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キミへ世界最期の告白を!  作者: 戦告
第1章「レイとレン」
24/32

第24話

「ねぇ、お父さん。身長を伸ばすにはどうしたらいいのかな」


 レンと賭け事の勝負を決めてからすぐの金曜日。レイは教会に神父と話に来ていた。

 神父の呆れた目線が少しばかり突き刺さってきて痛いが、引くにひけなかったこともわかって欲しい。


「はぁ。全く持って短絡的だ。キミは自分の体質をもっと分かった方がいいぞ。あと十六歳の平均的な身長は百七十センチを超えればクリア出来る」

「あの時はああするしかなかったんだよ。でも決まった以上は意地でも伸ばさないと」

「ああするしかなかった経緯は私に教えてくれないのか?」


 う……。

 経緯は話して大丈夫なのだろうか。一緒にお風呂に入ったとか、馬乗りに乗られた、とかいっても大丈夫なのだろうか。


「うーん、無理かな」

「そうか。深くは訊かないでおこう」


 勇気が出なかった。

 もし、事実を言ってレンがあそこに住めなくなってしまったら嫌だから、というのが一番の理由だった。


「助かるよ。……それで?どうしたらお父さんみたいに背が高くなれるの?」

「レイの体質を抜きで普通の子供として助言するならば、牛乳を飲んで元気に遊びなさい、ぐらいしか私には言えないな」

「充分だよ。牛乳?牛乳ってあの白い液体だよね」

「あぁ、二日で一本を消費するぐらい飲めば伸びるだろう」

「体質を考えると?」

「まぁ、伸びないだろうなぁ」


 やっぱり、と呟く。

 これまでの経験と何より神父がそういうのだから間違いはないだろう。

 気持ちが少し沈む。

 身長が伸びるというのは小さい頃からの憧れで半ば諦めていた事だったのだが、やはりこれは諦めなければならないものだったのかと。


 そんなとき、神父はボソリと呟いた。


「手はあるが、な」

「手はある?今、手はあるって言った?!何何??教えて!」


 レイはたまらず食い付いた。

 ただ神父の煮え切らない表情を見て、何か引っかかるものがあると直感した。

 そしてそれは当たっていたらしく。


「推測の域を超えないが、試してみる価値はあると思う」

「勿体ぶらないで教えてってば」

「うむ。……普通の人として生活するんだ」

「……うん?」


 言ってる意味がわからない。

 言ってる意味はわかるんだけど脈絡が無さすぎてどう結びつけるのかがわからない。


「私達は意図せずとして神様による“おせっかい”を行使している」

「無意識に使ってるってこと?」

「そうだ。私は神父として安全を祈願するために少しばかり使っている。レイ、キミもそうではないのか?もしくは頼る時がなかったか?」

「ここに来てからはまだ自分で使ったとは思ってないよ。……頼ろうとしたことはあったけど」

「それだ。それをやめてみたまえ。一人の何もない少年として過ごすんだ。そうすればキミの“おせっかい”は多少なりとも抑えられるかもしれない」

「どうしてそんな事が分かるの?お父さんが実験でもしたの?」


 神父は雄弁に語っていた舌を止めた。

 そして意を決したように再び口を開いた。


「私は“大切な人の一部分の未来を見ること”ができる。そこで私はレイが今の姿ではなく、少し大きくなった姿で映っていた」

「未来で僕は大きくなってたんだね!」

「私の考えることをそのままこれからレイがしていくのか、それとも別の何かいい方法を見つけるのかはわからないが……」

「身長は……伸びる」


 そうだ、と神父は肯定した。

 ただ、大切な人、というのは神父の意思ではどこまでがそうであるのかが分からず、ただの希望的観測の夢の可能性もある、とも付け加えた。


「身長が伸びるとどうなるんだ?」

「賭けに勝つからレンに何か一つ、何でも頼み事ができるようになるんだよ」

「キミは勝てば何を頼む気なのかい?」


 神父は少し推し量るような声色でレイに訊ねた。


「ん〜そう言われると具体的なことは何も決まってないんだけど……たぶん、ずっと一緒に居ること、とかそんなことを頼むんじゃないかな」

「そうか」


 レイの中で決まっていることはレンともう離れるマネはしないということだ。

 助けて貰った恩は返すし、一緒にいる方が楽しいから。

 神父はほっとしたように息を吐いた。

 何をそんなに緊張していたのかは不思議に思ったが訊ねても答えてくれなさそうな気がしたので、やめておいた。


「レイが身長を伸ばし始めたとしたら……始まりだな……」

「ん?お父さん、何か言った?」

「いやいや、何でもないよ。ただ伸びればいいな、と思っただけさ」


 神父はあることをとても危険視していた。

 それはなかなかに起こりえないことではあるのだが、しかし起こってしまう可能性はゼロではないため、用心している事だ。

 今のレイには“おせっかい”が強く纏わりついている。その理由としてはレイがそれを望むからにほかならない。


 望めば望むほど深くお互いは接着し、強く強固に結ばれる。


 だが、逆もまた然りで、自立を果たしていくほど互いの執着は薄くなり消えかけるも同然になる。


 本人はそれでも良いのだが、大変なのはその周りの人間だ。


 物質と考えてもらうとわかりやすいだろう。


 レイにくっついていたものが離れていくが、その実態は消滅した訳ではなく、空気中に漂っている。すると、神父やレンに吸われていく。


 結果は言わずもがなであろう。


 この最悪の結果、もたらされるものは……。


「神様の到来と世界の終焉、か」


 神父のボソリと呟いたこの一言にレイは強く興味をひかれた。

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