戦争終結、そして明日へ向けて
◆プーリ侯爵領 平原 プーリ侯爵軍本陣
プーリ侯爵軍本陣で総大将たるフィナロムス・フリンやカリウス・プーリを初めとする貴族達は、伝令からの報告に声を失っていた。戦況が悪いのではない。寧ろ逆、戦況はプーリ侯爵軍の圧倒的有利である。だが、戦果の内容が驚愕するものだった。
曰く、精鋭部隊“鷹”を一人で全滅させた。曰く、精鋭部隊“竜”を拳一つで壊滅。将軍ドラヌスを捕虜として捕縛した。曰く、精鋭部隊“狐”が本陣に侵入した際に反撃し、全滅させた。曰く、化け物のごとき十人ほどの集団が公国軍を襲撃。全滅させ、兵士をアンデッドに変えた。これらの全てが、カゲマサ一派の仕業という。カリウスは、頭を抑えながら伝令に話しかける。
「それは、本当なのか?只の見間違いでは」
「・・・いえ、事実でございます。・・・正直言いますと、私も一度疑いましたが事実です」
その言葉にフィナロムスは、目眩を起こしかけた。
(な、何てことっ...!そこまでの実力を備えているの!?しかも、一派の首魁であるカゲマサは何もしていないのにっ...!!)
そしてフィナロムスは、カゲマサ一派への認識を改める。不気味な集団から、化け物集団へと。一方、カリウスの娘であるカナベール・プーリは、カゲマサの活躍に胸を躍らせていた。
(ふふ、流石カゲマサ様方ですね)
カナベールの頭の中は、カゲマサ一派への称賛で一杯だった。
「ふ~っ、まあいい。では此度の戦争、我々の勝利は確定か?」
「はっ。敵軍の大将は、カゲマサ一派を恐れたのか戦場から逃走。他の兵士達も撤退を開始した模様。初戦は、我々の勝利でしょう」
勝利。その言葉に貴族達は、ホッと一息を着いた。そして、カリウスが立ち上がり宣言する。
「公国軍は撤退した!!だが、我々の戦いは終わっていない!!明日、公国首都ツンドルンに進軍する!!我等が、この国の救い手となるのだ!!」
「「「「「オオッ!!」」」」」
カリウスの宣言の終わりと同時に貴族達が掛け声を挙げる。
その端では、カゲマサ一派との想定外の戦力差に苦悩するフィナロムスと、カゲマサ一派に面会しようかと悩むカナベールがいたが、興奮した一同は無視した。
プーリ侯爵軍本陣が勝利に沸いている頃、カゲマサ一派は本陣から離れた森に隣接している所にいた。そこでは、カゲマサこと俺が部下達と話していた。
「さて、今回の戦争は此方の勝利だろうね。まずは、お疲れ様」
俺は、部下達を労うと今後の展開について語った。
「恐らくプーリ侯爵軍は、明日辺りに進軍を開始するだろう。契約もあるし、俺達も戦争に駆り出されるだろうな」
「そうか!!強い奴いるか!?いるよな!!」
「はい、ギオうるさい。まあ、標的は首都ツンドルンだろうから強い奴はいる筈だ。皆油断しないようにな」
ギオ以外の部下は、その言葉に首を縦に振る。
「よし、明日の展開については以上だ。そして最後に一言言いたい」
俺は、そう言うと同時に上級死霊魔人へ目を向ける。
「む、主、何?」
「うん、ちょっと聞きたいんだ。何でこんなに連れてきたんだい?」
俺は、上級死霊魔人の後ろにいるアンデッドの大群を見て、若干怒り気味に聞いた。全て下級アンデッドのゾンビやスケルトンである。だが、ちらほらグールやスケルトンウォーリアーといった進化種もいる。今は、森に隠れているが合計一万程いるらしい。
「・・・主、喜ぶ、思った」
死霊魔人は、俯きながら答える。
「・・・確かに戦力的には嬉しいよ。だが、目立ち過ぎるんだよ。多すぎて」
そこまで言って俺は、アンデッドの大群を隠す打ってつけの場所を思い付いた。
「あ、山城に連れていけば良いんだ」
決まったならばならば即実行と言わんばかりに俺は、転移魔法【ゲート】を使いアンデッド達を送り込む。そして、山城の警備をするよう死霊魔人経由で命じ、山城を後にした。
「さあ、明日から更に忙しくなるぞ。皆今のうちに休んでおくんだ」
その俺の言葉で、場は解散となった。
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