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方針と愚痴

難産でした。


◆黒岩島サブダンジョン 牢屋区画 カゲマサside



 俺は、牢屋区画にて部下達が次々と戦女(アマゾネス)達を牢屋に放り込んでいる場面を見ながら今後の方針について考えていた。


(さて、南方諸島西部には用はなくなった。後は、南方諸島東部と中央部に乗り込んで調査しなくちゃいけないのだが)


 俺は、脳内で南方諸島の地図を広げる。

 今自分達が居るのが南方諸島西部なのだが、西部の他に中央部と東部が存在する。特に東部は、行くために未だに戦乱が巻き起こる中央部を突破しなければならない。まあ、中央部も調べるのでどのみち突破するには時間が掛かるだろう。

 因みに、何故か北部と南部は無い。中央部そのものが北部と南部の合体した姿のようだった。


(フィリア王国の図書館でチラッと見た程度だが、中央部は小島の量が多く、百以上の小島が存在するらしい。その中ならば、ドサクサに紛れてサブダンジョン化させて拠点にするのも良いかもな。その拠点を起点に調査出来るし)


 俺は、脳内で次々と予定を立てていく。そして、数分が経過し俺の脳内では大まかな計画が形成されていた。

 まず第一に中央部での拠点となる島を確保する。特に人の手が入っていない小島が望ましい。人がいたら厄介だからな。次に、どこかの小国家に潜入し“冥府教”の情報を集める。中央部には、西部と違って小国家だけでも十以上あるらしいので、ダンジョン本部より情報収集部隊を連れてきて情報を集めさせる方向とする。もし“冥府教”の拠点が分かれば、直様強襲し情報を抜き取る。

 取り敢えずは、こんな方針でいくことにする。何故西部には、国家が少ないのか疑問に思ったが、それは捕らえていた黒髪糸目アマゾネスのフェオール·テニシアが答えてくれた。


「かつて南方諸島西部には、五つ以上の小中国家がありました。しかし女王陛下の命令により次々と侵略され、今や生きている国家はフィリア王国のみです」


 これを聞いたときは、俺でも少し驚いた。アマゾネス女王国は、南方諸島西部の統一に王手をかけていたのだ。侵略を受けた国家群は、男は人権無しの道具に落とされ、女は下級民とされたがマシな境遇となっているらしい。島々は、アマゾネス女王国から派遣された役人や軍が統治を行っているとのことだった。

 俺は、知らない国家の命運など知ったこっちゃ無かったが、未だにアマゾネス女王国に戦力が残っていることに危機感を抱く。もし自分が出払っている隙に黒岩島やフィリア王国が攻撃をうけたら、状況によっては助けられないかもしれない。


(厄介なものだ。黒岩島の防衛戦力を拡充しなければならんな。フィリア王国もだ。別に滅ぼうがどうでも良いが、せっかく一度は助けたのだ。滅ぼされたら目覚めが悪くなる)


 俺は、密かにフィリア王国の守護を決定する。最も守護するのは、配下であるモンスター達であるが。


(よし、さっさと始めよう。防衛戦力は、水に関するモンスターがいいか。あ、しまった。ウチのモンスターには、クラッシュマグロと人魚しかいないではないか!)


 俺は、水系統モンスターの不足に今更気付いて頭を抱える。最近は、人工魔人や魔人と一緒に居たせいでモンスター関係がおざなりになっていたのだ。


(やべっ。早く水系統モンスターを集めなければ!)


 俺は、焦燥感に突き動かされて牢屋区画から出ていった。DP(ダンジョンポイント)で生み出した釣り竿を持って。














 カゲマサが釣り竿を持って牢屋区画から出ていった数分後、アマゾネス女王国総司令のペンテレイシアは、目を覚ました。


「···ん。ここ··は?」


 ペンテレイシアの目に飛び込んできたのは、一面黒い岩で覆われた大部屋。そして、鉄格子で囲まれ惨めに捕まった自分。


「··っ!そうだ!私は、あの忌まわしき雄に負けてここに!···ここに」


 そこまで言ったペンテレイシアは、意気消沈してその場にへたり込む。


(は、ははっ。そうだ。私は負けた、負けたのだ。雄に、劣っていると思っていた雄に)


 ペンテレイシアの胸中には、途方も無い敗北感と虚無感が渦巻いていた。そして、精神にチクチクと刺さる恐怖も。


(私は、これからどうなるのだ)


 ペンテレイシアは、頭を抱えて言いようもない恐怖に怯える。彼女自体は、雄を殺すのになんの抵抗はない。他の同胞が雄を無理矢理犯してもなんの抵抗もない。だが、立場が逆転すれば話は別だ。外海の雄は、女を物扱いにし使い潰す連中、そんな連中に捕まったのあれば先に待つのは凄惨な光景しかない。

 これだけ見れば、ペンテレイシアが以下に自分は良くて相手は駄目という我儘な女に見えるだろう。実際そのとおりなのだから。だが、ペンテレイシアがそうなったのは女王ヒッポリュテの体験を知るが故である。


(先に待つのは、良くて死、悪くて慰み者、か。フェオール殿もそうなったのか?)


 ペンテレイシアは、ここに捕らえられていると思われるフェオール·テニシアの末路を思い浮かべる。そして、頭を左右に振って霧散させた。彼女は、アマゾネス女王国内でも女王の次に美しいと評判の女性である。そんな存在が虜囚となっては、思い浮かべる末路など一つしかない。


(嗚呼、女王陛下。私もフェオール殿の後を追ってしまいます。この不甲斐ない臣をお許しくだ「ご飯の時間ですよ?ペンテレイシア総司令」··え?)


 ペンテレイシアは、女王ヒッポリュテに許しを乞おうとした時、不意に鉄格子の外から声がした。思わず外を見ると、目の前に信じられない光景が広がっていたのだ。

 目の前に居たのは、ピンク色で可愛いウサギの絵が描かれたエプロンを身に着け、ピンク色のナプキンを頭に巻き、大量の肉とサラダ、パンをワゴンに載せたフェオール·テニシアの姿だった。その顔は、微笑を浮かべている。


「フェ、フェオール殿ォォ!?」

「はい、フェオール·テニシアです」


 ペンテレイシアは、思わずその場で叫んでしまった。対してフェオールは、微笑を浮かべたままワゴンから肉やサラダを皿に盛っていく。その様子にペンテレイシアは、思わずフェオールに問うた。


「な、何故鉄格子の外に!?」

「何故って、私が今日の配膳係··ああ、貴女は今日来たばかりですから、ここの虜囚のルールを知らないのですね。ならば、戸惑っても仕方ありません」


 フェオールは、納得のいったように頷く。その行動に疑問を覚えたペンテレイシアは、更に質問を重ねた。


「··フェオール殿。貴女は、その、何か酷いことをされたのか?」

「酷いこと?ええ、されましたよ?」

「··っ!」


 ペンテレイシアは、予想通りの回答に唇を噛む。今のフェオールの様子は、雄共に犯されすぎて脳がイかれてしまったのだの判断したのだ。


「されましたとも。あの〈帝将〉、私のことを無視しやがりまして。私に雌としての魅力無しとでも言いたいのですかあの野郎!」

「済まない。我々が不甲斐ないばかり···ん?」


 何処かおかしい。そう感じたペンテレイシアは、フェオールの言葉に集中する。


「ああ、本っ当に腹が立ちますね!いくら私がアピールしようとのらりくらりと躱しやがりまして!それでも男ですか!」

「は、はぁ」

「この前なんか、目の前で全裸になってやったのに、なんて言いやがったと思います!?」

「い、いやぁ、わかりません」

「あの男、私が脱ぎ捨てた服を乾かして、私に再度着させたのですよ!?そして、「風邪引くから止めとけ。自分の身は大切にしろ」と!ムキィィ〜〜〜!」


 おかしい。フェオールは、何処かおかしい。ペンテレイシアは、そう結論付けた。以前のフェオールは、常にお淑やかで微笑みを絶やさない戦女だった筈。


(洗脳でも受けたのか?)


 そんな考えが過るのも無理もない話だった。だが、洗脳を受けた痕跡が見つからない。ならば、これがフェオール·テニシアの素顔だと言うのか。

 ペンテレイシアは、混乱する頭で必死に考えた。だが、フェオール変調の答えは見つからなかった。


 その後ペンテレイシアは、フェオールの愚痴を聞かされ続けた。どれも、自分達を捕らえた〈帝将〉に対する恨み節だった。

 これは、カゲマサが牢屋区画に戻ってくるまで続いたのであった。


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