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頭部装甲を解除……さっぱりしたな

 外部の地層を魔術的接触により資材へと変換し、施設内設備を用いて建物全体の修繕を完了する。


 次いで発動機の修理を行い防衛設備の再稼働に成功する……後は館内清掃が必要か。


 魔獣の死骸を解体し使用可能物資を回収、後に残った汚染地帯の清掃を行い発生した汚物の焼却処分を行い設備の完全修復を完了する。


 道中回収したエネルギー吸収装置と思わしき部品の自動解析、結果が出るまでの間を利用し今後の方針について勘案する。


 鳥獣族の個体より得られし情報次第で行動は変動するがどちらにしても移動は必須と判断。

 

 同時に移動先にて今回のような事態が発生した場合における人的輸送手段の必要性を認識、内部データより飛行要塞計画を呼び起こす。


 ……いざというときの第二拠点にもなりえる、時間のあるうちに生産しておくべきか

 

 飛行要塞の建設のために必要素材の確認……これまでに回収した魔獣の素材を流用可能と判断。

 

 鉱石類に関しては魔術的接触により充足可能、早速生産に取り掛かる。


 『……おはようほのかぁ、また徹夜?』


 アイの起床を確認、日照量から朝食の経口摂取を進める。


 『……はぁい、ほのかもちゃんと寝なよ?』


 睡眠の必要性がないことを強調、飛行要塞の建設を続行する。


 『……ほのかさん、ちょ、ちょっと来てくださいっ!?』


 カナの招集命令に越権行為である旨を伝達、その上で事態の説明を求める。


 『……あ、新しくきたドマさんとギリが取っ組み合いを始めて』


 混乱の鎮圧を収めるためこれを了承、作業を一時中断しカナの動きに追従する。


 『……くそ、こいつ生意気だっ!?』


 食道にて争いを行う男性両名を叱咤し物理的拘束により強引に引き離す。


 部屋の隅でドマがリアとミリの二人と赤子の世話をしながらこちらの様子をうかがっていることを確認、混乱は男性二人から広まっていないことに安堵する……なぜ私は安堵した?


 ……諍いからの混乱、からの対話での鎮圧、からの武力鎮……思い出すな私よ


 両者の言い分を聞き取り調査、ギリが施設責任者としての振る舞いに対し年上であるドマの目に反抗的に映ったと判断。


 特にドマには鳥獣族に対する悪いイメージが追随している模様、これを収めるべく対話での鎮圧を……対話での鎮圧を……ああ、くそ。


 ……いつから私はこんなに弱くなったっ!?


 ドマとギリの態度が激変、唐突に互いへと謝罪を行いつつ私への配慮を口にする。


 『『……お、俺たちが悪かったからそんなに落ち込まないで』』


 どこかで見た光景、いっぱし気取りの男子の口調はどこかあいつの声に重なる……あいつのことばかり思い出す。


 ……装甲越しでどうしてこうも感情が伝わるのだ、そんなに私はわかりやすいのか……だがあいつもそんなことを言っていたな


 リザが接近し兄へと叱咤を行い、再度ギリへと謝罪を行う……どうやら赤子を鳥獣族に任せることでようやく動けるようになった様子。


 ギリが快諾し混乱は収束、改めて全員に食事の経口摂取を指示……そういえばアイの姿が見えない。


 『……どうしたの?』


 姿を見せたアイに行動を確認するが感情及び体温の高ぶりを検知、恥じらいと判断。


 『……排泄行動か?』


 アイによる暴力事件発生、謝罪を繰り返すことで収束することに成功……外部にいる間は私の監視下で行っていた癖にいつの間に羞恥心を覚えた?


 落ち着いたアイによる食事への同行の要求、不要と判断するが精神面でのケアを鑑みてこれを了承……断ったらまた五月蠅そうだ。


 頭部装甲の一部を解除し口部分を露出、流動食を経口摂取……実に無駄だ、何よりこの味が私にはむず痒い


 『……その頭のやつ、全部外したほうが楽じゃない?』


 アイによる頭部の開示要求発生、必要性が存在しないことからこれを拒絶。


 『……俺も顔見たいです』


 ギリによる頭部の開示要求発生、必要性が存在しないことからこれを拒絶。


 『……私も見たいです』『……私もー』


 カナとミリによる頭部の開示要求発生、必要性が存在しないことからこれを拒絶。


 『……ほのかってひょっとして蛇頭族とか』


 ドマが顔を見せることで効果を発揮する種族との推論を口にする、これを否定する。


 『……ごめんなさい、私もほのかさ、ほのかの顔覚えたいです』


 リザによる頭部の開示要求発生、必要性が存在しないことからこれを拒絶。


 『……恩人様の顔を見て見たいです』


 リアによる頭部の開示要求発生、必要性が存在しないことからこれを拒絶……どいつもこいつも、こんなものを見て何になる?


 ……そもそも人類であることがばれる可能性があるではないか


 話を打ち切りリアから情報収集に移る……だから、皆してそんな目で見るな


 頭部露出による心境状況の悪化の可能性を提示するが、全員これを拒否……知らんぞもう


 これ以上の抵抗は士気の低下及び信頼状態の悪化につながると判断、頭部装甲を解除し頭部を露出する……ああ、本当に久しぶりだ


 ゴーグル抜きで視界に入る光は異様に眩しく感じる、感覚器官の衰えだろうか……わからないが、不思議と不快ではない。


 「ほのかぁ……何族なの?」


 音声が直接聞こえる、風を直接感じる……髪が靡く感触、肌が空気に触れる感触……すべてが新鮮だ。


 「えっと、長耳族に似てるけど……耳短いし……」


 「短身族にも似てるけど……背高いし……」


 「回答を拒否する」


 久しぶりの発声、自分の声がまるで他人のものにしか思えない……電子構成で形どられていた世界が現実味を帯びて伝わる。


 「あ……ほのかさ、ほのかの声とても綺麗です……見た目も、すごい……」


 「やめろ、その発言はーーを思い出す」


 気が付けば口にしていた、今まで思考を洩らすことなどなかったのに……私は、どうやら少し、いやかなり正気を失っているようだ


 「あ、ごめんなさい……」


 「だぁぁ……」


 赤子が私に手を伸ばす、顔に触れたいのだろうか……近づいて体温を直接感知する、熱量ではなくこれが温かいということだったか


 ……こんなことをしている場合ではないのだけれど、いや急務と呼べるほどの事態は迫ってはいないか


 思考が定まらない、胸部にも異常を感じる……けれども何故だろうかそのどれもが不快ではない。


 「そ、そのーーって誰なんだっ?」

 

 「ああ~、ギリったら気になってるぅ?」

 

 「ミリ、お前ちょっと黙れ」


 耳を通して聞こえる声はどうしてこんなにも……おかしい、何故私は魔族言語を理解してるのだ?


 ……頭部装甲を外した今、自動翻訳機能は停止しているはずでは?


 頭部装甲を持ち上げ調査……しようにも結果を提示する肝心の頭部装甲を外しているのだからどうしようもない。


 後に館内設備を用いて調べるべきか、いやそもそももう一度頭部装甲を装着すれば済む話なのだが……もう少しこうしていたいと思うのはやはり思考のエラーが発生しているのだろうか?


 「ねえ、私も聞きたいよぉほのかぁ……」


 「機密事項だ、それより個体名リアに情報開示を求める」


 「え、あ、は、はい、なんでしょう?」


 「個体名リアにまず……」


 「ほのかほのか、敬称不要だろ?」


 ドマの言葉に皆から軽い失笑が零れる、本当に面倒なことになった気がする。


 「リアにまずは年齢の確認、および群れの規模及び最年長者の年齢と行き先等わかる限りでの返答を求める」


 「え、えっと齢は14歳で、群れはたくさんです、多分10人はいると思いますから、長老はなんと28歳なんですよもうすぐ30年も生きながらえたことになりますすごいですよねっ!! 行先は……もうわかりません」


 10人の群れで大勢と表現され、30歳を長生きだと称賛する世界か……新しい事実が判明したわけだがどこか虚しく感じるのは何故だろうか。


 「リアにこの世界の社会基盤についての解説を求める」


 「え、しゃ、社会基盤っ!? そ、そんなこと言われても……」


 「社会文明について把握していることを提示していただきたい」


 「しゃ、社会文明……ご、ごめんなさいわからないです」


 会話は成立せれども意図が伝わらず、或いは本当に知らないのだろうか?


 「現時点において存在するこの拠点のような効率的な居住区が立ち並ぶ地区の存在の知識は?」


 「え、えっと、こんなに立派な建物見たことないです……それにご飯でも飲み物でも幾らでも出てきちゃうこんな夢みたいな場所初めて見ました……」


 一体魔族の文明はどうなったのだ、魔王は世界を支配した後どうしたというのだ……少なくとも当時は陣地の敷設や部隊の構成や装備の充填に糧食の用意も効率的に行っていたではないか。


 「街……いや、村レベルでもいい集落の存在はどうだろうか?」


 「き、基本私たちの種族は移動し続けていて一カ所に定住は出来ない……魔獣に襲われちゃうから……で、でもいつかは夢の国に行くんだってみんなで話してて……でも弟たちが病気で脱落して、やっぱり放っておけなくて私……」


 「夢の国とやらについての詳細を求む」


 「あんなの信じてるのかよ……これだから鳥獣族は……」


 ドマの発現にギリの目が厳しくなるのを確認、よほど恨みは根深い問題なのだろうが現時点においては重要とは思われない。


 「ドマに発言の停止を指示する、リアによる夢の国の解説を求める……後に内容に差異があればドマによる解説を拝聴する」


 「は、話していいんですよね……え、えっと夢の国というのは魔王……「だ、駄目っ!?」」 


 魔王という単語を聞いて愛が敏感に反応を示すが、その前に私は拳を机に叩きつけてこれを粉砕してしまう……何をしてるんだ私は


 胴体装甲に手動で干渉し薬剤を調合し摂取を行う、感情の抑制に成功……論理的思考より頭部装甲の着用を優先する。


 『……ご、ごめんなさい』


 謝罪の必要はない旨を提示、感情を発露して皆の精神状況に負担をかけたことを謝罪し机の修繕を完了させる。


 再度リアに続きを言及するよう指示、その際に魔王という単語の使用も許可しこちらの反応は無視するよう伝達。


 『……は、はい、あ、あのですね夢の国はま、魔王様が作り上げた国でそこではどんな種族も関係なく幸せに暮らせるって言われてます』


 魔王がどのように、どんな制度の下に着手し構成した国なのかの詳細を尋ねる。


 『……え、えっとぉ……わかりません、ただ幸せになれるとしか……』


 リアの発言を否定する内容がリザより発声される、内容を精査したところ蜥蜴族の前世代が探索してなお発見に至らなかった模様。


 位置関係についての情報について質問を行うと、リア及びリザ両名の口より東の方角であることは共通の見解であると判明。


 地形図を参照に東の方角を精査、旧魔王の本拠点が存在した地点を発見しリザに尋ねるも探索していない可能性が発覚する。

 

 『……そんな山の上のほう調べられなかったと思う』


 現時点で唯一の社会文明が構築しうると思わしき夢の国、他に当てもなく当面の目的地として採用する旨を開示する。


 『……でもそんな遠くまで、私たちが飛んでも何十年かかるか……それに……』


 リアが蜥蜴族の赤子へ関心を寄せる、皆で移動するとの誤認識故と判断しあくまで一人で移動することを伝達。


 自身の最高速度なら七日程での往復が可能と判断、早速移動準備にかかる。


 アイを除く全員より妨害発生、夢の国への同行許可を求めらえるも必要性が見られずこれを拒絶する……アイはどうした?


 『……私、足手まといだから』


 自己に対する正当な評価と受け取る、よって他の全員にも同様に告げて前回の失態を踏まえて……踏まえて……移動前に基地施設の防衛能力を高めることを優先事項とする。


 夢の国が実在する確率は低くこの場所が今後の活動拠点になる可能性が高い、よって論理的結論だと判断し早速行動を開始する。


 この作品を読んでいただきありがとうございます。

 

 少しでも面白かったり続きが読みたいと思った方。


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 作者は単純なのでとても喜びます。

 

 評価はこのページの下の【☆☆☆☆☆】をチェックすればできます。


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