表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/18

事情把握、全てを理解……何もないのか

 『……さて、何から話しましょうか』


 チスイに現時点における最重要事項である社会情勢の確認を求める……べきだが、やはりあの後のことが気になる。


 アイと施設の皆に断りを入れたうえで、魔王との戦闘後における推移の情報を求める。


 『……そうですか、わかりました私の分かる範囲で話させていただきます』


 チスイの情報を精査、あの後魔王は重傷から回復するが生命力に大幅な低下が発生し近く死亡したとのこと。


 ……ああ、なんだこの感情は……嬉しさも僅かにあるがそれ以上に虚しい、のだろうか?


 魔王に重傷を負わせた事実に魔族たちから驚愕と恐怖が混じった、それでいて畏敬及び崇拝の混じった視線を受ける……まあ人間で言う神様を殺したというところだから当然か。


 次いで撃退された四天王だがこちらは全員生還を果たしチスイ以外も寿命を全うした模様……確かに乱戦の最中で止めを刺す余裕はなかったな。


 人類は全文明及び社会が崩壊、けれど当方の抵抗にむしろ感激した魔王直々の指示により個人単位での生存者は見逃された様子……だがこの魔獣溢れる世界で文明の恩恵を失った人類が生き残れる可能性は0%だろう。


 『……戦後処理としてはこのぐらいですね、ちなみに魔王様に内部器官を全損されたほのか様は戦闘の余波で発生した地割れに飲み込まれたため体の回収は断念されました……最も確実に死亡したものと思われておりましたが……』


 脳細胞まで破損が及ばなかったこと、心臓部分が半壊で済んだために緊急用修復機能により長い年月をかけて再生することに成功した事実を開示する。


 ……地割れに飲まれずに止めを刺されていたら確実に死亡していたな……やはり敗北としかいえないな


 防衛任務の失敗を実感する、苦い記憶が復元される……アイより当方の精神的苦痛を配慮した発言を受けてこれに問題ないと返答。


 更なる情報を求めて以降の社会情勢の変化及び現時点における世界の在り方、他の国の位置や社会文明等についての情報を求める。


 『……それに対しては、申し訳ないのですが……何もかも失われたという表現がふさわしいでしょうか』


 思考と胸部に異常発生、穴が開いたような苦痛……喪失感と判明、薬剤での抑制は不可能と判断しこのまま対話を続行する。


 『……当時の魔族にとって暴力だけが全てでした、欲しいものは奪うだけ……何かを作り出したりするのは愚か者がすること……衰退は当然でした』


 さらに人類という好敵手を失い強敵を求めた魔族の上層部は意図的に魔獣を強化し量産を始めた事実が伝達される……道理であれほど多種多様な魔獣があちらこちらにあふれているわけだ


 『……私は途中で世界全体の衰退に気づき慌てて力は弱くとも技術のある者、精神薄弱でも知性ある者の保護を始めましたが遅すぎました』


 既に暴力こそが唯一無二の価値観となり、魔獣が蔓延らせこれを退治することのみに生きがいを感じる実力者……そして少しずつ力のピラミッドの下のほうから始まった崩壊。


 下が崩れれば上もまた体勢を保つことができず崩れ落ちることを繰り返し、魔物の文明はおろか生存域すら衰退が進む。


 チスイの努力も虚しく彼自身も自らの領内の文化水準を保つのが限界、他の集落に支援を回す余裕以前にどこに誰が居るのかの情報すら得られなかったと語る。


 『……人類と戦っていた時は強くなるために文化を真似ていましたし、攫った技術者を利用したりして上手くいっていたのです……皮肉な話ですがあなた方人類を滅ぼしたがために共生関係であった我々もまた滅びの道を歩みだしたのですよ』


 実力者もまた好敵手が居ないことで代替わりするごとに天性の才能に頼り鍛錬を怠るようになり、弱体化を繰り返して魔獣により排除された模様。


 かつて四天王と呼ばれた子孫のみが未だ魔獣に通用する戦力を有しているのが現状、なれば他の種族に至っては魔獣に蹂躙されることを防ぐこともままならない状態に陥っていることが判明。


 逆に魔獣はどんどんと勢力を伸ばし、もはや魔族ですら管理できないほどの勢いで繁殖し今では彼らが世界の全てを牛耳っているのが現実である……はは、何ということだ。


 ……まだ、魔王が統治した社会が築かれていたほうが救いはあったな


 既に所属すべき社会など存在はせず、討伐すべき敵勢力もまた存在しない……生体兵器である私の居場所は既に失われていたのだな


 『……私が知り得る情報はこのぐらいです、ですから恐らくここ以外に……彼らの国を見たでしょう、あれですら国と称せるのが現状で……あれ以上の国は存在しないのが現実なのです』


 アイがチスイの管理する国について言及、解説を聞く限り当方の活動時期より二世代ほど前の文化水準であると判明……さらに修理不能設備や技術伝達の失敗により衰退し続けている模様。


 『……暴力で何もかも解決できた時代が懐かしいですよ、いや暴力で動かせる相手がいた時代ですね……今では魔獣相手に蹂躙するぐらいしか使い道がない……虚しい話です』


 かつての栄光を取り戻そうと他者の保護が可能である四天王の子孫を集めての文明開化を目指した事がこの夢の国の成り立ちだと判明。


 全ての情報開示を終えたチスイは扇子に酷似した武装を装着して臨戦態勢へ移行、当方との戦闘意欲を見せる。


 『……もう強敵が出現することはあり得ない状態で腑抜けたような日々を送っている中で戦神姫様、ではなくほのか様でしたね……まさか私の生涯で最も輝いていたころの相手、最大最強であった憧れの強敵であった貴方様に出会えたのです……今の私の感激が伝わりますかねっ!?』


 チスイの体内に圧縮された膨大な魔力が解放、地域一帯に陥没及び地割れが発生……強力な圧力によりリキを含む四天王から苦痛混じりの悲鳴が発生。


 通信回線を通して空軍施の従事者より振動の申告、世界全体の揺れを感知……懐かしいなこの威圧感、何故だろうか妙に高揚する


 『……ほのか様にとっては私は決して許せない生涯の敵でしょう、ええそれでいいのです……そうであってくださいっ!! もし私に対して敵意があるなら憎しみを込めて一撃をっ!! もし僅かでも憐憫の情が混じるならば同情を込めて一撃をっ!! 攻撃を開始していただきたいっ!!』


 チスイからも感情の高揚を確認、魔王軍との戦闘時でも観測したデータが存在しないほどの興奮……皮肉なことに、少しだけ気持ちがわかってしまう。


 ……私が生体兵器としてふるまえる相手は今となっては恐らくこいつが唯一無二の相手、何よりこいつはあの日敗北を与えた軍の最後の一人っ!!


 『……ほのかぁっ!?』


 アイの悲鳴を感知するも感情の抑制に至らず、チスイに非戦闘員を巻き込ぬよう場所の変更を条件に戦闘を承認した。

 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

 少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。


 ぜひともブックマークや評価をお願いいたします。


 作者は単純なのでとても喜びます。

 

 評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。


 よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ