図書館に行ってみた
誤字報告ありがとうございます。
◆黒岩島 サブダンジョン カゲマサside
頭が爆散したボテグリューの肉体をダンジョンに吸収させた俺は、牢屋から出て頭を捻る。
(さて、敵が“冥府教”だということがわかった訳だが。こらからの行動をどうしようか。取り敢えずフィリア王国内を散策して、“冥府教”構成員を探してみようかな?)
調べるべきは、“冥府教”の影があったアマゾネス女王国だろうが、敵国なので迂闊に近づけない。まず始めに安全に動けるフィリア王国内から探すのが無難か。
俺は、これからの行動方針を決めた後、牢屋に閉じ込められているアマゾネス女王国の兵士達を見る。彼女等は、皆大人しく牢屋内で座っていた。
「···えらく大人しいな。あのボテグ··ボ、ボテ、あー、忘れたが、あの老婆はあれだけ命乞いしていたというのに。なあ、どうしてだ?」
もう名前は思い出せないが、将軍である老婆が命乞いをしていたのに対し、兵士達の態度が素直だったので、思わず聞いてしまった。
聞かれたアマゾネス女王国の兵士は、一瞬キョトンとしながらも口を開く。
「···我々はお前に負けた。我等がアマゾネス女王国の戦士は、誇り高き強者を是とし貧弱で姑息、卑劣な弱者を否とする。お前の強さには、一種の信念が宿っていた。我々は、それに負けた。敗者は強者に従うのみ」
俺は、アマゾネス女王国の戦士の答えに首を傾げる。俺は、別に誇り高くないし信念もない。あるのは、ダンジョンに引き籠もって温々と暮らしたいという願い、またの名を欲望があるだけだ。俺のような下衆で卑劣な小物に誇りや信念など無い。無いったら無いのだ。
まあ、コイツ等の言っていることは、極論として弱肉強食ということなのだろう。弱者は業者に従うのが当たり前という価値観の元に動いているのだ。多分。
そこまで考えた俺は、誇りと信念判定がガバガバなアマゾネス女王国の戦士達に背を向けて歩き出す。
「お前たちには、暫くその牢屋の中にいてもらう。安心しろ、一日三食でしっかりと栄養のある食事をだすよう言ってあるから」
「栄養?···我等のような敗者に遠慮はいらぬのだが」
「遠慮じゃない。俺としては、今生命に死なれると困るし殺す理由が無い。極力人死は避けなければならなくてね」
人一人が死ねば、“冥府教”の求めている死の力とやらが溜まってしまう。奴等が目標としている数値まで貯められたら南方諸島から消えるかもしれん。そうなれば、俺の今までの努力は水の泡だ。
俺は、そこまで言って牢屋のある区画から出ていった。
「···変なお方だ。私達は、負けてしまった役立たずだというのに」
アマゾネス女王国の戦士達が呟いた言葉には、一切触れずに。
◆フィリア王国 王都マバナ カゲマサside
黒岩島から出てきた俺は、マヤを連れてフィリア王国の王都マバナを歩いていた。アマゾネス女王国との戦争が一段落したせいか、初めて来たときよりかは活気がある。まあ、まだ講和どころか休戦協定を結んでいないから危ういがな。
「どうだ、マヤ。なにか、怪しい奴は見かけたか?」
「いえ、御主人様。今の所そのような輩を見かけません。場所を変えられますか?」
「ふむ」
今の俺たちは、仮面姿ではなくミレンダお手性の変身セットを用いて姿形を変えている。俺は、黒髪黒目の青年でマヤは銀髪赤目の牛獣人メイドだ。なんとも、異様なふたりであろうか。現に周囲から目線を感じるし。
「いや、もう少し粘ろう。草の根レベルで潜んでる奴が居るかもしれんし」
俺は、そう言って“冥府教”探索を再開する。マヤも俺の後ろに続いた。
その後、数時間もの時間が経過したが結局“冥府教”の構成員を見つけることはできずに俺は、途方に暮れることとなった。
「やはり、アマゾネス女王国に行かねば駄目か?これは」
「だ、大丈夫ですよ御主人様!ファイトです!」
ガックリと肩を落とした俺にマヤは、励ますために背中を擦るが、俺の気分は乗らずトボトボと歩いていく。すると、一見の建物が目に入った。周辺の建物より大きく、かつ警備もそこそこ厳重な場所な所だ。
「アレは、なんだ?」
「アレは、一般向けに開放されている王立図書館ですね。見て行かれますか?」
「···そうするか。マヤが俺の気晴らしの為に提案してくれたんだし」
俺は、マヤを連れ立って王立図書館へと足を踏み入れた。
◆フィリア王国王立図書館 カゲマサside
王立図書館の内部は、戦争直後ということもあり閑散としていたが資料を読み漁っている人間がチラホラと見受けられた。
俺とマヤは、図書館の受付に身分証明証として冒険者ギルドの証を見せると、中に通された。
「中々に広いな。これだけあれは、気晴らしには持ってこいだな」
「そうですね。では御主人様。早速何か本を」
マヤに促されたので俺は、本棚に目を通し面白そうな本を探していく。すると、一冊の本が目に止まった。
「『始まりの勇者ユウキ』、かぁ。この世界で初めて召喚された勇者なんて、結構興味あるな」
俺は、『始まりの勇者ユウキ』というタイトルの本を手に取るとテーブルに置いてページを開いた。
『始まりの勇者ユウキ:第一章、召喚の時』
今より昔。遥か古き時代にて、七つある大陸の内ゼーヴィス王国という中央大陸を治める大国があった。ゼーヴィス王国は、創世神の御加護厚き人族や獣人族、エルフ族などが共同で治める国であり、古き魔導技術を持ち種族の垣根を超えて結成された国防連合軍は、無類の強さを持つ世界最強の軍隊であった。ゼーヴィス王国の国民達は、創世神の御加護の元益々発展し自分達の未来が明るい事を疑わなかった。
だが、ゼーヴィス王国の繁栄に影が指す。創世神と対をなす冥府神が、ゼーヴィス王国をよく思わず己の眷属を率いてゼーヴィス王国に宣戦布告したのである。これに伴い、創世神からのお告げを受けたゼーヴィス王国国王のアレス·ニル·ゼーヴィスは、国防連合軍を派遣したが冥府神の眷属達は恐ろしく強く、世界最強の国防連合軍は為す術なく撃退されていった。
困ったアレスは、創世神に知恵を求めた。対して創世神は、冥府神とその眷属による暴虐に心を傷められ国王にとある秘術を授けた。
その秘術こそ勇者召喚術。希望の魔法だったのだ。
俺は、そこまで読み終わり頭を抱えた。
(···いろいろ言いたいことはあるが、取り敢えず内容を整理しよう。まず七つの大陸だ。今は、大陸が三つしかない。四つ目は南方諸島だろうな。残り三つは何処にいったのだ?中央大陸ってなによ!次にゼーヴィス王国だ。種族の垣根を超えて共存していた多種族国家で、多種族で構成された国防連合軍は世界最強と。オマケに創世神とやらの加護があった、かぁ)
俺は、特徴的なワードの多さに若干気後れしながらも一番問題有りとしたワードに目を向ける。
(冥府神。問題はコイツだ。“冥府教”と名前被ってるし、絶対に何かしら関連あるよな?なかったら無駄骨だが、調べてみる価値はありそうだ)
俺は、心の中で結論付けると更にページを開く。
創世神より勇者召喚術を授けられたアレスは、早速国中の魔導師を集めて勇者召喚術を執り行った。そして召喚されたのが、始まりの勇者であるユウキ·カミシロである。ユウキ·カミシロは、当初戸惑われておられたが事情を説明するやいなや協力を申し出てくれた。
ユウキ·カミシロは、肉体こそ強かったものの戦いの無い世界から来たとおっしゃり頼もしい仲間を求めた。
呼び掛けに応じたのは、国王アレスの妹であり高名な魔導師のアテナ·ニル·ゼーヴィス。
エルフ族から生まれたハイエルフという突然変異種であり雷弓の名手と名高いタランテア·ミルム。
神速の槍使いであり、国防連合軍の一員として勇猛果敢に冥府神の眷属と戦っていた、狼獣人のアキレス·ウィーニング。
アキレスと同じく国防連合軍の一員で重戦士であり、同時にゼーヴィス王国一の鍛冶職人と名高いドワーフのヘパ·トース。
この五人であった。
ユウキ·カミシロは、仲間達を率いて王国を攻める冥府神の眷属達へ向かっていった。冥府神の眷属達は、ユウキ·カミシロを見て戦いの素人と馬鹿にしたがユウキ·カミシロの創世神より与えられた聖剣の力とアテナ達の奮闘で、冥府神の眷属達は撤退を余儀なくされたのだ。
冥府神の眷属達を撃退したユウキ·カミシロ達は、その後冥府神の眷属達との長き戦いに身を投じることになる。
俺は、ここまで読んで本を閉じた。このまま読んでいると日が暮れてしまうと踏んだからだ。
因みに『始まりの勇者ユウキ』の物語には、後六章ある。
『始まりの勇者ユウキ:第二章、憎悪の冥王』
『始まりの勇者ユウキ:第三章、憤怒の冥王竜』
『始まりの勇者ユウキ:第四章、冥府神の目覚め』
『始まりの勇者ユウキ:第五章、創冥大戦』
『始まりの勇者ユウキ:第六章、次元の魔女』
『始まりの勇者ユウキ:第七章、虚空の黒き殺戮者』
正直かなり興味があるのだが、流石に時間がないので断念した。
その後俺は、シレッと『始まりの勇者ユウキ』を借りて【ボックス】にしまい込み国立図書館をあとにした。
神話って、こんな感じで良かったのかな?(・・;)
最近この小説のストーリーと設定が面白いのか分からなくなってきて、消そうかなとも考えましたが、取り敢えず今の設定のまま完結目指して藻掻いてみます。
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