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誰かにとっての"美しい"

作者: マヨ


その子は浮いていた。


必ず教室の一番後ろの窓側の席に座ると、肘をついて窓の外を見ていた。

その日に限って空は綺麗で、なんとも言えない美しさがあった。

時折、ぼーっと斜め右下を見ることもあった。

「一体今、何を考えているのだろう」

そう思う人も少なくはなかった。


友人が「大丈夫?」と心配することもあった。

そうすると決まって、「大丈夫!」と笑顔で言うのだった。


下校途中、突然隣から居なくなったと思えば

しゃがんで道端に咲いている花を見ていることもあった。


彼女の頭の中は誰も知らない。

きっと自分の世界がある、そうに違いない。


ある日、絵具で画用紙に絵を描く授業があった。

好きなアニメ、綺麗な秋の景色、ペットの犬、趣味のギター。

様々な絵。

そんな中彼女は、大きな画用紙の真ん中に、地球を描いた。

黙々と。

筆じゃ細かく描けない部分まで、鮮明に。

そして、「世界は狭い」という題名をつけた。


いつも難しい表情を浮かべる彼女に、何らかを察することができた。




一方彼女は、笑うことだけが"楽しいこと"ではないと気づいた時から

友人と深く関わるのはやめた。

何を言われようと自分の自由、というスタンスで生き始めたのだ。

その頃から気難しく、唯一の理解者は自分だった。

誰かに理解されてもそこから何が生まれるのだろうか、とまで考えることもあった。


今日も自分の中で流行っているJazのプレイリストを聴いていた。

目をつむって、無になって。

そうすると頭がふわふわして、自分だけがどこか別の空間にいるようだった。


夕方、涼しくなった頃に河川敷へ行くと波の勢いがいつにも増して早いと思ったことがある。

もしここで大雨が降ったら、きっと波が溢れてマンホールからも溢れ出して、

そして、壊れた傘が散乱するんだろうな。

沈みかけの夕陽を眺めながらそんなことを考えていた。


少しずつ暗くなってきた所で、現れた三日月の写真を撮った。

毎日の日課と言えば、月の写真を撮ることだ。

365日、集めた写真を見ては心やすらぐ居場所だと思った。


よく考えれば、目の前の土も水も空も自分さえも、一体なんなのだろう。

この世界が0から始まったとするならば、誰が何の目的で作ったのだろう。

時代、進化、勉強した所で、誰が解明できようか。

私はそんな謎に度々直面するがそれを無視し、

月や星はどうしてこんなにも美しいのだろうか。そればかりを気にしていた。

雲に隠れていようがどんな時でも、空から地上を照らしているの。

どのくらい遠くにいるの、なぜ照らしているの、毎日形が変わるの、

謎ばかり。

それでもなお、一番美しい。


明日も私は、窓側の席から、空を眺めようと思う。


お読み頂きありがとうございます。


ぼーっと考える時間や誰も知らない私だけの時間。

その空間にいる時に、より生きていると実感します。


私だけの拠り所がたくさんあっていいのです。

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