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南方諸島北西部、進出③

難産でした。


◆黒岩島 お楽しみ部屋 カゲマサside



 海賊の首領であったヨクブーを爆殺した俺は、打ち捨てられている犬獣人の女性に近寄る。だがそこにマヤが待ったを掛けた。


「御主人様。敵の返り血が付いております。ここは私にお任せを」

「え?お、おお」


 マヤにそう言われた俺は、服のあちこちに血飛沫の跡が残っているのを発見する。対して気にならなかったのだが、マヤはその血の跡も気になるらしく【洗浄(ウォッシュ)】【乾燥(ドライ)】という魔法で血の跡を綺麗サッパリ落としてしまった。


「おお〜、すげぇ。本当にシミ一つねぇな。ありがとう」

「お役に立てて光栄にございます。御主人様」


 マヤは、頭を下げてお礼を言う。だが平静を装いながらも尻尾はブンブンと暴れており、頬は若干赤くなっていた。

 そんなことなど露知らず、俺は犬獣人の女性の側に近寄る。そして《鑑定》を発動した。



名前 レト·リバー

種族 犬獣人

職業 元農民 虜囚

レベル 3

ランク F

スキル 草刈り



(弱っ)


 俺は、思わずそう思ってしまう。戦乱の続く南方諸島でこのステータスは弱すぎる。まあ、だからこそ海賊に捕まったのだろうが。というか、名前レト·リバーって。完璧にゴールデンレトリバーのレトリバーじゃん。髪が黒なのにゴールデンレトリバー?

 俺があまりの弱さと名前の単純さに絶句していると、レト·リバーがその場から起き上がる。そして爆殺されたヨクブーの死骸をみると、若干顔を青くしながらもヨロヨロと立ち上がった。


「あ、貴方が奴を?」

「ああそうだ。獲物を横取りしちゃったか?ならすまん」


 俺は、顔を青くしたのが復讐相手を取られたからと解釈。早急に謝罪した。対してレトは、いきなり謝られてオロオロしている。見かねたのかマヤが一つの提案をした。


「御主人様、今は虜囚となっている女性達を開放なさっては?何時までも閉じ込めたままですと、彼女達も不安でしょうし」

「ふむ、わかった。さて、そこの犬獣人さん。少し待っててくれ給え」

「え、あ、はい!」


 レトは、慌てて返事をする。何故か若干冷汗をかいていた。まあ対して気にならないので無視する。

 俺は、次々と檻を王級魔人としての馬鹿力でへし折り女性達を開放していった。


「しっかし、本当に巨乳の奴が多いよな。ヨクブーの趣味なのか知らねぇが、女は胸だけじゃなかろうに」

「ヨクブーは、胸と顔でしか女性を判断出来ない愚物だったのでしょう。手下も同様でしたし」

「まあそうだな。さて、さっさと作業に取り掛からねぇと···ん?」


 俺は、この島に来た本来の目的である拠点の確保の為に作業を行おうとした所、開放した女性達が此方に近寄ってきた。女性達の顔は、何故か全員恐怖と覚悟が入り混じった表情を浮かべている。

 俺は、何事かと彼女等に問いかけようとした所、女性達の代表者なのか二人の女性が進み出る。片方が気品を感じさせる金髪縦ロールの女性、もう片方がボロボロながらも修道服を着た長身の銀髪エルフ女性だった。


「誰だお前等」

「···彼女等のまとめ役をやっておりました、シェヘラリーゼ·ターボルと申します」

「し、シェヘラリーゼの補佐をしておりました、メルナ·エルーメンと申します!」

(ふむ、シェヘラリーゼとメルナねぇ。二人ともヨクブーが取りそうな巨乳美人だな。まあ、どうでも良いが)


 俺がそんなことを考えていると、二人は俺に向かって頭を下げてきた。そして、シェヘラリーゼが口を開く。


「この度は、私達をお救い頂き感謝の言葉もありません」

「いや、俺達がここに来たのは偶然で」

「それでも、私達を救って頂きました。本当にありがとうございます」

『ありがとうございます!』

  

 シェヘラリーゼがその場に土下座をして感謝を述べると、後ろにいた女性達も続いて土下座した。レトもしていた。


「あ、ああ、うん」

「そんな大恩ある貴方様に大変恐縮なのですが、我々の頼みを聞いてほしいのです」

「頼み?」


 全員が恐怖しながらも覚悟を決めている顔をしているのに関係あるのか?

 俺がそう考えていると、シェヘラリーゼは土下座をしながら話し続ける。


「本来こんなことをは、唯の八つ当たりでございます。それを貴方様に押し付けるのは、余りに無礼。ですが」


 ···なるほど。わかったぞ、コイツ等のやろうとしてること。俺にも心当たりがある。主にレスキュー隊員なら経験しているのではなかろうか。


「ですが何とか、受け止めてくださいまし。受け止めた後、煮るなり焼くなりお好きにすればよろしい」

「ん、いいぞ?」


 俺は、あっけらかんと承諾する。シェヘラリーゼは呆気に取られた顔になり、マヤは顔を強張らせた。


「御主人様。彼女等は恐らく」

「わかってるよ、マヤ。だが、こうでもしないとコイツ等納得しなさそうだもん」


 俺は、地球での経験でわかる。例え理不尽でも吐き出さなければ、心の平穏を保てない輩もいるのだ。そう考えたのか俺は、女性達に向けて腕を広げる。


「さあ、遠慮無くどうぞ?」


 俺の言葉にシェヘラリーゼは、生唾を飲み込んだ後、俺の胸元までに近寄る。そして。


 俺の頬をぶん殴った。


「なんで」


 続いて放たれる二撃目の拳。だが、所詮は何の訓練も積んでいない女性の拳、全く痛くはない。


「なんでもっと!早く来てくれなかったのですか!」


 シェヘラリーゼの罵倒と共に振るわれる拳は、俺の頬を確実に捉える。だが、殴ったシェヘラリーゼの腕から血が漏れ出た。俺の体が固すぎて彼女の体が逆に傷ついているのだ。それでもシェヘラリーゼは、殴るのを止めない。


「私は怖かった!多くの虜囚が海賊によって慰み者にされ、孕ませられ、殺されていった!だから自分が標的にならぬように、虜囚の悪口を告げ口した!私は、彼女等を売ったのよ!?」


 シェヘラリーゼの言葉は、早く助けに来なかった俺に対する罵倒と同時に自分の行いに対する懺悔のようだった。


「彼女等を売りに売って、結局はその場しのぎにしかならなくて!でも、止められなかった!止めたら私が犯されるから!なんで、もっと早く来てくれなかったの!?そうすれば、あんなに売らずに済んだのに!ねぇ、答えてよぉ!!」


 シェヘラリーゼの言葉は、時間が立つにつれて言葉の様相を無くしていく。涙を流しながら俺の頬を殴り続ける。

 俺は、為すがままに殴られ続けた。俺としては、このまま吐き出してもらって恨み辛みを発散してもらったほうが良いのだ。溜め込まれて暴発されたら、思わぬ不利益を被る可能性がある。それは、避けなければならないのだ。


 シェヘラリーゼが俺を殴り続けて十数分後。


「はぁ、はぁ、はぁ」

「シェヘラリーゼさん?吐き出し終わったかな?」

「はぁ、はぁ。··ええ、ありがとう、ございます」


 シェヘラリーゼは、手を血まみれにして顔を赤くしながら倒れ込み、肩で息をしていた。何かエロい。


「さて、まだまだいるなぁ。さあ、バッチこい!」


 俺は、後ろに控える女性たちに向けてそう宣言した。


 












 俺が他の女性達によって罵倒され殴られ続けて三時間経過。俺の眼前には、俺を散々殴り続けて罵倒し続けた結果、疲れ果てて眠ってしまった女性達がいた。


「それにしても、実に多彩だったな。海賊共もよく揃えられたものだ」


 俺は、もはや名前も忘れた海賊を褒める。貴族令嬢らしきシェヘラリーゼや修道院勤めのメルナ。他にも兵士、学者、魔導師、漁師など様々な女性の一撃を俺は受け続けた。


「まあ、俺にとっては蚊に刺された痛みにも劣るがな」


 俺は、殴られ続けた頬を擦りながら女性達を横目に改造されていく黒岩島内部を見ながら、笑みを浮かべる。


 俺が殴られ続けている間、黒岩島に残っていた海賊残党を捕らえ尽くした配下の迷宮海賊艦隊は、俺が予め渡しておいたサブのダンジョンコアを海賊アジトの最奥へと設置。海賊残党が隠していた財宝を根こそぎ奪い取った後、捕えた海賊を宙釣りにし〈魔封じの手錠〉で拘束した。

 配下の迷宮海賊艦隊は、海賊を宙釣りにした後黒岩島の改造に着手する。海賊のアジトであった洞窟をドリルやツルハシで掘り進めて居住区画や倉庫区画、防衛軍区画、攻略軍区画などの区画を整理し、元大工の魔人達が海水に強い木材を使って部屋を整えていく。更には、鍾乳洞を海賊艦隊が入れる軍港やドックに変えたり要らなくなった土などを持ってきて海を埋め立てたりした。

 このような過程を踏みながら黒岩島は、海賊のアジトであった小島から俺にとっての南方諸島進出の足がかりの為の要塞兼ダンジョンと変貌しつつあった。


「さて、さっさとシェヘラリーゼ達を部屋に放り込んでおこうか。ダンジョン化だってやらなきゃいけないし」


 俺は、倒れているシェヘラリーゼ達を急造で造らせた大部屋に放り込むと、最奥に作られたサブコアルームに入っていく。そこには、マヤやナタリア、シドル、ジレイクといった魔人達の幹部が揃っていた。


「よお、待たせたな」

「虜囚達のメンタルケア、ご苦労様でした。後でシュークリームとカフェオレをご用意しますね」

「ありがとよ、マヤ。···ホイ」


 俺は、サブのコアを使って黒岩島をまるごとダンジョン化させた。


「よし。これでこの島は、俺達の島だ」

「いよいよですな」

「〈冥府教〉の奴等に一杯食わせるんだろ?腕がなるねぇ!」

「私は、主君に従うだけだ」


 そうだ。この島を取ってようやく始まる。南方諸島での〈冥府教〉撲滅作戦がだ。


「まずは、フィリア王国を助けてからだが、腹括れお前等!絶対に生きて帰るぞ!」

『オオオオオオ!!』


 俺の叫びに魔人達は、雄叫びを上げた。


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