防衛作戦後、各々の反応
色々とゴチャついてますが、許してください。
設定追加報告。
死霊公の動く理由→横領で処刑された為にセブンス帝国への逆恨み。元帝国軍魔法連隊長。
◆ダンジョンコアルーム カゲマサside
パークスとハンネを人間牧場へ案内し業務の説明をした後、俺は〈六将〉を集めて会議を行っていた。
「それで、もう残存する敵戦力はいないんだな?シロ」
「はっ、我々の確認する限り発見出来ませんでした。もはや敵戦力は残っておりません」
「そうか」
俺の問いに〈六将〉を代表してシロが答える。俺は、その答えに満足しながら問いを続けた。
「では、捕えた輩はどうした?」
「はっ、愚かにも我がダンジョンに攻め入った者共は、肉食のモンスターの餌もしくは人工魔人の素体としております」
「ならば良し。決して無駄にするなよ?」
「心得ております」
俺は、シロの報告を聞いてホッと息を吐き出す。ここまで大規模な攻勢などダンジョンバトル以外ではなかったので、柄にも無く緊張してきたようだ。
「お前等、これにてダンジョン防衛作戦は終了だ。ダンジョンの警備を通常パターンや転移罠の位置を戻せ」
「はっ!」
俺は、ここで防衛作戦の終了を宣言する。色々とあったけど及第点···と言いたいが、少し不安なので〈六将〉のメンバーに問いかける。
「ところで、今回の防衛作戦で反省すべき点はあったか?ゴブイチから答えてくれ」
「えっ?オイラからっすか?」
振られたゴブイチは、少々戸惑いながらも席から立ち上がり口を開く。
「え〜っと、オイラからは特に反省するべき点はないっす。皆頑張って撃退してくれたっすから。オイラの出番は殆どなかったすよ〜」
「う〜、そうか。ワイズはどうだ?」
というのが、ゴブイチの弁。続いてワイズだが。
「私はね!襲い掛かって来る奴等み〜んな溶かしてやったんだよ!すごいでしょう?ねぇ、お父さん!」
「凄いとも。よく頑張ったな、ワイズ」
「ニヘヘ〜」
ワイズは、少女の姿でクネクネしながら喜ぶ。あの様子だと相当楽しかったようだな。さて、次は。
「ゼクトはどうだった?」
「···敵の逃亡への対処に穴があったかと。申し訳ありません。我が部下の鍛錬不足でした。この命、捧げる覚悟で御座います」
あ〜、あのガルシア・トレービーの件を思い出したか。
ガルシア・トレービー。表向きは、ランクB冒険者としてダンジョンに潜ってきたがその実、ロシフェル聖王国の一等級聖騎士という主力級の存在だった。ロシフェル聖王国に二十人いる一等級聖騎士は、皆ランクAという大国の主力に恥じない存在。ウチの下級幹部〈百魔〉の上位クラスで押し留められただけでもあっぱれだと思う。
(今思えば、〈百魔〉で一等級聖騎士を倒すなんて、無理があったな。失敗失敗。ゼクトを送るべきだったぜ)
俺は、ガルシア・トレービー戦における采配ミスのことを心の中で反省しながら、ゼクトに向けて口を開く。
「命を捧げる必要はない。効果を逆転させる結界などどうやって防げばよいかわからん。精々魔法を封じるエリアを設置するだけだ。気にすることはない」
「···しかし」
「ならば、後で反省文を書いて提出しろ。それが罰だ」
「···御意」
ゼクトは、渋々といった空気を出しながら着席する。そして、となりに座っていたキラーが立ち上がった。
「報告します!我が二十一から二十五階層までの反省点としますと、いささか欲が暴走気味なことかと!主に悪魔系統のモンスターなのですが、誰が殺すのか誰が食べるのかという言い合いで喧嘩になってしまいまして」
「なるほど、欲望の発散が必要なのか。では、そこらの犯罪者をとっ捕まえて発散用に送るか?」
「欲望を発散させるには、ちょうど良いかもしれませんね」
「よし、適当な盗賊を捕まえて送ろう。それを好きにさせてやるから我慢してくれ」
「ははっ!」
キラーは、俺にお辞儀をした後着席した。しかし欲望の発散か〜。悪魔系統のモンスターに監視を入れるべきか?
俺は、そう考えたがその考えを一旦脇においてクロへ目を向ける。
「我が階層では、これといった問題点は御座いませんでした。しかし〈狂星〉オロチによる環境破壊の規模が凄まじく、至急復旧を願います」
「わかった。後で再生させておく」
クロは、淡々と述べたあと着席する。やはり、あのオロチの息吹の破壊範囲が広すぎたか。多少のDPで済むとはいえ、あまりDPを使わせないでほしいなぁ。
俺は、そう考えた後にシロへと目を向ける。
「では、シロ。お前はどうだ?」
「はっ。私としましては、やはり幹部クラスだけではなく、兵士や上級兵士の底上げも重要だと考えます。かのダンジョンマスターシャンガンに相対した戦闘天使達は、軒並み討ち取られてしまいました」
「···ああ、そうだな」
ダンジョンマスター、シャンガン。アレはヤバかった。アイツの実力は、下手すれば〈狂星〉中位あたりでも余裕で通じる。実際に奴と戦ったミカエルがランクA+のレベル66で中位クラスだ。それと互角以上の戦闘を繰り広げるのだから凄まじい。
(しかも、それほどの実力を持っていながら、魔王朝での地位はそれほどでもない。一体どれほどの魔境なのだ、魔王朝は!まったく行きたくないぞ!)
俺は、内心魔王朝への恐怖を吐き出し、未だ見ぬ魔王朝への悪感情を募らせた。だが悪感情を募らせている場合じゃないと気合を入れ直し、仲間達に口を開く。
「おほん、お前達の反省した点は良くわかった。今後、その反省を活かして我がダンジョンのさらなる発展に尽くそう」
「「「「はっ!」」」」
「はいっす!」
「は〜い!」
「では、これにて会議を終了する!各員持ち場に戻り、業務を再開せよ!」
仲間達の返事を聞いて俺は、その頼もしさに心を震わせながら会議の終わりを宣言した。
◆ロシフェル聖王国 聖都イスリア聖王政府 会議室
ロシフェル聖王国が誇る最大都市にして首都の聖都イスリア。その中心に位置する聖王国政府の会議室にて、十数人の人間達が揃っていた。その人間達は、円卓に座り一人の聖騎士の報告を聞いている。報告を聞き終わったところで一人の青年が聖騎士に口を開いた。
「して、その報告は本当かな?ガルシア・トレービー。我がロシフェル聖王国が誇る人類の盾である一等級聖騎士よ」
「はっ!聖神様に誓って真実であります!ルイ・ロシフェル・ホンジョウ陛下!」
「そうか···」
ルイ・ロシフェル・ホンジョウと呼ばれた黒髪黒目の青年は、その報告に腕を組み目を閉じる。
陛下と呼ばれた時点でお察しだろうが、このルイ・ロシフェル・ホンジョウこそがロシフェル聖王国の聖王であり各地に点在する聖堂教会のトップを務める存在である。だが、彼の逸話は他にもあった。ホンジョウという名前の通り、彼は約千年前に異世界から召喚された聖神の使徒である勇者、ユウト・ホンジョウの子孫なのだ。
彼は、産まれた後に勇者の子孫という肩書に見合う活躍をし続けた。曰く、寒さと飢えに苦しむ民に寒さを和らげる結界を作り出し、多くの食べ物を与えて食べ物の保存方法を教えた。曰く、荒れ果てた廃村を建て直し人々を呼び込み瞬く間に一大都市とした。曰く、村を襲う盗賊を説得し改心させた等々。これらの活動の功績と勇者の子孫という肩書で、彼はどんどん聖堂教会で頭角を現し聖王への座へ就いた。
「···わかった。君の報告を信じるよ。しかし、困った事になったな」
「陛下!これは、困った事ではありませぬ!一大事ですぞ!」
腕を組み首をひねるルイに声を上げるのが、この国における軍部のトップであり一等級聖騎士筆頭のセルゲイ・ベランズールである。セルゲイは、ルイに向けて話を始めた。
「いいですかな陛下!我々一等級聖騎士は、〈神罰者〉以外でロシフェル聖王国における最精鋭!それらが一人でも欠ければ各地の守護はおろか本国の守備も疎かになるのですぞ!それらの戦力をどこぞの田舎ダンジョンに割くなぞ一体何を考えておられるのですか!」
セルゲイは、軍部のトップとして戦力の低下を危惧していた。この世界は、常に戦乱で溢れている。ついこの前にマーロイにある聖堂教会支部が何者かに襲われ壊滅し、聖職者全てが殺されてしまった。南方諸島も、常に戦乱が巻き起こるわ西方大陸でも散発的に戦争が起こるわで平穏になった試しがない。
そんな中で平和を維持するためには、強大な軍事力による抑止力だ。強大な軍事力があれば、敵は攻めるのを躊躇して迂闊に攻められなくなる。それなのにこの聖王は、あろうことか貴重な一等級聖騎士を帝国の田舎ダンジョンへ派遣し、死なせかけたというのだ。
そんなセルゲイの言葉に肝心のルイは、困ったような顔して口を開く。
「マリアンナがね、あのダンジョンは危険だって言うから派遣したんだ。マリアンナは、あのダンジョンをよく知っているからね」
「それだけですか!」
「ああ、それだけさ。僕はマリアンナを信頼している。それにマリアンナは、酷く真剣に話していたんだ。そんなマリアンナは見たことが無かったから、それほどかのダンジョンを危惧していたんだろうね」
ルイは、隣に座るマリアンナを見ながら話していく。その顔は笑顔だったが、その目には真剣な雰囲気が伝わってきた。
「だ、だからといって一等級聖騎士を勝手に動かし、失いかけたのは」
「うん、それは悪かったと思ってる。でも、収穫はあったさ」
「なんですと?」
「あのダンジョンは、ロシフェル聖王国の精鋭である一等級聖騎士を跳ね除けるほどの力を有するって事さ。ガルシアの戦ったモンスターやマリアンナの戦ったダンジョンマスター。はっきり言って、生まれて一年そこらで整えられる戦力じゃない。それが分かっただけでも収穫さ」
その言葉にセルゲイは、言葉を詰まらせる。聖神の代わりに神罰を下す〈神罰者〉と戦い生き残ったという戦歴は、セルゲイの口を閉ざすには十分だった。
「でも、セルゲイ君の言うことも理解できる。あのダンジョンへ過度に干渉するのは止めよう。ガルシア君には、改めて違う任務を出すよ」
「···了解いたしました」
そこまで言われたらセルゲイは、何も言えない。その意志を受け止めるだけだ。
「さて、セルゲイ君は黙ってくれたが、他に言いたいことがある者はいないかい?いないなら」
「陛下、今後かのダンジョンにはどういった姿勢を?下手に人員を送ればどうなるか」
そう言ったのは、聖王国の外務大臣だ。恐らく今後の行動で帝国との関係が悪化しないか心配しているのだろう。セブンス帝国は、聖王国と並ぶ大国。歴史では、聖王国よりも倍の二千年を誇る。そんな大国との関係を心配するのは、外務大臣としては当然といえば当然だ。
「そうだね、外務大臣。下手に諜報員を数多く送れば、帝国の心象も悪いだろう。ここは、聖王直轄の諜報員を一人だけ送り込むだけにするさ」
「そ、それならば」
外務大臣は、納得したのか着席する。ルイは、そのままあたりを見回し他に質問がないことを確認して、口を開いた。
「では、次の議題に移ろうか。南方諸島で暗躍している、“冥府教”ついてだ」
◆魔王朝六番領 領政府
魔王朝は、全部で二十の領地に別れており、それぞれの領地を魔王朝で優れた者が統治し政務を取っている。そして領主は、皆総じて魔王と呼ばれている。だがこれは、あくまでも魔王朝を治める大魔王から貸与された土地を代わりに治めるといった形式だ。それでも魔王に選ばれた者に対する特権は、数多く存在している。税の半分を自分の物にして良いことや私設の軍事力を持って良いこと等が挙げられる。
一見すると魔王が腐敗しそうな統治機構だが、魔王朝ではとある制度が腐敗を抑えているのだ。
それこそが、“代替わりの戦儀”と呼ばれる制度である。“代替わりの戦儀”とは、簡単に言えば地位の簒奪を制度化したもので、魔王の地位にある者を蹴落とすことができるのだ。そのためには、“代替わりの戦儀”で出される試練で魔王に勝つ必要がある。例えば、とある軍人の武力に納得がいかなかったらその軍人との殺し有りの一対一。政策に納得がいかなかったら、魔王と第三者を交えた領民の選挙勝負等々。勿論そこには、大魔王も含まれる。何故このような制度ができたのか。出来た背景にとある一般領民に対しての大魔王の言葉であった。
『なに?魔王の政治に不満があるだと?ならば、その魔王より自分がやれるということを証明してみよ』
この言葉を受けた一般領民は、大魔王を第三者とし自分の故郷を統治していた魔王に統治方法で領民の可否を問う選挙勝負を挑んだのだ。結果は、その一般領民の勝利でその魔王は地位を追われ、その一般領民が領主の地位に付いた。当然前魔王は、大魔王に苦情をいれた。が、大魔王はというと。
『何を言う。奴より有益な政策を出せず領民を納得させられなかったお前が悪い。潔く身を引け』
その言葉に前魔王は、その場で崩れ落ちたという。その後いくつかのルールが敷かれ、“入れ替わりの戦儀”が誕生したのだ。“代替わりの戦儀”に負けて地位を追われた者は、領民から敗北者として冷遇される羽目になる。まさに極度の実力主義。納得出来なかったら、実力で我こそが優れていると証明するための制度なのだ。この制度のお陰で、一般領民は出世の目が。魔王達はいつ蹴落とされるか分からない立場となった瞬間だった。
今何故そんな話をしたかというと。
「ふん」
「あ····が」
一人の魔族が闘技場にて“代替わりの戦儀”に臨んでいたからに他ならない。
「くだらん。この程度の実力で魔王軍第三軍団の軍団長を務められるか。貴様では精々旅団長が関の山よ」
「う、あ」
「それでも納得出来ないなら、一年後また挑むが良い。このサンガン、いつでも受けて立つ。生きていればな」
「···」
「チッ、死んだか。おい!」
サンガンと名乗った魔族は、血まみれになり死んだ魔族を部下に命じて闘技場外に放り出した後、一人領政府に向かう。門から堂々と入っていき執政室に入ると、二人の魔族が待っていた。
「おお、兄上!久しぶりだな!」
「只今戻りました、サンガン様」
「戻ったか!よくぞ戻ってきたなぁ!」
二人に対してサンガンは、満面の笑みで迎える。
「積もる話もあるだろう!さあ、席に付き給え!シャンガン!セイ!」
「おう!兄上!」
「こちらも話したいことが山程ありますよ」
サンガンが笑顔で迎えた二人。カゲマサのダンジョンに踏み入り見事に返り討ちにされた、ダンジョンマスターで魔王軍第三軍団所属のシャンガン・ベイと同じく魔王軍第三軍団所属のセイ・コーレンだった。
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