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少しの睡眠と修羅場?


◆黒岩島サブダンジョン 最奥区画



 俺は、目ぼしい成果を得られずに意気消沈しながら黒岩島に戻ってきた。同時に最奥にあるサブコアルームへと赴き、DP(ダンジョンポイント)で創り出したソファにドカリと座り込む。


「糞!やはり世の中上手くいかねぇなぁ!イライラする!」


 俺は、敵の名は分かっているのに見つけられないもどかしさに苛立ちを隠せなかった。その後ストレス故か、ソファから立ち上がりその場をウロウロし始める。


「糞がぁ!」


 俺は、苛立ちをぶつけるように目に入った岩壁を殴り付けた。岩壁は音を立てて壊れ、崩れ去る。それでも俺の苛立ちは収まらなかった。


「フーフー、あ〜糞!糞!糞ぉ!」


 俺は、何度も岩壁を殴りつける。岩壁は、その都度破壊されていくが俺は意に介さない。

 因みに俺が岩壁を殴る度、黒岩島が大きく揺れて軽い地震のような有様となっていた。


「糞!糞!糞ったれ!」

「しゅ、主君!どうしたのだ!?」


 俺が岩壁を殴っていると、サブコアルームに俺の部下である元エルフの魔人ナタリアが飛び込んでくる。どうやら、地震の震源を調べようと降りてきたらしい。


「っ!ナタリア!···ふ〜、ありがとう。落ち着いた」

「え?あ、ああ、どういたしまして?」


 ナタリアが入ってきたことで自分が八つ当たりという情けないことをしていることに気が付いた俺は、咄嗟に苛立ちを飲み込み若干火照った顔で礼を言う。

 ナタリアは、何故例を言われたのか理解できなかったが取り敢えず礼を受け取った。


「いや、本当に済まない。目的のライ·ランスロットが全く見つからなかったから、苛立ちが溜まってしまってな」

「なる程···。主君よ、私が何か役立てることはないか?私は主君に忠誠を誓った身、出来る限り応えてみせよう」

「ん?いや、別に大丈、···あ〜そうだな」


 俺は、ナタリアからの懇願に最初は断ろうとした。ナタリアは、近接タイプの魔法剣士なので情報集めは苦手だろうと判断してのことである。だが、断ろうとした瞬間ナタリアが悲しそうな顔をしたので、俺は罪悪感が湧き今ナタリアでも出来る仕事を考える。


「ん〜、良し。ナタリア。ちょっとソファに座ってくれ」

「?わかった」


 ナタリアは、俺の指示に戸惑いながらもソファに座る。俺は、仮面を外すと肩をゴキゴキと鳴らしながらナタリアの隣りに座った。


(な、何故隣に?ま、まさか主君!こ、こう、イヤらしいなことをするのか!?するならマヤでも良いと思うが、するならすると言ってくれれば良いものを!)


 ナタリアは、心臓の動悸が早くなっていることを感じながら目を閉じ頬を赤らめてその時を待つ。すると、丁度膝の辺りに重量を感じた。

 ナタリアは、疑問を感じ目を開ける。するとそこには、ナタリアの膝に頭を乗せて目を閉じるカゲマサの姿だった。


 そう。カゲマサが敢行したのは、膝枕だった。


(ハニャニャニャにゃにゃ!?)


 ナタリアは、内心で思わず奇妙な叫びを上げてしまう。

 ナタリアがそうなるのも無理はない。カゲマサは、普段はこのような姿を見せることなど滅多に無いのだ。軽い態度や親しみやすさは時折見せるが、眠る姿は晒さないことがカゲマサのダンジョンの共通認識であるからだ。また、それ以外ににナタリアが慌てる理由はもう一つある。


(何て整った顔だ)


 カゲマサ自身はそれほど気にしてないが、今のカゲマサの顔は、異世界基準で言うとかなり上位のイケメンに入る為だ。ナタリアも女である。整った顔つきの異性に膝枕をすると慌てるのだ。


「済まない。俺に膝枕をするのは、気が引けると思うが耐えてくれ。少し、疲れたんだ」

「あ、ああ!気は引かんとも!寧ろどんどん使ってくれ!私程度の膝なら喜んで貸すとも!」

「済まない。··ぐ〜」


 カゲマサは、そのまま寝てしまう。本来魔人には、睡眠という行為はしなくても良いのだが、カゲマサは癖で睡眠を取るのだ。人間時代からの習慣は、取れぬものである。

 カゲマサが眠って数分が経過した頃、ナタリアは眠るカゲマサを見ながら思案する。


(どうしようか、これ。こんなに無防備な主君は、初めて見たぞ)


 ナタリアは、柄にも無くドキドキしていた。元々カゲマサに好感を持っていた手前、こうも無防備な姿を見せられると無性に胸が高鳴ってしまう。

 そのままカゲマサの顔を見つめていたナタリアは、無意識に顔を近付ける。やがて、カゲマサの顔が目と鼻の先になると、ナタリアは目を閉じて更に顔を近付ける。

 ナタリアの唇とカゲマサの唇が今にも触れそうになったその時。


「ナタリア!?戻ってこないけど、何かあった··の」


 サブコアルームに元牛獣人の魔人マヤが飛び込んできた。そして、今にもナタリアと寝ているカゲマサがキスしかけている場面に遭遇する。


「··あ、···その。ち、違うんだマヤ、これは、その」

「···」


 ナタリアは、しどろもどろになりながらも必死に言い訳を考える。対してマヤは、キスしかけている場面に遭遇した途端、絶対零度の冷たさしかない目線をナタリアに送った。


(い、いかん!マヤの隠れた独占欲が!)


 そんなマヤの様子にナタリアの焦りは更に深まり、冷や汗の量が増えていく。ナタリアとしては、謝罪の為に土下座をしたいがカゲマサを膝枕しているので出来ない。よって、滝と形容できるほどに増えた冷や汗を流しながら口を開いた。


「す、すまない!」


 ナタリアが放った必死の謝罪にマヤは、無表情から一転して笑顔を浮かべる。だがその笑顔は、一切暖かみが欠如されていた。


「ナタリア♪」

「あ、ああ」


 マヤは、笑みを深めながらナタリアへ口を開く。だがナタリアには、その笑みが死神の笑みのように思えてしまった。


「後で居住区画の私の部屋に来て。い·い·わ·ね?」

「あ、はい」


 底冷えする冷たさの籠もったマヤの言葉にナタリアは、それしか言えなかった。















 マヤは、不機嫌さを隠さずに通路をズンズンと進んでいく。道中警備兵であるダンジョンモンスターが横切るが、マヤの雰囲気に恐れ慄き顔を歪めていく。マヤは、まったく意に介さなかったが。

 黒岩島サブダンジョンでのマヤの部屋まで来ると、マヤは部屋にあるベッドに寝転んだ。それと同時に口も開く。


「···私の方が良い膝枕になれるのに」


 マヤの胸中を渦巻くのは、嫉妬であった。御主人様の第一の奴隷を自負するマヤにとって、ナタリアに先を越されたのは痛恨の極みである。

 嫉妬が渦巻く胸中では、落ち着けないのかベッドの上をゴロゴロするマヤ。すると、備え付けられたドアがノックされる。


「はい」

「失礼いたします。マヤさん」

「失礼します」

「エルザさん。エリちゃん」


 入ってきたのは、かつてカゲマサによって身体欠損の回復実験の際に買われた奴隷であった母エルザ⋅シドリーと娘エリ⋅シドリーであった。今は、二人共魔人となりエルザはマヤの補佐を。エリは、本拠地のダンジョンにある魔人街にて簡単な教育を受けながら過ごしている。

 この二人が何故黒岩島にいるのかというと、エルザはマヤの補助の為に。エリは、外の世界を見て見聞を広めるために黒岩島サブダンジョンへと派遣されてきたのだ。


「あの、兵士の方々からマヤさんの雰囲気が剣呑だと聞きましたが、何かありましたか?」

「どうしたの?」

「それが」


 マヤは、二人に胸中に渦巻く嫉妬を吐き出す。エルザは、真剣にマヤの話を聞きエリも理解できない箇所があれど理解しようと努めた。


「···というわけでして」

「そうでしたか…」

「ん〜、やっぱりマヤさんってカゲマサお兄ちゃんのこと大好きなんだね」

「っ!エリ!」

「はうあ!」


 エルザは、複雑な感情を抱きながら頷いたが、娘であるエリは無垢故に放った言葉でマヤを撃沈させていた。エルザは、ため息を吐きながら娘の正直さに呆れた。まあ、そこが愛おしくて可愛らしいのだが。


「ち、違いますぅぅ〜〜〜!私は、御主人様の奴隷なのですから、そこに恋愛感情はありませ〜〜ん!」

「でも、お兄ちゃん取られて悔しいんでしょう?じゃあ、大好きなんじゃないの?」

「そ、それは!く、悔しいですけどっ!ですけどっ!だからって恋愛感情だとするのは早計かと!」


 マヤは、必死にエリの言うことを否定しようとする。だが、顔を真っ赤にして手を振りながら必死に弁明している姿を見ていると、まったく説得力が無いようにエルザは思えた。


「マヤさんは、お兄ちゃんのことを大好きだとおもうけどねぇ?どう?お母さん」

「え!?ま、まあ、そうじゃないってことは、そうじゃないんでしょう」


 いきなり話を振られたので取り敢えずマヤを擁護したエルザ。傍から見たら、マヤがカゲマサに恋愛感情を向けていることは、すぐわかることだが当人は隠しているようだし言わないことが優しさだろうと判断したからだ。


「むう、なんかはぐらかされた気がする!まあ、いいや。それでねお母さん、今度ね」


 エリは、この話題に飽きたのか直ぐに別の話題へと移っていた。一方のマヤはというと。


「そう!私は、御主人様に恋愛感情なんて抱いておりません!誰がなんと言おうとありません!ノー恋愛です!」


 必死に己を言い聞かせていた。エルザは、苦笑しながらエリの相手をした。















 そんな様相をしていた黒岩島サブダンジョンだったが、ダンジョンのある黒岩島上空に二匹、いや二人の異形がいた。


「おい、あの島あんなにデカかったか?」

「いや、元々小島だった筈。何かあるな。よし、ペンテレイシア様にご報告だ!」


 二人の異形、アマゾネス女王国女王軍空挺偵察隊の二人は、そのまま夜の空を飛び去っていった。


下手っぴな恋愛描写でごめんなさいね!


良かったならば、高評価、ブックマーク登録、誤字脱字報告等よろしくお願い致します。

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