釣りと素潜り
難産でした。
◆黒岩島 海辺 カゲマサside
牢屋区画から飛び出した俺は、釣り竿を持って海辺に向かった。向かったのは、比較的浅い海辺で釣りの初心者に向いてそうな場所である。
「そういえば、俺釣りするの初めてだな。出来るだろうか」
俺は、今更気付いたことを呟くが、今言っても仕方が無いので早速釣りを始める。餌に使うのは、前に倒したギガ·シーレックスのアングの肉片だ。倒した後、空いた時間に取り出してみたのだが、もう臭いのなんの。まるで、腐ったドリアンの匂いを数十倍濃くしたという程に臭いかった。
まあ、これぐらい匂いが強烈なら魚ぐらい寄ってくるだろう。俺は、そんか安易な考えでアングの肉片から小さな肉を千切り取り、釣り針に取り付ける。肉片は、今でもその強烈な匂いを垂れ流していた。
「そ〜れ、何かかかれよ!」
俺は、竿を振って糸についた釣り針と釣り針に取り付けた肉片を海へ投入した。そして、そのまま獲物が竿にかかるのを待つ。
「さ〜て、待っているのも暇だからな。何か考えるか。南方諸島中央部のこととか?」
俺は、ちょうど盛り上がっていた岩に腰掛けて独り言を呟く。なんか、凄く寂しい絵面だな。
(南方諸島中央部。西部と違って、十以上の国家が存在するが、常に戦乱状態。人間やら亜人やらが死にまくってる。海賊ヨクブーの捕虜になっていた中央部出身者からの情報によれば、酷い場所だと兵站不足や悪質な兵士による村々からの略奪や陵辱が横行。また亜人狩りもあり、攫われた亜人は男女問わず見た目麗しい者は性奴隷として、そうでない者は奴隷として戦争における肉盾か重労働に振り分けられるらしい。軽い世紀末だな)
俺は、ため息を吐きながら中央部の惨状に顔を顰める。それと同時に悪い笑みも浮かべた。
(ならば、適当に恩を売って手駒にできる奴等がいるはずだ。例えば、陵辱から救ったりとかな。情報をペラペラと吐いてくれるだろう。単純な諜報活動もやるがな。それを部隊規模でやれば良い···を!)
俺が悪巧みを始めていると、竿の方に動きがあった。竿先が海へと引っ張られている。
「ぃヤッホぉぉい!!」
俺は、暗い思考から釣りを楽しむ思考へとシフトする。奇声を上げながら俺は、釣り竿を振り上げた。
「おお!····おお?」
俺が釣り上げたのは、体長は二十五センチはあるカサゴだった。俺は、無言でモンスターでもない魚を釣り針から外した。そして、手の中で暴れるカサゴを両手で握る。
「お前じゃねぇからァァァ!」
と、思い切りカサゴを投げ飛ばして海にリリースした。
その後も釣りを続けるが、どれもこれもモンスターではない、普通の魚ばかりであった。軽く列挙すると、メバルやイシダイ、クロダイ、カワハギ、ウツボなどである。
「俺が欲しいのは水系統モンスターなんだよ!普通の魚はいらねぇ!なんだ!調理でもされてほしいのか貴様等!」
俺は、バケツに入っている魚達に吠えながらその場で釣り竿を【ボックス】へと収納、同時に雷の魔槍を取り出す。
「もう良い!直接槍で取ってやるわぁ!」
俺は、そう言って海の中へと飛び込んだ。因みに釣った魚は、調理係に渡して飯のメニューにしろと言っておいた。
俺は、勢いよく海に飛び込み《環境適応》と《水泳の達人》のスキルを発動させる。そして、雷槍片手に海を泳ぎだした。薄っすらと見える海底には、海藻がユラユラと漂い岩が転がっている。そしてモンスターらしき、禍々しい角の生えた魚や全長三メートルあるカニ等が生息していた。
(いるないるなぁ。こんなに沖合にいるんじゃ、釣れるわけ無いか)
俺は、雷槍で獲物を狙いながら泳いでいき、狙った雷槍でモンスターを次々と刺し貫いていった。主な水系統モンスターを挙げてみる。
名前
種族 デビルオクトパス
職業
レベル 20
ランク C
スキル 炭吹き 闇魔法 水生物
名前
種族 メガロドン
職業
レベル 45
ランク B
スキル 鋭牙 身体能力強化 再生 水生物
名前
種族 オーガホエール
職業
レベル 39
ランク C+
スキル 身体能力強化 微弱再生 剛力 水生物
この三匹は、今の所俺が狩ったモンスターの中で特徴的なモンスターだった。
デビルオクトパスは、通常のタコよりも三割ほど大きな黒いタコで、殺すときには生意気にも俺に闇魔法【ダークランス】を放ってきた。まあ、《魔力障壁》で防いで雷槍で一突きしてやったが。
メガロドンは、全長約十五メートル程のイメージ通りの巨大ザメだった。ただ違っていたのは、傷の治りが早かったぐらいだ。《再生》スキルは強いね。
オーガホエールは、二本の角を生やしたクジラで通常のクジラより筋肉質な身体だった。オーガと種族名にあるので、戦闘に特化したクジラかもしれない。実際クジラより泳ぐスピード速かったしな。雷槍でチクチクしてたら死んだが。
そんなこんなで順調にモンスターの魔石を集めていた俺だが、今は少々奇っ怪なモンスター郡と遭遇していた。
「ギョ〜ギョッギョッギョッギョッ!オレサマハ、シーマンキング!コノシーマングンダンヒャクタイノチカラデ、チジョウヲシハイシテヤルノダ!」
頭が魚で肉体は、人間のものに類似している。手と脚には、水掻きらしきものも確認できた。先頭のシーマンキングを名乗る奴は、ご丁寧に頭にサンゴ製の王冠を載せている。
「ニンゲン!キサマヲイケニエニカイセンノノロシニシテヤル!イケ!オルカ!ソシテワガグンダンヨ!」
「SYAAAA!!」
「Giiiii!!」
シーマンキングとやらが命令を下すと、何処からともなく巨大なシャチのモンスターが俺を噛み砕かんと牙を煌めかせる。同時にシーマンキングの手下が襲いかかってきた。
(邪魔だな。まあ、魔石が手に入るならいいか)
俺はといえば、雷槍を構えながら呑気なことを考えていた。因みにオルカとやらとシーマンキングと手下の強さはというと。
名前
種族 オルカ
職業 ペット
レベル 32
ランク A−
スキル 鋭牙 身体能力強化 再生 水生物 音魔法
名前 ポカ
種族 シーマンキング
職業 シーマンの王
レベル 40
ランク C+
スキル 魚人王 槍術 身体能力強化 水生物
名前
種族 シーマン
職業 雑兵
レベル 3
ランク E
スキル 槍術 水生物
俺から言わせてもらうと、オルカ以外雑魚だった。よって。
「ハハハ!コロセェェ!ア〜ハッハッ」
「邪魔」
「ハッハ···ハァ?」
俺は、雷槍を一振り。それだけで、手下のシーマン全てが雷撃に襲われ死に絶えた。
「ナァ!?」
「ふん」
俺は、空間魔法【ディメンションムーヴ】でオルカの前に転移し、オルカの目玉に雷槍を突き刺した。そして、雷撃がオルカの体内を襲う。あらゆる器官が焼け焦げ、オルカは絶命した。その間三秒弱。
「ナ、ナニヲシ」
「あとお前な。魔石は有効活用してやるから安心しろ」
そう言って俺は、シーマンキングの脳を雷槍で貫いた。
「ふふっ、いい戦力になってくれるといいなぁ」
俺は、楽しみで顔を歪ませながらシーマンやオルカの死体を回収していった。
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