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キミへ世界最期の告白を!  作者: 戦告
第2章「終焉」
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第31話



「消えちゃったね……」

「あぁ……あぁ……」


 今、この世界に生きているのはきっとレイとレンの二人だけだろう。

 辺りを見回しても、光の粒子が至る所から空へ向かって登っていく光景しかない。


 神父が消えてさえ、二人は未だに実感が出来ずにいた。だが、確実に神父の残した言葉は二人の心の中にしっかりと引っかかっている。


「ねぇ、レイ。どうしてこうなったんだろうね」

「全部……神様のせい……だ」


 レンは落ち着けるようにレイを抱き締める。

 レイは自分が事の発端である、と本能で理解しているのかもしれなかった。

 ぎゅっと存在を確認するように密着させる。


「私はキミの頑張って生きてきた全部のことをちゃんと知ってる。ちゃんと分かってる。だからキミのせいじゃないんだよ」

「うん……うん」

「私もキミもみんな頑張った。ね?頑張った人は誇っていいんだよ」

「僕は遅すぎたのかもしれない」

「レイは一人じゃ何も出来ない時間を多く過ごしてきたよ。でもね、そんな時でもおばあちゃんを助けてあげたし、私が教えてあげたらすぐにできるようになったじゃない」

「……うん」

「だから、いいの」


 レンは子供をあやすようにそう言った。

 レイはそんな励ましに少しだけ、救われた気がした。いつも近くにいて支えてくれたり、時には笑われたりしたレンなら自分のことを自分よりも理解しているのかもしれない、と思った。


 レンは納得した様子を見て安堵したのか少しだけ悲しそうな表情をした。

 それだけではレイには伝わらなかった。


「けれど……ごめんね」


 ハッとレイはレンから離れてその姿を見る。

 するとやはり、レンの足の末端、手の末端から光の粒子が見て取れた。


「レン……」

「ははは……どうやら、私もダメだったみたいだ」


 少し神父の口調を真似てレンは言った。

 レイの視界はだんだんと滲んできてよく見えなくなっていく。


 しょうがないなぁ、と苦笑しながらレンはレイの涙を手で拭ってやる。


「ねぇ、レイ。私、楽しかったよ」

「やめろ……やめてくれ」

「ううん、レイと一緒にいて楽しかった、嬉しかった」

「何言ってるんだよ、それだともうお別れみたいじゃないか……」

「うふふ……ありがとう」

「どこにも行かないでよ……レン、僕は……」


 その先を続けようとして出来なかった。

 レンがレイの唇をふさいだからだ。

 甘く蕩けるような感触。

 驚き、離れようとしたが、どこにそんな力があるのかと疑問に思うほど、レンは強く密着し、離れようとはしない。


「……!!」


 さらに深く。

 互いを確かめ合う。

 きっともうこれで終わりだろうけど。

 なんて皮肉も少しは思ったけれど。


 それ以上に大切にしたい、とそう思った。


 レンが離れ、銀色が糸を引いた。


「その先は言わせないから」

「だけど……」

「嫌ならもう一回やるよ?」


 堪らず、顔を逸らす。

 ずっとそうだった。いつまでもレイはレンにからかわれ、引っ張られていた。


 出逢ったその時から。全く変わらず。


 けど、やっぱり、違うところもあって。

 弟感覚だったレンの心はもう立派な男としてレイを見るようになった。

 事実、もう一回、と言いながら顔を朱に染めている。


「……あの日の夕焼け、覚えてる?」

「うん、覚えてるよ」


 レイは必死に心を殺し、レンに投げかけた。レンもそれをわかっているのかあえて変な話題転換に触れなかった。


「今日のと……どっちが綺麗かな」


 嗚咽を漏らしながらレイは問うた。

 そんな感傷に浸っている合間にもレンの身体は刻一刻と限界を迎えているというのに、身体と頭が駄々を捏ねたかのように、止まらない。


「どっちも綺麗だよ。レイと見れればいつでもね」

「レン……やっぱり言わせてくれ」

「だ〜め」


 今度はキスではなかったが、レイの唇に人差し指を当ててきた。

 どうしても言わせてくれないらしい。いじめだろうか。


「レイ。一緒にいてくれてありがとう。向こうで待ってるね」


 レンは一歩下がる。

 そして小さく手を振った。

 最後の微笑みはレイが苦しまないようにするためだろう。最後までレイのことしか考えていないレンらしい行為だった。


「レン!!僕も!!僕も嬉しかった!!」


 レンは悪戯っ子の笑みを浮かべ最後に思い切り掛けてきた。突然のことに驚いたが、すっかり成長したレイは苦労することなくしっかりと受け止めた。


 互いに抱きつきあう。


「私はレイのことが好きだよ」


 レンは耳元で囁いた。

 同時に示し合わせたかのように光の粒子がその量を増し、レンの身体を蝕んで行った。


 存在を確かめるように強く抱き締めていたのに、いつの間にかその感覚はなくなっていた。


 いつの間にか目を瞑っていたレイはゆっくりと目を開く。

 そこにありえない可能性を求めるが、やはりありえないものはどこまで行ってもありえなかった。

 落胆はしなかった。ただ事実を認めたくなかった。


「自分だけ言うなんて酷いじゃないか……レン」


 でも、少しレンらしい気がした。

 そして、レイは一人になった。


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