一千の兵との戦争が今、始まる。
実は二章はすべて書き終わっています。
一万文字位先の話ですね。
しばらくは毎日二度更新でやっていきますので是非ブックマーク等よろしくお願いします。
倒れ込んでいた、犬の垂れ耳が頭についている重装備の兵が血まみれだったから
だ。
一体どうやってここまで来たのか、わからないほどに重症だ。
この街には病院はあるのだろうか?
だったら早く連れて行ってやらないと、命の危険がある。
急いで駆け寄る。
「あんた、大丈夫か……そのままじゃ死んじまう。今、手当を……」
いいかけた言葉が遮られた。
『見てわからねえのか、俺は『獣人』だ。このくらいじゃ死にはしねえ。それよりも、皆聞いてくれ』
俺の方を借りて立ち上がった。
見かけどおり大男で、装備もあってか非常に重たかった。
『イソリンナ城のヘルミ第一王女が……攫われたんだ』
その言葉で、ギルド嬢までもが顔面蒼白になる。
この国の王女が攫われたということか。
たしかにそれは一大事だ。
ギルド嬢が叫ぶ。
『では、イランテン王国からの緊急クエストの発注ですね?』
血だらけの男は言う。
『イランテン王国第二騎士、アンセルミが命ずる。緊急クエストを発行せよ。内容は、【北門にいる一千を超えるポフィオイネン王国の騎士の討伐。そして、ヘルミ王女の奪還】だ』
その瞬間。
『うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』
ギルドの中がまるで声を競うかのように喧騒が包む。
「おいアンセルミとやら、緊急クエストとはなんだ?」
ルーナが怪我など気にしていないかのように、喧騒の中近寄って問いかける。
「お前さん達、ギルド歴が浅いのか? 緊急クエストだよ。クエストランクを取っ払って、誰でも受けることの出来る特別クエストだ。成功すれば、報酬は独り占めできるんだよ」
「その代わり失敗すると死んじまうし、今回だと国の存続も危うい」のだそう。
「ふむ、ではもし我らカオスファミリーだけのメンバーでその緊急クエストとやらを、成功させたらどうなる?」
「そんなの無理に決まってるだろ、異国のお嬢ちゃん。でももしできるんなら、今回の場合報酬として貴族の地位を与えられるのは当たり前として、皇族に入ることも出来るかも知れねえ。一生遊んでも使い切れんガルドとともにな」
ふん、とマントを翻すルーナ。
まわりがギルドの外に全力で向かっている中、冷静に何かを唱えた。
「Redi ad id quod fieri debet.(時よあるべき姿に戻せ)」
金色の魔法陣がアンセルミの下に浮かび上がる。
するとどうだろうか、血だらけだった防具の血液のみがもとに戻っていきものの数秒ですべての傷が完治した。
「な、なんだこれは……異国のお嬢ちゃん、あんたがなんかしたのかい」
「ふん。額の大きな傷は古傷か? 時を少し戻しただけでは治らなんだ。問いに答えた礼だ。気にするでない」
「あ、あんた名前は……? この国の者ではないだろう」
「カオスファミリー所属、ルーナ=ウィリアムズだ。我が名、生涯忘れるでないぞ」
「分かった、ミスウィリアムズ。俺は戦に戻る。あんたは逃げた方がいい、この国は戦場になる」
「何を言っておる? 片付けに征く」
「何をだ……?」
「一千の兵を、だ。いくぞ、ファミリー達よ」
ルーナは報酬を聞いたからなのか、とてもやる気に満ち溢れていた。
「まあ、あの報酬を聞いたらやるしかないよな梓紗」
「はい……できるだけ亡くなる方を減らしたいです!」
たかにこれは戦争だ。
一般人が戦えば、大勢の死人が出るだろう。
そう、一般人が戦えばのはなし。
だが、このカオスファミリーのメンバーは違う。
もしかしたら、死人を出さずして制圧することも出来るかもしれない。
そう……殺すのは、俺だけの役目だ。
それをファミリーと呼んで認めてくれた人たちに、背負わせるわけにはいかない。
恋する『最強』達の戦争が今、幕を開ける。
次回からガッツリバトルです!
いきなりルーナちゃん視点から始まるので、一番面白いかも知れません。
できたらブックマーク等してくれると幸いです。