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彼女に手を引っ張られて、ボートに乗ろうとしていた最中に運の悪いことに燃料が切れてしまったらしい。
そのまま役に立たなくなったボードを一緒に落ちる。
咄嗟にミサの手を引っ張ると、そのまま彼女の頭を守るように抱きしめた。
くそっ!! 頼む。俺は死んでも構わないからミサだけは!!
俺は自分の持っていたフックショット(ワイヤーのついた先端のフックを物に引っ掛けることで移動できる銃)を、近くに歩きに狙いを定めて打つ。
フックは勢いよく木に刺さると、俺たちのことを引っ張って行った。
「……はあっ……」
盛大な溜息が安心により出る。
あのまま落ちて頭を地面にぶつけて死ななくてよかった……。
特にミサを巻き込んで死ぬわけにはいかない。
そのまま地面にゆっくりと落ちていき、銃のワイヤーをしまう。
俺の腕の中のミサは気絶していた。
そのことに気づいた俺は、慌てて彼女のことをお姫様抱きにする。
どこか近くに横にできるところはないか!?
周りをキョロキョロと見渡すと、一緒に落ちてきたであろうホバートボードが目に入った。
近くに行き、土を軽く払うとミサの身体を横にする。
息をしているか確かめるために、自らの耳を彼女の口元に近づける。
……よし、大丈夫だな。
ちゃんと息をしているみたいだ。
スースーと聞こえる音に心の底から安堵した。
『おい、カイト。聞こえるか?』
その時、俺の右耳につけていたインカム(通信機)から、ネロの声が聞こえてきた。
そういえば、禁断の森に入る前にネロに渡されていたんだった。
すっかり忘れていた存在に耳を傾けると、『大丈夫か?』と言うネロの気遣う声が聞こえてきた。
電話の向こうの無表情な顔が想像できて、妙に安心する。
「ああ、俺もミサも無事だよ」
『そうか。
僕のほうも変な魔物が襲ってきたが、ミサのジャンボシャボン玉のおかげで無傷だ。』
安堵したような優しい声音でネロは話す。
『今、インカムのGPSでそっちに向かってる。
……待っててくれ』
プツリと最後にそう言って切れてしまった。
「待ってろ、か……」
本当に俺は無力で何もできずに、二人に頼ってばかりなことを思い知らされる。
ミサは相変わらずに眠ったままで、ふとこのまま起きないんじゃないかとそんな不安が頭をよぎる。
ーーーーーその時。