冥府教小拠点
短いです。
◆南方諸島中央部北の海域 とある小国 カゲマサside
俺は、南方方面軍第一連隊に再度情報収集を命じた後、実際に“冥府教”の連中を捕まえるべく、真夜中に拠点としている島から比較的近くにあった小国に潜入していた。随員は、俺と人化している上級兵士二体である。これは、俺一人では駄目だとタマモやクロウ他〈百魔〉が必死に提言してきたからだ。まあ、俺自身手が足りないと考えていたので丁度良かったが。
そんな俺達は、暗い深夜の中、小国の首都郊外にある小さな小屋の前にいた。
「で、奴等がいる場所はここで間違いないな?」
「はっ。クロウ様より渡された地図にある印と合致しております」
「加えて、先程赤ローブに身を包んだ人間が入っていく所を発見いたしました。間違い無いかと」
「よし、踏み込むぞ。速やかに終わらせる」
「「はっ!」」
俺は、部下二人と共に小屋の中へ踏み込む。小屋の中は、最低限の家具しかない普通の内装であったが、床に一部色の違う箇所があるのを発見した。俺がその箇所を素早く調べると、色の違う床が開き、地下へと続く階段が現れたではないか。
「念の為だ。【ヴェノムフロード】を行う。離れてろ」
「「はっ!」」
俺は、部下を下がらせた後地下に向けて【ヴェノムフロード】発動させる。触れるだけで死に至る猛毒の洪水が地下へと流れ込んでいった。そして、僅かながらに聞こえてくる断末魔の叫び。
「踏み込むぞ」
「「了解!」」
俺達は、毒の洪水を意に介さず進んでいく。俺は勿論、部下二人もスキル《毒耐性》等を取得しているので、人間が死ぬ程度の毒は平気だ。
俺達は、ズンズンと地下の中を進んでいく。所々には、【ヴェノムフロード】にやられて絶命した“冥府教”の構成員と思わしき赤ローブ達が毒液に浮かんでおり、ここが“冥府教”の小拠点であることを確信する。
死んでいる人間を軒並み回収しながら地下内を進んでいくと、途中道が二つに分かれていた。
「ふむ、良し。俺は右に行くから、お前等は左に行け。奴らの死体があれば回収し、生きていたら始末して回収だ」
「「はっ!」」
上級兵士二人は、俺に向けて敬礼し左側の道へ入っていく。俺も敬礼した後、右側の道へと入っていった。
右側の道にも、案の定死体がプカプカと浮かんでいた。どれも赤ローブを着た奴等だったが、違いとして前回見た赤ローブよりも明らかに質素なローブを着ていたのだ。ドミニク辺境伯領に出た赤ローブは、どれも上等な布を使っていたのに対して、此方はザラザラの安っぽい布が使われていた。恐らく地位が関係しているのだろう。前に見た赤ローブ共は、明らかに重要な儀式をしてたようだし。ここのは、本当に下っ端しかいないのだろう。
俺は、死体を回収しながらそんなことを考えていると、前方から二つの生命反応を感知する。
「ほお、《毒耐性》を持つ奴がいたか。“冥府教”の人材もそこそこいやがる」
俺がそう呟くと、前方からやってきた二つの生命反応が姿を表す。やって来たのは、高身長で紫髪の青年二人。顔や身長が全く同じだったので、恐らく双子だろう。
「よくもやってくれたな」
「敬虔な信徒達をこんなことにしおって」
「明主様の名の元に、貴様を粛清する。この“冥府教”枢機卿である双子卿アンミロと」
「同じく双子卿のインミロがな!」
アンミロとインミロと名乗った二人は、双剣を抜き払い俺に向かってくる。
名前 アンミロ·ステッコ
種族 人間
職業 冥府教所属枢機卿 双子卿
レベル 35
ランク C
スキル 双剣術 毒耐性 生命共有 魔力共有
名前 インミロ·ステッコ
種族 人間
職業 冥府教所属枢機卿 双子卿
レベル 35
ランク C
スキル 双剣術 毒耐性 生命共有 魔力共有
アンミロインミロのステッコ兄弟は、俺の周りをグルグルと走り回りながら俺への距離を詰めていく。
「ここで貴様は、明主様の名の元に殺す」
「お前は、我々の障害。全てを殺し尽くし、理想の世界を作る為に。ここで死ね」
俺は、ステッコ兄弟の言葉を聞き流しながら、ステッコ兄弟の動きを観察する。そして、パワーもスピードも俺に及びないことを確信して、【ボックス】から雷槍を取り出す。
「ふん」
「ッ!ガッ!?」
俺は、無造作に雷槍振るう。振るわれた雷槍は、アンミロの懐へ入り込み腹を強打、後方へと吹き飛ばされる。オマケに雷槍の効果で全身を雷によってダメージを負っている。
「っ!?兄者!?」
「はい、次はお前ね」
「この!」
インミロは、双剣を俺に振り下ろすが、俺は余裕を持って回避し、インミロを蹴り飛ばす。
「さて···。アンミロとやら、さっさと襲ってきたらどうだ?」
「···なっ!?バレていたのか!?」
俺の後方では、アンミロが立ち上がり俺を双剣で斬りつけようとしていたので、声を掛けて牽制する。アンミロは、バレていると思わなかったのか驚いたような顔で動きを止める。
「バレた?ふん、貴様等には《生命共有》とか言う、スキルがあるだろう。つまり、貴様等二人が同時に死なん限りお前は殺せんのだ」
俺は、つまらなさそうに種明かしをしてやると、図星だったのかアンミロが、双剣を振りかざし襲いかかって来る。そして反対方向から、インミロも襲いかかって来た。
「「死ね!」」
「はぁ」
俺は、若干飽き飽きしながらも雷槍を構えた。
「ん〜、余り有力な情報はないな。強いて言えば、他国にある拠点の情報ぐらいか」
あの後俺は、最奥で“冥府教”の資料を調べ回っていた。だがこれといった情報は、余り無くて肩透かしを喰らった。
俺が落胆していると、部下二人が数人の人間を引きずってやって来た。
「申し訳ございません、マスター!司教やら司祭といった役職の者を捕らえたのですが、余り良い情報は御座いませんでした!」
「分かった。ここを領域にした後、撤収する。そいつ等を持ってな」
俺は、部下二人が引きずって来た数人の人間、そして手足をもがれ胴体と頭しか残っていないステッコ兄弟を見ながらそう宣言した。
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