立っていた。
拳「...あんた大丈夫か?」
思わず声を掛けてしまった。それも無理はない、白目を向いたまま常に上を見ている人だから。
拳「..お、おい大丈夫か?おいッ」
呼び掛けても反応が無かった為、体を揺さぶってみた。すると、
「あぁっ!?アァッあぁrsz」
拳「ッッッ!?」
突然、首を360度に曲げながら奇声を発する。
拳「ちょまじで大丈夫か!?」
あまりの出来事に終始理解が追いつかなかったが、次の瞬間、
「たす...けて..アァッ!?」
ビシャァァァ!っと勢いよく、穴と言う穴から血が噴き出る。
拳「ッッッ!?」
多少の血を浴びながらも、すぐに距離を取る。
拳「なんだ..この血」
俺の体に血が付いた箇所には、ヒリヒリするような感覚に襲われる。
けど、この感覚...前にも感じた気が。そもそもこーいう風景もまたどこかで..
拳「何が起きてるかは、よう分からんけど..只事ではない事だけは理解した」
これまで2年間の今の今まで、俺は世界を見れなかった。今の世界はどんな感じなんだ?
そんな事を考え、さっきの人?にお手を添え、南無ってる矢先に...ナニかを感じる。
拳「ッッッ!?誰だ!」
思わず声を上げてしまった。この気配...どこか..覚えが...そうだ、そうだそうだ!この気配は!
スタスタと森から影を表す。
?「やぁ、久しいなぁ..間接も含めるなら、これで3度目だね」
拳「....」
こいつが気配の正体なのか..
全身が赤く染まった肉体、皮も筋肉も無さそうな...全てが血で出来た怪物のようだ。
?「そんなに身構えるな」
拳「..俺はお前を知らない」
ブラ「?..あぁそうかそうか、名を教えてなかったな。『ブラッド』、それ
が私の名だ」
そのまんまや..
ブラ「やっと会えたんだから、そんな目をするな、興が冷めるぞ」
拳「会えた?まるで俺を知っているような言い草だな」
ブラ「それは...なんでだろう?」
拳「いや..俺に言われても」
なんか抜けそうだけど、気配は本物だ。
ブラ「...というか何故立っていられる?」
拳「あっ?どゆこと?」
俺が立ってる事に不思議がられている。
ブラ「...まぁいい、この話はここで終わりだ。君と会いたかったのはただ
一つ」
拳「一つ?」
ブラ「君を屠る」
ビュンッ! ブラッドの指先から、真っ赤な弾が俺の目に目掛けて、撃ってくる。
拳「ッッッ!?」
ビシャァァ! ギリギリの所を腕でカバーする。
拳「...ぁぁ..うん?」
固体が体に当たったかのような痛覚に襲われた後、身体中は血だらけになった。
拳「この血、お前のかよ!?汚っねぇ...うげぇ」
ブラ「これで完了だ」
拳「何言ってんの?」
俺に付いた血が、体に浸透する。
拳「えっ、ちょなんこれ」
ブラ「もう遅い」
体内に駆け巡る違和感、この違和感は何も分からない。
拳「んだよ、なんか気持ち悪ぃ..」
ブラ「ほう?まだ耐えるな。この際だ、私の『血』の事言っておこうか」
拳「血?」
ブラ「私の血には洗脳・支配・改竄する効果がある。そして、一滴でも人体に
当たれば、そこから体内に浸透させて、内側から感染し、思考や行動は
全てが私の思い一つで操作できる。ゾンビ化にする事だって可能だ」
拳「カッ..ハッ...」
ブラ「ちなみに、一滴でも数滴でも百滴でも、効力は同じだ」
拳「あぁそうなん?良かった〜この血の量的に終わったと思ったわ」
ブラ「あぁそこは安心してし..えっ?」
拳「うん?どした?」
ブラ「何故そこまで流暢に喋れる?既に私の支配下に、置かれてるはずだ」
拳「ふぇ?あぁ...なんかスー、って抜けるような..わかる?」
本当になんか抜けるような..わかってほしいわぁ...
ブラ「..殺せる事には変わりないな」
拳「ッッッ!」
ビュンッ!ビュンッ!ビュンッ! 今度は先程より、早い弾速で攻撃を仕掛けてくる。
拳「おっと!?っぶね!?」
2年前より反射神経は劣っているが、この弾速ぐらいはまだ見切れッ
ビシャァ!
拳「ウグッ!?」
やっぱ無理ですねわかります。
ブラ「..(やはり感染しないな)」
拳「ふぅ..」
ある程度の猛攻をなんとか凌ぎ切った後、こっちも攻める体制を整える。
拳「マジの戦いなんて久しぶりだ」
この調子がいつ崩れるかは知らんけど、まだまだ崩れる事はないだろう
拳「ッッッ!」
ドンッ 地面を蹴り飛ばして、勢いよく迫る。
拳「『こぶしパンチ』!」
まず一発。
ベチャッ なんか明らかにおかしい打撃音がする。
俺の手は確かにブラッドの右側を貫通している。
拳「あれ?」
ブラ「私は全身は血で出来ている。打撃など無意味」
そうか、液体か。おかしいと思った。
拳「なら無意味を意味にある攻撃にするまでだ!..あれ?」
腕が抜けない..こいつの体が固まったのか?..いやそんな事ありえる訳が。
ブラ「私が常に液体だと思うなよ?フンッ!」
バシャッ!バシャッ! ブラッドの背中から、真っ赤な触手が生えてくる。
拳「えっきもきもきもきも!?」
ブラ「棒人間には言われたくないな!」
ジュクシ!ジュクジュクシ! 俺の体に刺され、何かを注入される。
拳「カハッ!?..何した」
ブラ「ちょっと納得いかなくてねぇ。君のその耐性がどこまで耐えれるのか実
に見ものだ」
そして、ブラッドの血を俺の身体中に注入し続ける。
拳「あぁ!も〜!気持ち悪ぃよ!」
ブラ「不可解だ。(私の血をいくら注入してもこいつの意思を操れない...
まさに不可解だ。これはもう私の手には負えなさそうだ)..殺るか」
触手を更に増やし、今度はより尖った触手を出現させる。
ブラ「し..ね?」
片腕だけが残ったまま、こぶしの姿が見えない。
ブラ「どこに行った?(片腕を斬って、消えたと言うのか?)」
背中にこぶしが張り付く。
拳「『連続こぶしパンチ』!」
ドガドガドガドガ!今の本気で殴り続ける。
ブラ「私には打撃は通用しないぞ」
拳「それは囮じゃワレェ!」
ブラ「なに?」
拳「『余波バージョン!』」
ドォォォン!余波を起こし、油断して硬直化を解いたブラッドの体を消し飛ばす。
ベチャァっと地面にブラッドの血が飛び散る。
拳「はぁ..はぁ...」
勝ったのか?..これほどまで手応えを感じない倒し方は経験した事がねぇ。
拳「...腕..くっ付くかな?」
自ら斬った腕を拾い、くっ付けようとする。
拳「ぁあ!くっ付けよ!」
前は当たり前のようにくっつけれていたのに、今は付けにくい。やっぱり俺は弱っているのか..
拳「くっ付けよォォォォ!」
グチュッ!
拳「ぐッ!?..ハァ...ハァ」
くっ付いた..のか?
俺は腕を回したりして確認をした。
拳「本当にくっ付いてる..ハハ」
その瞬間、力が抜け落ち、地面に居座る。
拳「安心したら力が何も入らなくなっちゃった。にしても厄介だったなぁ」
感想を述べつつ、また力を振り絞り、立とうとした瞬間に、
ブラ「予測不能だな、君の実態は」
拳「なんで..生きている?」
飛び散ったブラッドの血液は、いつの間にかブラッドの原型を造っていた。
拳「..来いよ...覚悟は出来てるぞ」
また再び戦いを交えるのかと、軽く武者震いをし、身構える。
ブラ「待て待て、私も血を使いすぎた。もう体力は使いたくはない。だから」
何かを合図する。
拳「何するつもり..だ」
もう察した。来る
ダッダッダッっと、森から激しい音を立てて走ってくる。この足音、1人ではない..
拳「100だ」
そして俺が言った通りに、100人ものの人?が俺に目掛けて走ってくる。
拳「ちょっちょっと!?」
もうわんさか状態だ。攻撃しようにも、気配は人..俺は毎回躊躇ってしまう。
ブラ「心優しい棒人間だ。抜け出せれるように頑張れよ〜...では」
スタスタとブラッドが立ち去る。
拳「待て!ちょっどいてく..どけやゴラァ!」
ピュンッ!高く飛んで、囲まれる事態は避けれたが、ブラッドは逃がしてしまった。
拳「...もういいやあいつの事は忘れて、こいつらをどうにかしなきゃ」
意識を飛ばすか?いや、今の余力じゃ厳しい。逃げるしかないのか..
「打て!」
ババババババババ!
聞き馴染めのある声と共に、銃声が鳴り響く。
拳「ふぇ?」
バタバタと人?達が倒れていく。
拳「ちょっと、お前らやめろよ!人を撃ち殺すなんてどうかしてるぞ!悪魔か
お前..ら」
俺は言葉を失った。俺の目の前にいる相手が・ ...会いたくもなかったぞ。
拳「松本..社...」
社「やっと見つけた..拳君」