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キミへ世界最期の告白を!  作者: 戦告
第1章「レイとレン」
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第12話

 一通り家の中を散策し、どこに何があるか、どんなものを置くかなどをひとしきり見回り終えた時には気付けば辺りが真っ暗になり、雨も降っていた。


 暖炉を使い、熱は確保したため、家の中はすこぶる快適的ではあるのだが神父は教会に他の孤児達を残しているため出来れば帰りたいと、少年達に告白した。だが、残念ながらここから教会まではどう頑張っても雨の中徒歩では厳しいと言わざる負えない。

 かといって、少年達が車などという便利で高価なものを持っているはずもなく。


 神父はそうそうに諦めて今日一日はここにお世話になることにした。

 その内に、少年と少女に何か間違いが起こらないかを監視するということも若干含んでいた。


「すっごい雨ね。びっくりだわ」

「気付いたら降ってたからね、尚更だよ」


 少年と少女は互いに雨についての感想を言い合った。二人は仲良く暖炉の前で手を突き出し、暖まっていた。


 神父は一人、椅子に腰かけ窓の外を見て一言。


「『レイン』」


 と呟いた。

 勿論、ただ雨という単語を英語で言い直しただけである。


 だが、少年はもとより少女さえも自分達が今話している言語と違う言葉は理解できないらしい。


「れいん?何それ」

「ん?あぁ、これは雨を指す別の言い方だ。私もつい最近、教えて貰ってね」

「雨っていうよりレインって言った方がカッコイイわ。どうして雨っていうのかしら」


 少年は神父を見る。

 答えを教えて欲しいとでも言うように。しかし、神父は答えない。

 そこで少年は自分で思っていたある一つの考えを口にした。


「どっちもあったけど、雨の方が二文字で短いからじゃないかな?」

「ふーん、なるほどね」


 最近、神父から文字の読み書きを習い始めた少年は字数の短さに気づいたのだ。少女は気付いていなかったらしく、ふむふむ、と納得気に頷いていた。

 そして、やがて。


「そうだわ。私達の名前にしましょう?この『レイン』を」


 と、そんなことを言い出した。

 あの名前をつけられることが嫌いな少女から名前にしよう、なんて言葉が出てくるなど露にも思っていなかった神父は目を丸くさせ、唖然としていた。


「名前?うーん……具体的にはどうするのさ」

「そうね……二人で分け合うのはどうかしら」

「二人で、分け合う?」


 少年もこれには堪らず首を傾げた。

 それもそのはず、唐突に「レイン」から名前を決めましょう、と言われ、そうこうしているうちに「レイン」を二人で分け合おう、と言われたのだ。

 全く持って訳が分からなかった。

 神父に助けの視線を送るが、神父も理解が及んでいないらしく視線で「無理!」と突き放されてしまった。


「ちょっと!!ちょっと待って!整理させて欲しい」

「えぇ。構わないわ」


 仕方ないわね、とばかりに少女が承諾する。


「僕達はこれから名前を決めるんだよね?」

「えぇ、そうよ」

「『レイン』から?」

「えぇ、そうよ」

「それを分け合うの?」

「えぇ、全く持ってその通りよ」

「どうやって?」

「こう、ひきちぎって」


 少女は空中に、『レイン』があると手で作ってからその空気の塊を両手で引きちぎった。もう、爽快に。何の遠慮もなく。

 一体どこにカッコイイへの敬いがあったのかと疑うぐらいに躊躇なく引きちぎった。


「つまり、「レ」と「イン」のように二つに分けてそのどちらかをキミ達の名前にしようということかい?」

「さすが神父様!!つまりはそういうことよ?いい?」

「う、うん」


 この「いい?」は「大丈夫?」じゃなくて「分かった?」だったので少年はこくこく頷いた。特に反対する理由もなかったが。


「うーん……どこで分けるのがいいのかしら。「レ」「イン」……「レイ」……「ン」……」

「三文字を分けるなんて難し過ぎるよ」

「別のものを探すわけには行かないのかい?一人は『レイン』からとって」

「嫌。私は二人で分けるって決めてるの」


 少女の思いは固いらしく少年や神父が別の案を出しても呑もうとはしなかった。二人で分け合うということについて、少女は何か執着しているような気がした。


「『レイン』ねぇ……」


 神父も一応は考えてくれているようで、首を捻って悩んでいる。

 三者三様で悩んでいると。

 妙案というか珍案を少年は思いついた。


「引きちぎるってさ、二文字にもなるって事だよね?」

「ん?あー。そ、そうね……?」


 少女が分かっていないことを察した少年はもう少し言葉を加えてもう一度説明する。

 勿論、少女がやったようなジェスチャーを付けて。


「こう引きちぎったら、右の方にも、左の方にも『レ』とか『ン』とかがあるじゃんか」

「引きちぎり方にも問題はありそうだけれど。まぁ、言いたい事は分かるわ」

「……どう、かな?」


 少年が恐る恐る訊ねる。

 すると、少女が答える前に、遅れて理解した神父が「あー」と納得声を出した。


「賢いな。それで、二回使うとすれば……『レ』だな」

「そうね」


 少年も頷いて同意を示す。

 あとは組み立てるだけだ。それは少女だけでなくとも少年でも、神父でもできる事だ。

 だが、できた名前をどちらがどちらを名乗るかはまた、一悶着ありそうだ。


「できる名前は……『レン』と『レイ』だな」

「いい名前だわ。『レイ』と『レン』だなんて、まるで姉弟みたいね」

「確かに、兄妹みたいだね」

「会話は出来ているがどこか違う気がする……」


 名前の一悶着よりもこちらの方が深刻そうだった。

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