第二次配下育成計画と一ヶ月
少し滅茶苦茶です。
主な配下の強さを確認した上で俺は、幹部達にある考えを告げた。
「お前達、俺はここに人間を呼び込むつもりなんだがどうだ?」
「人間ですか?」
「ああ、以前から思ってたんだがモンスターを狩ったり、宝を納めるにしてもいずれ限界を迎えるかもしれん。だから定期的に人間を領域内に呼び込むことで安定的にDPを獲得する体制を作り上げておきたいんだ」
「なるほど、ですが人間を我々のダンジョンに入れるのですか」
「抵抗があるのは分かる。だが、DPが入ることは俺達の命を守ることにつながるのだ。そこは理解してくれ」
話を聞いていたシロは了承し、他の幹部も賛成してくれた。これで人間を呼び込むことになったのだが、一つ気になる点があった。
「なあ、何でカレンが当たり前のようにここにいるんだ?」
そう、オークから下級魔人に変異したカレンが、コアルームにいるのだ。《鑑定》するか。そっちが早い。
名前 カレン
種族 下級魔人
職業 魔導師 幹部
レベル 29
ランク C
スキル 水魔法 風魔法 光魔法 魔力障壁 成長加速微小
何か色々変わってんなおい。いつから幹部に昇格したんだ?俺がいないときか。
「あ、幹部に昇格したんだ。おめでとう」
「ありがとうございます、マスター」
「でもいいのかな?このダンジョンの一員で」
「構いません。我等オークを匿っていただいた上に、我等の脅威であったアンデッドから守ってくださいました。そのご恩は決して忘れません」
う~ん、まあいいか。DP増えるし戦力も増えるしな。そうと考えよう。
「さて、では始めよう。配下育成計画開始だ」
俺は配下たちに号令をかけた。
◆第二次配下育成計画開始から三日後
ダンジョンの前に三人の人間がいた。その三人は、手慣れた様子でダンジョン入り口を覗いていた。
「ここがギルドの言ってたダンジョンの可能性がある洞窟か」
「だね。ただし、最近確認されたから生まれたてのダンジョンかも」
「・・・さっさとやろう」
その人間達は、ファースの街ではそこそこ有名な冒険者パーティーだった。構成は剣士、盗賊、魔術師といったものだった。
「よし、行くぞ!ダシュー、ムーク!」
「分かったよ。というかあんたが気を付けなよバッガ?」
「・・・不安しかない」
「どういう事だよそれ!?」
三人はギャアギャア言い合いながら、洞窟もといダンジョンに侵入した。
入ってしばらく経ち、三人はモンスターを発見した。緑色の肌と人間の子供サイズの体長、醜悪な顔をもったモンスター、ゴブリンである。ゴブリンは三人を見るなり襲いかかってきた。
「フン!」
そこで剣士のバッガが一太刀で切り裂いた。ゴブリンは、あっけなく半分にされ絶命した。
「しかし、ゴブリンか。ここまで歩いてきたけど、罠は無いしモンスターもさっきのゴブリンだけ、やっぱり生まれたてなのかな?」
「・・・恐らく」
「じゃあもうちょっと探索して引き上げるか?」
「そうしようか。僕達の仕事はあくまで調査だからね」
「・・・」
「んあ?どうしたムーク?」
「・・・あれ」
ムークが指差した先には一つの大部屋、そして宝箱。その前に五匹のゴブリンがいた。
「宝箱か。取ってく?」
「やるでしょう、普通」
「・・・同意」
三人は大部屋の中に踏み込むと、複数のゴブリンはこん棒を持って三人に襲いかかった。三人は油断なく戦闘を始める。最初に襲いかかってきた二匹のゴブリンをバッガが剣で応戦、残り三匹はダシューとムークの方に走った。
「汚い息すんじゃねぇ!」
バッガは、自慢の剣技で二匹のゴブリンを始末する。ダシューはというと、ヒラリと避けながらゴブリンに接近する。
「僕も戦えないわけはないからね」
そう言いながら、短剣でゴブリンの喉を切り裂いた。
「・・・【フレイムアロー】」
ムークは、火魔法でゴブリンを焼いていた。
やがてゴブリンを始末した三人は、宝箱に集まる。
「何が入ってるかな?」
「剣だったらいいな!」
「・・・魔道書」
「あはは、二人とも、ここが生まれたてのダンジョンってこと忘れないでよ?」
「それでも祈っちゃうんだよ!祈るぐらいなら自由だろ!?」
バッガとムークは期待を込めて、ダシューは諦めを込めて宝箱を開ける。
「あ、剣だ!」
「こっちは魔力ポーション?」
「・・・普通のポーションもある」
入っていたのは、一振りの剣とポーション、魔力ポーションだった。
「おい!この剣よぉ!鉄で出来てるけど、恐ろしく頑丈だぜ!?」
「魔力ポーションも普通のポーションも質がいいな」
「・・・いい儲け」
三人は、この結果に満足しダンジョンから街に帰還した。
その後、多少の危険を承知で良質な武具やポーションを求め冒険者が押し寄せることになる。辺境では、こういったダンジョンは貴重な鉱山のような存在である。良質な武具やポーションを生み出してくれるから当然だろう。
ダンジョンが発生したことを聞いたマジーメ・ドミニクは、ダンジョンにギルド支部を建ててダンジョンの入り口を管理することにした。また、死霊公を倒した英雄カゲマサがダンジョンに興味を示しダンジョンの近くに仮の拠点建て、実際に良質な武具を獲得したことで更にダンジョンに行く冒険者は増加しダンジョンの前に村が出来始めた。それに平行して、魔の森の開拓も進みダンジョンへの交通の便も格段に上がった。
カゲマサは、日に日に増えるDPを眺めてDPの収入源を確保したことを確信する。というか、あの三人の宝箱に入っていたものを決めたのもカゲマサである。彼等は、カゲマサのダンジョンの広告塔になったのだ。自身も少し宣伝をしたが。ダンジョンからいい品が出れば、冒険者は我先に取りに来る。人間は欲深いしな。
あと、配下のレベルアップにも貢献している。たまに調子にのって、獣系モンスターが密集している第3階層に入ったバカがいたのだが、獣系モンスター達がたちまち取り囲み圧勝していた。日頃の訓練が活きてるね。
そして俺は、あるときはダンジョンに潜り、あるときはダンジョンのギミックの調整をしたり、ギルド支部の建設を見学したり、魔石屋で買った魔石をダンジョンに納めモンスターを召還・訓練させたりとしている間に配下はレベルアップ、DPはザクザク増えていった。だが俺は、油断無く事を見据え慎重にバランスを取りながらダンジョンを経営した。
そして、ダンジョン経営改革を行ってから一ヶ月経過したころだった。
次回は、いよいよ他のダンジョンマスターとの交流の予定です。
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