女王国と帝国
短いぞよ。後難産でした。
◆南方諸島 アマゾネス女王国王城
南方諸島西部にある比較的大きな島、アマゾーン島。その島は、広大なジャングルに覆われており未開の地域が数多く存在する場所である。そんな島を統治しているのは、南方諸島内で有数の勢力を誇るアマゾネス女王国だ。
アマゾネス女王国は、代々アマゾネスと呼ばれる女しかいない種族から最も優秀な者を女王を選び政治を行う国である。その為か国内でも実力主義に基づいて地位選定が行われているという魔王朝と似た気質の国だった。しかし逆をいえば、優秀で無い者は立場がないわけで。
「一体どういうことであるか?」
アマゾネス女王国の王城内にて、一人の女性が跪く老婆を冷たい瞳で見ながら問い詰めていた。老婆は、顔を青くしながら小刻みに震えている。
「貴女は言った。フィリア王国なんて一日で落とせると。余は、その言葉を信用し貴女に軍を貸与した。なのに今日で三日経つ。フィリア王国は、未だに落とせていない」
その言葉に老婆は、顔を真っ青どころか真っ白にしながら女性の言葉を聞いている。その様子を冷たい瞳で見ながら女性は言葉を続けた。
「もう一度言う。一体どういうことであるか?返答を許す」
「は、はっ!」
女性の許しに老婆は、返事をして顔を勢いよく上げると汗を流しながら口を開いた。
「こ、この度は、女王陛下よりお借りした軍がありながらこのような体たらく、申し訳ありませぬ!しかしこれには訳がございます!」
「訳とは?」
「はっ!フィリア王国の下郎共は、小賢しくもアークダークから輸入した魔導具を使って街一帯に結界を張ったのです!その結界の破壊に戸惑っておりまして日時が遅れてしまいました!」
老婆は、真っ白だった顔を青色に戻しながら力説する。だが女王と呼ばれた女性は、未だに冷たい瞳のままだった。
その様子に気が付いた老婆は、慌てて顔に笑顔を貼り付ける。
「し、しかしご安心くだされ!その結界ももう間もなく破壊できましょう!女王陛下からお借りした軍隊も未だ健在!結界さえ破壊できれば、あっという間に殲滅できるかと!」
老婆は、そう答えて笑顔を貼り付けたまま女王の顔色を伺う。女王は、冷たい瞳で老婆を見る。余りにも冷たい瞳に老婆は失禁しそうになってしまうが、根性で耐えた。
「···よかろう。そう言うのならばやってみよ」
「っ!ははぁ!」
女王は、老婆に向けてそう言い放った。その言葉に老婆は、真っ青な顔色から喜色満面といった表情になり頭を下げる。だが女王は、冷たい瞳を細めながら口を開いた。
「だが期限は一日。今から一日でフィリア王国を落とせ。さもなくば」
「さ、さもなくば?」
「もはや、この世に姿形が残るとは思わないことだ」
女王からの宣告に老婆は、喜色満面から一気に真っ青な顔色へと戻り平伏する。そして大急ぎで王城を後にした。
その姿を見ていた女王は、若干の呆れが混じったため息を吐き出す。それと同時に二人の女性が部屋に入って来た。
「陛下、如何でしたか?」
二人の女性の片割れ、紫色の法衣を纏い茶色のセミロングヘアを揺らしながら入ってきた、如何にも文官といった女性が問いかける。
「アレは駄目だ。もはや我がアマゾネス女王国に必要な人材ではない。宰相、アレの資産を全て差し押さえよ。それとフィリア王国攻略の成否問わずアレを始末出来るよう〈首刈り隊〉を派遣せよ」
「はっ」
宰相と呼ばれたセミロングヘアの女性は、恭しく頭を下げる。続いて女王は、宰相の隣の女性にも命令を下す。
「女王軍総司令。貴殿は万が一アレが生き延びた場合に備え、島内全域に憲兵隊全部隊を配置せよ。絶対に取りこぼすでないぞ」
「ははっ!一片たりとも見逃しません!」
女王軍総司令と呼ばれた高身長の女性は、ビキニアーマーを身に着け胸についた小麦色の肌に胸についた巨大な果実と長い赤髪を揺らしながら答えた。女王は、その答えに満足しながら立ち上がる。
「余は、これから離れに赴く。暫くの政務は宰相に任せる。頼んだぞ?二人共」
「「はっ!」」
二人の返事を聞いた女王は、満足そうに頷きながら部屋から去った。
◆セブンス帝国帝都セプト 秘密の庭園
アマゾネス女王国にてそのようなやり取りが行われた同時刻。セブンス帝国の皇祖帝にしてダンジョンマスターであるナナ·セブンスは、ロロ経由でセレス·ミレーリアから渡された手紙を読んでいた。
「ふ〜ん、フィリア王国の救援ねぇ」
「敵対国は、アマゾネス女王国。あの女王が統治している国家ですね」
「分かってるわ。それにしても“冥府教”が関わっている南方諸島にちょうどよいタイミングで介入出来る案件、誘われてるのかしら?」
「ですが、フィリア王国に“冥府教”の影はありませんでした。恐らくは偶然かと」
「そうだと良いけど」
ナナは、懸念をしていた。こちらから介入しようかとしていた矢先にちょうど良いタイミングで舞い込んできた案件。どうも出来すぎており“冥府教”の策略かと疑ってしまう。ロロは、偶然としているが不安は拭えなかった。
「はあ、あまり気が乗らないけどまた彼に頼みましょうか」
「カゲマサ殿ですか?」
「ええ。彼ならある程度の成果を持って帰れるでしょう。今までの功績がありますし」
「しかし彼には、新エルザム神聖国の統治やダンジョン管理などの仕事がありますが」
「そこは報酬で釣るしかないわね。新エルザム神聖国は、セレスちゃんに代行させてるようだから大丈夫。後は、彼のダンジョン周りに複数の護衛を配置しましょう。これなら安心してくれるかしら」
そしてトントン拍子に話は進んでいく。結局カゲマサの南方諸島派遣は、決定的になってしまった。
「ま、こんなところでしょう。ああロロ?彼を連れて来てくれる?」
「はっ」
ナナの命令を受けたロロは、頭を下げながらその場から転移した。
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