表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
277/302

アマゾーン島侵入②+α


◆アマゾーン島 ジャングル カゲマサside



 バーサクチキンを下しアマゾーン島に侵入した俺は、ジャングルの中を樹木と樹木を飛び移りながら移動という形で進んでいた。


「ふふふ、このジャングルは未知のモンスターがいて良いな。ダンジョンに帰ったら召喚してみるか?」


 俺は、そう呟きながら樹木と樹木の間を飛び移る。何故大地を歩いていかないかというと、面倒だからだ。


「いや、やめておこう。といつもこいつもバーサクって付いてるし、下手に暴れられたら厄介だ。まあ、魔石の吸収ぐらいはするけどな」


 そう、このアマゾーン島のモンスターは、全てバーサクと名がついている。その名が表す通り、皆凶暴でどんな敵にも向かっていくのだ。たとえ、格上でも。つまり、俺でも容易に襲われるので、面倒となり樹木と樹木の間を飛び移る方法で移動しているのだ。


「《暗殺者》は気配を消すだけだし、【ステルス】は姿を透明にするだけ。下手に地上を歩いていけば、匂いなんかで察知されて襲われるのが目に見えてる」


 他にも認識阻害系統のスキルはあるのだが、全て発動すると慢心して、隙を作ると判断したのだ。それに、特定のスキルに反応して発動する結界というのもあるらしいしな。

 俺がそんなことを考えていると、樹木の下で二体のモンスターが争っているのを確認する。


「ん?あれは、猿とトカゲか?」


 争っているのは、目を充血させながら争っている猿とトカゲの姿だった。《鑑定》してみる。



名前

種族 バーサクモンキー

職業 はぐれモンスター

レベル 6

ランク D

スキル 狂乱 剛力 俊足



名前 ポポ

種族 バーサクリザード

職業 従魔

レベル 23

ランク D+

スキル 狂乱 剛力 鋭牙 鋭爪 硬皮 炎の息吹 



 ふむ。レベルだけでいったら、あのバーサクリザードが優勢だな。モンキーの方は、何度かリザードに拳を入れてるが、効いてる様子がない。スキル《硬皮》で防いでいるのだろうか。

 俺は、二匹の戦いを見ながら予想したが途中で頭を振る。


「まあ、そういうことにしておこう。問題は、リザードが誰かの従魔だということか」


 バーサクリザードのポポとやらの職業欄にあった従魔という文字、普通に考えたらあのギガ·シーレックスのアングを使役している存在の従魔だろうが、ランクAのモンスターを使役出来る存在があんな雑魚を使役するだろうか?いや、もしかしたら進化を想定してジャングルのモンスターを狩らせているのかもしれない。


「だとしたら、後々脅威になるかもしれないな。良し、殺そう」


 俺は、そう決断すると【ボックス】から小さく尖った小石を取り出し、その小石を親指で弾き飛ばした。弾き飛ばされた小石は、真っ直ぐと飛んでいきバーサクリザードの目玉を貫通。俺は、その瞬間スキル《軌道操作》で小石の起動を少し上へとずらす。小石は、そのまま脳を貫いた。バーサクリザードのポポは、何が起こったのかすらわからぬまま絶命する。


「皮は硬く出来ても、目玉と脳は出来んだろう。さて」


 俺は、地上に降りて魔石を回収しようとして、己の迂闊さに気付いた。


(バッカ!何やってんだ俺!まだバーサクモンキーがいるじゃねぇか!慢心駄目って言ったばかりだろうが!)


 俺は、己の阿呆さを叱責しながら構える。バーサクモンキーは、姿の見えない俺をハッキリと認識しているのかこちらをジッと見て離さない。


「えぇい!さっさとトンズラだ!《鋭糸》!」


 俺は、手から発生させた糸でバーサクリザードの死体を抉って魔石を絡め取る。そして、その場から跳躍し樹木から樹木へと飛び移りその場から去っていった。


 一方の取り残されたバーサクモンキーは、その場に立ち尽くしていたが、カゲマサの去っていった方向をジっと見ていた。じっと、見逃すことの無いように、ジっと。








 急いであの場から離れた俺は、改めて《暗殺者》や【ステルス】を始めとして《消音》《隠匿》《無臭》などのスキルを発動させて気配をさらに消し行動を開始する。


「ふぅ〜、さっさと奴等の街へ行かねぇと。“冥府教”の手掛かりを手に入れなきゃならないってのに!」


 俺は、苛立ちと共に移動していく。道中空から襲い掛かって来たバーサクバードやバーサクトレントなどが邪魔してきたが、容赦なく撃滅しておいた。今頃魔石を抜かれて、他のモンスターの餌となっているだろう。


「ふん、やはりバーサク系統のモンスターは、命の勘定が出来てって、うおっ!?眩しっ!?」


 そんなことを考えながらも進み続ける俺は、突如として目に差し込んできた光に目を覆う。俺が目を覆っていた手をどけて、空を見るといつの間にか朝になっていたではないか。


「なんだよ、唯の朝日か。てっきり、敵の光魔法を喰らったのかと、ん?」


 俺は、攻撃じゃなくて安心していると、ふとジャングルの最奥地に何かがあることに気が付いた。俺は、樹木の上から《遠見》というスキルを発動させて、何かが何なのかを探る。


「あれは、館か?」


 《遠見》によって発見したのは、こじんまりとした館だった。その館は、ジャングルの少し大地が盛り上がった場所に建てられており、よくよく見ると何重にも重ねて敷かれた結界が見える。


「まさか、“冥府教”の拠点か?行ってみる価値はあるな」


 俺は、ニヤリと笑うと再び樹木と樹木との間を飛び移りながら館を目指した。















◆アマゾネス女王国 歓楽街 テニシア邸



 アマゾネス女王国西地区には、かなり大規模な歓楽街が存在する。どのような国であれ、休んだり楽しんだりする時間は必要でありアマゾネス達も例外ではなかった。では、アマゾネス達にとっての楽しみとは何か。歓楽街の一角では、このようなやり取りがあった。


「そちらの逞しいお姉さん!ウチの店には、多数の人族の雄を揃えてあるよ!どうだい?ウチでしっぽりやってかない?!今ならお安くしますよ!」

「いやいや、お客さん!そちらの店は止めときな?あの店は、貧相な人族の雄しか売ってねぇ!それよりも、ウチには屈強な獣人族の雄が待ってるよ?!面食いならば、美しいエルフの雄もあるぜぃ!」


 このような光景がアマゾネス女王国歓楽街の一角なて、繰り広げられていた。この一角で経営されているのは、所謂風俗である。それも男婦を取り扱った店だ。

 アマゾネス達も女性である。たまに欲求不満に陥るときがあるし、種馬として配給される男は皆貧相ですぐに壊れてしまうのだ。そこで出来たのが、男婦を取り扱う風俗である。

 男婦は、基本種馬の中から比較的頑丈な男を見繕うのだが、そこに男の自由意志はない。選ばれたら問答無用で連れて行かれて、壊れるまでずっとアマゾネス達の為に酷使され続けることになる。実質種馬時代とそう変わらない。いや、下手したら更にキツイ環境だろう。種馬は、アマゾネスたちにとっての財産として最低限大切にされる。だが、男婦となれば商売道具として使い潰されるのだ。


 そんな光景がアマゾネス女王国に存在するのだが、これでも一角なだけだ。むしろ、ここでも男性の扱いはまだマシである。歓楽街の別の一角では、こんな光景も出来ていた。


「おっ!そこの素晴らしい大剣を担いだ軍人さん!どうやら、その大剣は新品のようですね〜。いかがでしょう、ウチの試し切り屋で試してみませんか!ちょうどいい的となる雄が入荷されたんですよ!」

「そこの闇魔導師さん!良い生贄をお探しで?この店には、老若問わず良い生贄用の雄が揃ってるよ!今なら、一匹たったの銀貨三枚だ!」


 男性の命がゴミのように使い捨てにされていく光景がそこにあった。普通の人間が見たら、アマゾネス達の正気を疑い、残酷な光景と非難するだろう。だが、悲しいかな。彼女達アマゾネスは、至って正気である。アマゾネス達にとっては、この光景が至って普通なのだ。弱い男などこのようになって当然であり、非難される覚えはないと本気で信じているのだ。

 では、強い男はどうなるのかというと。


「おお、これは上級民様。この度は当店へのご来店、誠にありがとうございます。それで、この度はどのようなご入用で?ふむふむ、娘がペットの雄が死んでしまったから新しいペットを買いに来た?成程!わかりました、それでは此方へ」

「···では、こちらなんてどうでしょう。この雄は、かつて南方諸島東部の国で部隊長を務めていた雄でして、ほら中々に屈強でしょう?奥様のご趣味にも十分に耐えられると当店は判断いたしました」


 このように上級民である貴族のペットとして買われるか、道楽を盛り上げる玩具として消費される運命である。


 因みに、囚われた女性達はどうなるかというと、普通にアマゾネス女王国の国民として迎えられる。身分は、下級民からだが実力を示せば成り上がれる仕組みだ。


 閑話休題。このようにアマゾネス女王国の歓楽街では、男性の命や肉体がゴミのように消費されていく訳だが、このような歓楽街を作った張本人がいる。それは、長年アマゾネス女王国に生き女王に仕えて実力を示し続けた上級民。テニシア家初代当主、フェラリオーレ·テニシアである。彼女が一体どのような意図でこの歓楽街を作ったのか、雄への恨みか加虐心からかは定かではない。

 テニシア家の館は、歓楽街から少し離れた山の上に存在している。門の前には、屈強な警備兵が日夜警備している他、守りの結界も多数敷かれている。そんな館内で、当主としての席に座っているのが今代の当主である四代目当主フェオール·テニシアであった。

 彼女は、先代が所有していたエルフの種馬から生まれたアマゾネスで、エルフ由来の長命で二百年以上の間アマゾネス女王国に仕えている。容姿は、エルフの持つ金髪ではなく下ろされた艶やかな黒髪に糸目と、地球でいう大和撫子に近い容姿をしていた。また、エルフ譲りの高い魔力を持って生まれた彼女は、軍内でも高い存在感を発揮し、軍属魔導師部隊の最高顧問として軍に関わっている。今では、長年仕えて来た畏怖と歓楽街を作った一族という尊敬を込めて、巷ではマダム·フェオールと呼ばれている。


 そんなフェオール·テニシアは、現在館内の会議室にて一人の女商人と会談していた。


「な〜あ〜、いい加減はよ再侵攻してくれへん?今のフィリア王国は、ホンマにガタガタで攻めればあっという間に瓦解するんやけど」

「ふふふ、今はその時ではありませんよ?ライ·ランスロット様?」


 その女としても商人は、ライ·ランスロットと名乗りフェオール·テニシアに会談を持ちかけてきた。フェオール·テニシアは、何の旨味のない話に見向きもしなかったが、ライ·ランスロットが手土産に持ってきた雄百人を見て渋々会談の席を設けたのであった。その際に持ちかけられたのが、戦争でフィリア王国の雄を全て奪い去るという荒唐無稽な話だった。


「何度も申し上げましたが、我が国は軍隊の立て直しにそれなりの年月を使います。それにボテグリューを下した敵がいる以上、無闇に攻めても戦力の低下は、周りの島国へ攻めてくれと言っているようなものなのですから」

「いやいや、こっちも何度も言うとるやん。今フィリア王国にその敵はおらへん。攻めるなら今がチャンスや」


 フェオールは、何度目か分からない程のため息を吐きながら、目の前のライ·ランスロットを見る。そして、内心何度目か分からない侮蔑を吐いた。


(この人、商人のくせに絶望的なまでに交渉が下手ですね。普通なら、裏で根回しをして行くように仕向けるところを、そのような工作をまったくしていない。まるで、成功しようがしなかろうがどっちでも良いという思惑が見て取れますね。何故ボテグリューは、この者の言葉を鵜呑みにしたのでしょうかあの無能。あ、無能だからですか)


 フェオールは、内心死んだボテグリューを無能と吐き捨てた後、笑顔のままライ·ランスロットを見る。感情を表に出さないことなど、朝飯前である。


「ライ·ランスロット様、ご理解ください。今の我が国には、立て直しの為の時間が必要なのですから。それを分からぬ女王陛下ではありませんわ」

「むう〜〜〜、まあええわ。今回は引き下がったる。···ん、そや」


 観念したのか、ライ·ランスロットは席を立ち、会議室から出ていこうとする。その時、ふとと立ち止まり警告めいた言葉を発した。


「そういや、アマゾーン島に侵入者が入ったそうやないか。街の軍人さんから聞いたで?」

「そのようですね。ですが、すぐに屈強な女王軍によって捕まるでしょう。それがなにか?」

「いやなぁ。変な噂を外から聞いたんよ」


 ライ·ランスロットは、ニヤリと笑いながらフェオール·テニシアに言い放つ。


「何でも?フィリア王国に加担したのって、帝国の最高戦力〈帝将〉で?なんでも、懲罰のためにアマゾネス女王国を攻めるとか何とか。そんな噂話がフィリア王国を中心に飛び回っとったわ。ほな、さよなら」


 ライ·ランスロットは、ニヤニヤ笑いながら去っていった。対して、フェオール·テニシアはというと。


(え?)


 ライ·ランスロットの吐いた言葉を脳内で整理して冷や汗を流していた。

 

 〈帝将〉。西方大陸における超大国セブンス帝国が抱える災害レベルの力を持つ最高戦力。近年一人を除いて、魔王朝との小競り合いにて全員戦死した存在だった筈。


「あ」


 そこでフェオールは、西方大陸から流れてきた話を思い出す。何でも、新たな〈帝将〉が誕生し、皇祖帝の忠実な手足として動いているという噂を。何でも、茶色の仮面に茶色の外套を纏った戦士だとか。

 その瞬間フェオールは、落雷を受けたような衝撃を受けた。そして、会議室から急いで仕事部屋に戻りタンスの蓋を開ける。そこには、一枚の報告書が入っていた。フェオールは、個人的な部下として各国家に派遣している密偵がいる。その一枚の報告書は、フィリア王国に潜入させている密偵からの物だ。

 フェオールは、必死に報告書を読み返す。そして、探していた文面を見つけたのだった。


『···だが、普段見かけない人物が王都マバナを歩いていた。服装は、茶色の外套をきた人族の雄で、奇妙なことに茶色の仮面を被っていた。よって私は···』


 その文面を見てフェオールは確信する。今アマゾネス女王国を騒がしている侵入者が、〈帝将〉である可能性が高くなったことに。


「あ、ああ···!一体どうすれば」


 フェオールが床に崩れ落ちて、どうすれば良いか途方に暮れていた時、一人の警備兵が仕事部屋に飛び込んできた。


「お仕事中失礼いたします!侵入者です!急いでご避難を!」


 その言葉にフェオールは、最悪の可能性が頭をよぎり顔面蒼白となった。


因みにアマゾネス女王国の男軽視は、究極の女尊男卑をイメージしてみました。少し過激だったかな?


良かったならば高評価、ブックマーク登録、誤字脱字報告等、よろしくお願い致します。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ