夜会の始まり③
「・・2位って。・・・2位って!?」
怒鳴り声を上げた後、しばらく放心していた俺は意識を取り直した後の第一声がこれだった。俺が、慌てふためいていると、モニターに再び邪神が映し出された。
『ふふふ、新人諸君!新人ランキングは見てくれたかな?いや~、今回の新人は皆優秀だね!ねぇロワン。君の派閥から三人もランクインしてるじゃないか!』
「はっ。中々才能があったので、我自ら鍛え上げました」
「なるほどなるほど、じゃあ次はリザンの派閥だね。リザンもおめでとう!」
「ホッホッホ、ありがとうございますじゃ」
「最後にナナの派閥か。おめでとうさん!いや〜、僕も鼻が高いよ〜」
「ありがとうございますお父様。ただしこれは、全てカゲマサの功績です」
ナナさん、俺のDPの三分の一は貴女のDPなんだが?この成績には、少なくとも貴女も関わっているのだが?
「よし!じゃあ、ランクインしたマスターに話を聞こうか。まずは、アルカとユラ、パンドラッチ!前に出なさい」
「はい」
「・・・はっ」
「は、はい!」
呼ばれた三人は、邪神の映るモニターに跪く。アルカは鮮やかな紫色の髪と目をしており、ポニーテールで肉付きもいい美女だ。ユラは、先程俺を睨んできたサキュバス?だった。ピンク色の髪と目、右目が髪で隠れている。体つきはアルカより良いが、気品さはアルカが上だった。最後のパンドラッチは、オドオドとした気弱な少女だった。黒髪に黒縁メガネをかけた文学系少女である。
「アルカちゃん、よく頑張ったね。97万DPもよく集めたものだ。おめでとう!」
「ありがとうございます。これからも精進いたします」
「向上心があってよろしい!次にユラちゃん、君もよく頑張った。3位には届かなかったけど、57万DP!十分な結果だよ。おめでとう!」
「・・・ありがたき幸せ」
「うんうん!最後にパンドラッチちゃん、君もよく頑張った!42万DP!大健闘さ!」
「は、はいィィ!」
アルカは嬉しそうに。ユラは悔しそうに、パンドラッチはアワアワしながら邪神に頭を下げて邪神の言葉を聞いていた。
「良し次リューゼ君!君もよく頑張ったね。85万DPとは!おめでとう!」
「ははっ!これからもガンガン集めてやるぜ父上!!」
「コホン。リューゼ」
「あ、・・・集めて見せますぜ!!」
リューゼ。リザンの派閥の一員で、赤い鱗に覆われたリザードマンである。上半身裸。下は前掛けを履いているだけだった。敬語が苦手らしい。
「申し訳ありませぬ。あとで良く言い聞かせますじゃ」
「ハッハッハ、いいじゃないの!そっちの方が親子らしいじゃん!」
リザンは謝り、邪神は笑いながら許した。そして、こっちに振り向く。
「さて、最後にカゲマサ君。96万DP!素晴らしい!新人1位に迫る勢いだよ!!」
「・・・ええ、まあ」
「あれ、どうしたの?嬉しくなさそうだけど」
「あ、いや。俺はただ自分の身を守るためだけに活動していたので、誉められるには値しないかと思った次第で」
実際、ゲローロとナナさんからかなりいただいたからな。まあ、いくつかはダンジョン強化、ダンジョン内の宝箱リニューアルに使わせてもらったが。だからこそ、全部自分の功績とはとても思えない。
「ふぅ~ん、でもその行動でここまでの順位に上り詰めたのは素晴らしいことじゃないのかい?」
「父さ・・父上」
「父さんでいいよ?むしろ呼びなさい」
「・・・では、父さん。俺は、順位には興味は無いのですよ。俺は、命あるかぎり生き残り良い生活を送りたいのだ。こんなランキングなど俺にとっては、あまり魅力を感じない。」
「フムフム、なるほどね。生き残りたい、良い生活がしたい。どっかの聖人気取りからは、汚いだの悪だのと言われるかもしれないけど生物なら当たり前のことだね」
邪神は、納得したように頷く。だが、ニヤッと笑ったあと俺の思惑を当てるように告げた。
「でもさぁ、だからってカゲマサ君の順位は下げないぜ?絶対に変わらせないぞ?クックック」
「・・チッ、融通きかねぇな」
「今舌打ちしなかった?」
「いいえ、していませんよ?」
邪神は、深く追及する気は無いのか質問を止めた。
その後、邪神にそれぞれが持ってきた土産を渡し、自由時間になる。因みに、土産のチョコケーキは大変高評だった。他のダンジョンマスター達は、友人とお喋りしたり中には、でかい肉を丸呑みにしている奴もいる。
「貴方、お父様相手によくあんなことを言えるわね」
「おや、ナナさんじゃないですか。まぁはい」
綺麗な銀髪に赤い目をした幼女、俺より遥かに格上のダンジョンマスターのナナ・セブンスさんが話しかけてくる。俺は、形式上ナナさん派閥らしいから当然といえば当然だが。
「ナナさん、派閥のマスターには話しかけたのですか?」
「ええ、皆優秀な新人が入って嬉しそうだったわよ。自分達の派閥が大きくなるからね。あいも変わらず優秀なのは、耄碌頑固爺に集まるけど」
耄碌頑固爺ってロワンのことだよな?喧嘩しないでくれよ?余裕で死ねる。しかし派閥ねぇ、正直興味無いけどな。
「少し失礼してもよろしいでしょうか?ナナ様」
突然そう言われて、声のした方に振り向くと、そこにはロワン派閥にいた女性が立っていた。あれ?コイツって。
「ごきげんよう、カゲマサ君。先程紹介されたが改めて・・・私の名はアルカ。少し話がしたいのだが良いかな?」
新人ランキング1位のダンジョンマスター、アルカが微笑を浮かべながらこちらにやって来たのであった。。
次回は、夜会の始まり④の予定です。
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