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アマゾネス女王国との初戦

難産でした。


◆フィリア王国 王都マバナ



 フィリア王国は、建国以来の絶体絶命な事態に直面していた。アマゾネス女王国による、突然の国交断絶からの武力攻撃。意表を突かれたフィリア王国は、何とか騎士団を集めて抵抗するも、僅か百にも満たぬアマゾネス女王国の戦士達の手によって半日程度の間に、村や町は次々と落とされていった。今や落ちていないのは、王都マバナただ一つである。

 フィリア王国上層部は、この事態に絶望と諦観を覚えたが、せめてもの抵抗でアークダール魔導国から輸入した魔道具、〈円形魔壁陣(サークルオブシールド)〉を使用。王都マバナは、たちまち光の壁によって覆われ、アマゾネス女王国の軍隊による侵攻を止めることに成功した。だが上層部は、これが滅びの引き伸ばしということを理解しているわけで···。





「一体どうすれば···」


 王都マバナにある王城にて玉座に座り頭を抱える老人がいた。老人の名は、アーネス·ポトス·フィリア二世。フィリア王国の国王にして、今まさに亡国の王にならんとしている人物である。


「陛下、お休みの所失礼致します」


 アーネスが頭を抱えている時、部屋に入ってきたのは文官らしき初老の男性だった。心なしかやつれているように見受けられる。


「おお、宰相か。で、マラヤはなんと?」

「書簡に寄りますと、エルザム神聖国の支援は取り付けられなかったようです」

「っ!···そうか」


 アーネスは、ある程度予想していた答えにため息を吐きながら玉座にドカリと座り込む。


「もう、もう終わりだ。何もかも全てが」

「···ん?こ、これは!?···陛下!諦めてはいけませぬぞ!」

「何だと言うのだ?まさか、セブンス帝国が戦力を送ってきたなどと吐かすのでは」

「そのセブンス帝国が我々に戦力を派遣すると!」

「なんだと!?」


 宰相からもたらされた情報にアーネスは、思わず腰を抜かしそうになるがどうにか堪える。そして、深く深呼吸をしながら宰相に問いかけた。


「ほ、本当か?なにか、偽の情報を掴まされたとか」

「書簡の端をご覧ください!間違いなく帝国の判子が押されております!」

「おお、おお!」


 アーネスは、目の奥に希望の光を灯す。自分達は、まだ見捨てられてはいなかったと確信したのだ。


「して、宰相よ。送られてきた戦力は、如何ほどか?」

「ええ、それが···一人です」

「ほえ?」

「帝国からは、たった一人の戦力と過分な程の支援物資が送られてくるとのこと」


 その言葉にアーネスは、暫し黙り込む。そして、十数秒経った時叫んだ。


「終わりだァァァ〜〜〜!やはり帝国は、我々を見捨てたのだァァァ〜〜!」


 アーネスは、涙ながらに絶叫する。挙句の果てには、絶望の余りその場に倒れ伏してジタバタと暴れだしてしまった。傍目から見れば、まるで自暴自棄になって暴れる子供のように見えたであろう。

 アーネスが自暴自棄になって暴れているその時、部屋の中に一人の兵士が駆け込んできた。


「し、失礼致しますゥゥ〜〜〜ッ!?あ、アーネス王ゥッ!?」

「ウワァァァ〜〜〜〜!?」


 部屋の中に入ってきた兵士は、ジタバタと暴れているアーネスを見て驚いてしまったが、暫くして再起動しコホンッと咳払いをして要件を伝えた。


「ああ、コホンっ!アーネス王にご報告したきことが」

「···なんだというのだ。〈円形魔壁陣(サークルオブシールド)〉が破られたか?」

「陛下!不吉なことを言わないで下さいませ!で、何なのだね?」


 アーネスは、居住まいを正して玉座に座り直す。正直手遅れと思うが言わないでおこうと決めた宰相は、アーネスの不謹慎な言葉にツッコミを入れる。内心そうじゃないかと考えたのは秘密だ。だが兵士から上がった報告は、二人の予想を遥かに凌駕するものだった。


「そ、それが、突如帝国からの増援と名乗る仮面の人間達が、またたく間にアマゾネス女王軍を無力化、指揮官と思わしき老婆を連れて王にお目通りしたいと」

「「ええェェ〜〜〜〜!?」」


 兵士からの報告にアーネスと宰相は、目玉が飛び出るほどに目をひん剥き、口をあんぐりと開けた。


 














 時は、少し遡る。



◆王都マバナ 南門前 カゲマサside



 黒岩島から【グループフライ】で出た俺達は、フィリア王国の王都とやらの上空にいた。アマゾネス女王国軍を生で観察するためである。


「あれがアマゾネス女王国軍か」


 俺は、眼下にいる複数の人影に目を向ける。そこには、王都マバナを覆う光の壁に攻撃を加えている数十人の女戦士達がいた。よく観察してみると、筋骨隆々でビキニアーマーを着用したイメージ通りの女性達なのは間違いないが、長身だったり小柄だったり、褐色肌だったり色白だったり、挙句の果てには犬耳が生えていたり蜥蜴の尻尾が生えていたり、蝙蝠の羽が生えていたり下半身が馬の奴もいたりと実に多彩だった。


「···って、巫山戯るなァァァ!!」


 そこまで思考して俺は、思わず怒鳴ってしまった。空中にも関わらず地団駄を踏んだ。


「ここまで奇天烈な種族とは聞いてねぇぞ!?なんで人間に羽が付いてるんだ!何で下半身が馬なんだ!ケンタウロスじゃあるまいし!一体どんな進化を辿ればあんな生物になる!」


 俺は、アマゾネスの余りの奇形に驚いたのだ。俺から見れば、イメージにあるオードソックスなアマゾネスとかけ離れた姿が異質に思えた。


 もしこれを過去に敵対したダンジョンマスターが見たら、全員がお前が言うなと叫ぶだろう。カゲマサのダンジョンには、常に異形のモンスターが徘徊しており、人工魔人というアマゾネス以上の異形達まで存生み出しているのだ。


 閑話休題。

 俺は、頭を掻き毟りながら咳払いをすると、背後にいるシドルとナタリアに振り向く。因みにジレイクは、いつもどおりに海賊家業兼情報収集。マヤは、黒岩島にて部下の統括に虜囚達のメンタルケア、部屋の掃除などをしている。


「シドル、ナタリア。お前等二人は、フィリア王国軍の連中を守れ。誰かと問われたら帝国からの応援とでも言っとけ」

「「御意!」」

「よし、行くぞ。さっさと終わらせる!」


 俺の言葉を皮切りに俺達三人は、降下を開始する。俺はアマゾネス女王国軍に、シドルとナタリアはフィリア王国軍の元に降りていった。





 シドルとナタリアと別れた俺は、アマゾネス女王国軍の目の前に降り立つ。


「聞くぞ。お前達がアマゾネス女王国軍で相違ないか?」

「っ!?誰だ貴様は!?敵襲ゥ〜!敵襲ゥ〜!」


 分かっていたがやはりこうなるのね。まあ、態々目の前に降り立った俺もアレだけども。

 俺がこう考えている内に、複数のアマゾネスに取り囲まれていた。


「誰かは知らないが、このまま本陣に通すと思うな!」

「たった一人で我相手取ろうなどと、片腹痛いぞ下郎!」

「貴様男だな?ならばひっ捕らえて、下級民共の種馬にしてくれる!」


 アマゾネス女王国軍の戦士達は、殺気と嘲笑を浮かべながら武器を構える。それに対して俺は、自然体のまま構えた。


「ふん、下郎かどうか。直接戦って確かめやがれ。奇天烈奇形集団!」


 俺は、そう言ってアマゾネス達に襲い掛かった。






 そこからは、まさに蹂躪だった。アマゾネス達は、自らの得物を握りしめて敵である俺をを仕留めんと襲いかかる。が、俺はヒラリヒラリと躱しながら的確にアマゾネス達の顎を超高速で打ち抜き、脳を揺らして昏倒させていく。アマゾネス達は、仲間が次々と昏倒していく光景を見ながらも果敢に向かってきた。俺は、若干面倒と思いながらもまた一人、また一人と昏倒させていき、計五十名のアマゾネスを昏倒させた。

 俺は、昏倒したアマゾネス達を次々に【ゲート】で黒岩島にある牢屋に送っていく。そして、暴れ出さないように〈魔封じの手錠〉やオリハルコン製の鎖付きの首輪で拘束しておいた。


 粗方の作業を終えた俺は、今しがた目の前に現れた老婆を見据えて呟く。


「さて、やっと親玉か。お前が指揮官だな?」

「よ、よくも儂の栄達を邪魔しおって!」


 どうやら老婆は、俺に進軍を止められて苛立っているようだ。栄達と言っていたから、国を落とした手柄を持って出世したいとかそんなものかな?


「許さぬ!許さぬゾォォォォ!」


 ん?なんか、この老婆巨大化してないか?

 俺の疑問は、目の前の老婆の姿を見て解消された。確かに巨大化している。ヨボヨボの筋肉が肥大し見上げるほどの巨漢へと変貌していくではないか。


「コノ儂、女王軍将軍ボテグリューヲナメルナァァァ!!」

「いや、舐めとらんけど」


 俺は、別に指揮官を舐めてなどいない。ただ老婆なのでどうやって無力化するか悩んでいただけだ。それを舐めているという?好き勝手いうが良い。


「死ネェェェェ!〈剛力鬼拳(オーガナックル)〉!!」


 ボテグリューと名乗った老婆は、肥大した筋肉によって巨拳と化した拳を振るう。


「おお、凄そうだな」


 俺は、そんな軽い感想を吐きながら、ボテグリューの放つ拳を見ていた。


 背後から。


 ボテグリューが〈剛力鬼拳(オーガナックル)〉を放った時点で俺は、ボテグリューの背後に立っていたのだ。恐らくボテグリューが見ている俺は、残像だろう。多分。年故に耄碌した訳ではない筈だ。

 やがてボテグリューの放った〈剛力鬼拳(オーガナックル)〉は、俺の残像をすり抜けて地面に叩きつけられた。そして轟音を立てながら陥没する地面。だがそこに俺はいない。


「ッ!ドコダ!ニゲタノカ!」


 ボテグリューは、陥没した地面に俺の死体が無い事に気付いて辺りを見渡している隙に、俺はボテグリューの眼前にスキル《俊足》で移動する。ボテグリューから見たら、いきなり俺が目の前に現れたと感じているだろう。


「スキルなんか要らないな。これは」


 俺は、そう呟いた後ボテグリューの鳩尾にアッパーを決めた。


「オグォォ!?」

「次はこれかな?」


 アッパーを決めた俺は、直後に殴られた衝撃で中に浮かんだボテグリューの脚を掴む。そしてそのまま、振り回した。


「ははっ、アマゾネスハンマー投げってか!」


 散々振り回した後、俺は上空に向かってボテグリューを投げ飛ばす。上空に放り投げられたボテグリューは、何が起こったのかわかっていなかった。


(何故儂ガ、ジメンヲミサゲテイルンダ?)


 殴られたことはわかった。だが、一体何時ここまで投げられた?

 ボテグリューは、そんな疑問を頭に浮かべながらもどうにか空中でバランスを取ろうとする。


「はい、踵落とし」

「ッ!?ガァッ!?」


 まあ俺がいる限り、有利な展開には持ち込ませないがな。

 そんな俺の意思が籠もった踵落としで、ボテグリューの頭蓋骨から軋む音がした。そのままボテグリューは、地面に落下。そして、地面に衝突し陥没していた地面が更に陥没する。


(コンナ、コンナ、こんな、馬鹿な···)


 ボテグリューは、全身を襲う痛みに苦しみながら気を失った。

 俺は、気を失った老婆を見て薄く笑う。


「フィリア王国への土産にはなったな」


 俺は、そのまま老婆の頭を掴み持ち上げる。そして、【フライ】で空中に浮かび、王都マバナへ向かった。


さらっと流してしまった。やはり、戦闘描写って難しいわ。


良かったならば、高評価、ブックマーク登録、誤字脱字報告等、よろしくお願い致します。

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