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拠点制圧とドシア王国貿易船


◆南方諸島中央部北の海域 元無人島 カゲマサside



 ステッコ兄弟から情報を抜き取った俺は、ステッコ兄弟を黒岩島にある牢屋区画に送った後に、中央部にある“冥府教”の拠点を虱潰しに襲撃した。


「こんにちは。捕まってください」

「な、何だ貴様!我等を誰だと」

「【スリープ】からの【ゲート】」

「んなっ!?···グゥ」


 とある小国で、商会として入り込んでいた輩を【スリープ】で眠らせ【ゲート】で強制転送したり。


「こんばんは。“冥府教”の方ですね?情報欲しいんで、捕まってく頂きたく」

「っ!?侵入し」

「オラっ!···良し、【ゲート】」


「枢機卿閣下!ご無事」

「【ハイパーバインド】」

「っ!何だこれは!?」

「【ゲート】」

「う、うわぁ!?」


 中堅国家にて、貴族の当主に成り代わり領地を“冥府教”の拠点としていた一派は、深夜に侵入して先ず当主に成り代わっていた枢機卿の頭を蹴り昏倒させ、連れ去った。

 領地内に潜伏していた“冥府教”の構成員は、枢機卿の名を勝手に拝借しておびき出して捕らえていった。枢機卿の身が危ないと囁いたら、面白いぐらい簡単に引っかかったので笑ってしまう。


「おはよう御座います。長い潜伏活動お疲れさまでした。情報を頂きますのでお休みしてくださってよろしいですよ」

「な、何じゃお主は!儂を誂うのも」

「【スリープ】、おやすみなさい。【ゲート】」


 大国家の辺境にある村で村長をしていた“冥府教”構成員である老人を眠らせて、ゆっくりと転送してあげた。

 勿論“冥府教”も転送されるがままではない。俺が現れた瞬間反撃してくる輩もいる。


「こんにち」

「っ!死ね!盟主様の敵!」

「ふん」

「あがっ!?」


 大国家に近い中堅国家にて、騎士として潜入していた“冥府教”の構成員は、俺が路地裏で声を掛けた瞬間焦ったように剣を抜き斬り掛かってきた。対して俺は、落ち着いて躱しながら剣を持っている右手の手首を掴む。そして、騎士の右手首を握り潰し剣を落とさせた。


「暴れないことをオススメする」

「き、貴様」

「なぁに、少し情報を頂くだけだ。殺しはしないさ」

「おのれ!」


 構成員の騎士は、諦めずに回し蹴りを放つ。だが、人外の肉体になっている俺からしたら、蚊に刺された痛みを感じない程度の威力で、防御もせずに受けることが出来た。


「なっ!?」

「オラァ!」

「ごひゅっ!?」


 騎士は、回し蹴りが効かなかったことに驚いていた。その隙に俺は、フリーの左腕を構えて騎士の顔面を打ち抜く。殴られた騎士は、鼻がひしゃげて鼻血を垂れ流しながら気絶してしまった。


「よし、【ゲート】」


 俺は、騎士を担いでさっさとその場から去った。

 このように様々な場所で、サクサクと“冥府教”の構成員を捕らえていった。ある者は農民の少年、ある者は妊婦、ある者は奴隷に扮してまで潜入している輩も存在したが、問答無用で捕らえていった。






 “冥府教”構成員を捕らえ始めて一週間が経過。捕らえた構成員の総数は、凡そ千人程。片っ端から捕らえていったので、末端も多く含まれるが司祭や司教、枢機卿なども捕らえたので、情報収集には事欠かない。


「じゃあ、答えてもらおうか。“冥府教”の情報を」

「巫山戯るのも大概にしろ!私が話すとでも思うのか!」

「《真実》。中央部に“冥府教”の拠点は、他に存在するのか?」

「誰が答えるか!··もう、一箇所しかない。場所は、中央部最大の国家であるドシア王国。··あ」 

「はい、ありがとうね」


 俺は、元無人島のサブダンジョン内にて情報を吐き項垂れた構成員を見ながら情報を纏めていく。


 まず俺が“冥府教”の拠点を潰しまわった結果、中央部にて残っている拠点が一個しかないこと。そして、残り一個の拠点がドシア王国にあること。

 次にドシア王国についてだが、中央部最大の国家ということもあり、かなりの国力があるようで三十以上の島を支配下に置き、兵力として常備軍二万と予備役一万五千がいる。ランクCもそれなりに所属しており、ダンジョンも有していることから兵士の練度もそこそこ高い。


「オマケに東部との貿易の玄関口でもあり、貿易や通行料で膨大な利益を得ている、か」


 これがドシア王国が中央部最大の国家であれる所以で、東部にある国々と武器取引や魔道具取引などの貿易を行い、中央部の国々へ商品を闇ルートで流してボロ儲けしているようだ。また商品を奪われないように軍の一部を警護に付けているらしい。


「へ〜、ふ〜ん。戦争を助長させる行為という訳かぁ〜。だったら、潰さなきゃなぁ」


 俺は、悪どい笑みを浮かべながらサブダンジョンを後にした。

















 ドシア王国東側の海域に三隻の船が海を進んでいた。掲げられている旗には、一本の剣に二匹の黒い蛇が巻き付いている絵が描かれている。これは、ドシア王国の国旗だ。

 そんな三隻の船のうち、真ん中の船に二人の男が乗っていた。


「今日の取引も上手く行ったな」

「ああ、性能の良い武器に希少な魔道具。これだけあれば、我が国のさらなる戦力拡大も夢ではない」

「要らなくなった古い武器や魔道具は、闇ルートで争っている小国共に売り払い利益を得る。流す際には、いくつもの人間を経由して流しているから、足はつかない」

「ふん、小国は馬鹿な奴等よ。国王陛下の手の平で踊っている事など、夢にも思うまい」

「全くだ。全ては、中央の統一という陛下の崇高な願いのためなのだから」

「小国共には、精々疲労してもらおう。疲労しきった時が奴らの最後だ」


 二人は、ドシア王国の財務局に勤めている役人である。口から出てくる言葉には、嘲りが含まれており明らかに小国を見下していることが伺えた。

 そんな小国を見下し嘲笑う二人は、これから祖国に齎される利益と輝かしい未来を見据えて気分が高揚しているのを感じる。二人は、ニタニタと笑いながら港につく時を待った。




「こんにちは。これがドシア王国の貿易船ですか?」

「「っ!?」」


 突如後ろから響いた声に二人は、慌てて背後に振り向く。そこには、茶色の仮面に茶色の外套という姿をした人間が佇んでいた。


「な、何者だ!」

「侵入者だ!警備兵、さっさと来い!侵入者がいるぞ!」


 二人は、突然現れた存在を侵入者と断定し叫ぶ。だが、いつまで経っても警備兵は現れなかった。それどころか、いるであろう船員も現れない。


「ええい、他の奴等は何をしている!」

「何故誰も来ない!?役立たず共め!」


 二人は、諦めて周りに配置されている二隻の船、ドシア王国海軍の軍艦に助けを求めようとして、言葉を失った。


「ば···馬鹿な」

「···何故だ!?」


 一隻もいなかったのだ。彼等の貿易船を守るように展開していた二隻の軍艦が、まるで最初からいなかったように。


「不安だよね、そうだよね。自分達を守るはずの軍艦がいないんだもんね。うんうん、わかるよ」

「···貴様は何者だ!いや、何処の国の所属か!」

「我等の貿易を邪魔した罪、国を滅ぼすだけでは清算出来ぬぞ!この薄汚い奴め!」


 茶色仮面の言葉に二人は、口々と茶色仮面を罵倒する。そこには、未だに自分達の優位性を疑っていないことご散見されていた。


「はあ。お前等は、まだ自分達の立場が分かっていないようだな」

「なんだと、この罪人めが!」

「何処の小国から来たかは知らんが、次は貴様の祖国を滅ぼしてやる!覚えておけ!」

「···救いがたいな」

 

 茶色仮面は、ため息を吐いた後に空を指差す。財務局の二人は、何事かと空を見上げ、驚愕に顔を歪ませた。


「え···?」

「あ、ああ···っ!そんな、そんな!」


 空から何かが降ってくる。最初は小さな木片、次に水滴、大きな木片、数々の武器、魔道具の数々。


 そして、自分達にとって希望の星だった軍艦二隻のボロボロになった無惨な姿だった。


「【ゲート】」


 茶色仮面がそう呟くと、二隻の軍艦が黒い空間へと飲み込まれ、その場から完璧に消え去った。


「ねぇ、お二人さん。今度は、自分達の立場は分かるよね?」

「「····」」


 常識外れの光景を見た二人は、無言で頷くしかなかった。




 二隻の軍艦に守られた貿易船は、この日を境に姿を消す。また、その日以降ドシア王国の貿易船が次々と姿を消し、ドシア王国上層部に困惑と怒号が響き渡ったという。


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