行われていた暗闘
書き直した過去話ですが、いくつが追加した事項があります。
主人公世代のダンジョンマスター追加→パンドラッチ
主人公のいる異世界の名前→惑星カーオス
等など。今後ももしかしたら追加するかもしれませんが、その都度報告するつもりですり
◆ダンジョン第三十五階層 迷宮研究所 カゲマサside
さて、二人が玉子粥を食べ終わったので本題に入ろうか。
「おい、パークス妹。お前に話がある」
「え?私にですか?」
俺は、パークスの妹であるハンネに俺がダンジョンマスターだってことやパークスが俺に降ったことなどを話す。
「····そうですか。そんなことが」
ハンネは、悲しそうな表情をしながらパークスを見る。見られたパークスは、肩身が狭そうに縮こまった。
「カゲマサさん」
「うん?」
「こんな復讐しそうな兄さんですけど、配下にさせていただけますか?私も出来る限り支えますので」
「元よりそのつもりだが?」
その言葉にハンネは、ホッと息をつく。どうやら、裏切りの可能性のある兄が受け入れられるか心配だったようだ。まあ、仮に本当に裏切ったら殺すが。
「さて、これからお前たちには、俺のダンジョンで運営している人間牧場計画の管理人をしてもらう」
「人間牧場?人間を飼育しているのですか?」
俺の言葉にパークスは、若干顔をしかめる。人間を飼育していることに不快感を覚えたようだ。
「人間牧場といっても、そこらの土地で孤児となった子供や行く当てのない人間を攫い住まわせているだけだ。人間を生産しているわけでは無い」
「攫うって」
「どうせ、帰る場所のない奴等だ。いなくなろうが悲しむ奴がいないのならば、俺達が有効活用させてもらうだけだよ」
「貴方は、本当に心があるのか?」
「今更何を言ってるんだ?俺は、人間じゃない。魔人だ。そんなやつに人間の心を語っても無意味だぜ?」
俺は、そう言ってパークスを黙らせる。そして、小さなモニターを出す。モニターには、ギオが猫獣人を殴り殺している場面が映し出されていた。
「お、ギオがお前の仲間を殺ったようだぞ?」
「っ!!···そうですか」
おや、意外だな。すぐに襲いかかろうとすると思ったのに。まあ、密かに監視を強めたほうが良いな。
「ふん、ではお前達の職場に行こう。関係者への説明もしなきゃなぁ」
俺は、そう言ってパークス兄妹二人を人間牧場へと案内していく。
だが、俺は知らなかった。この間にダンジョンのある山の山頂にて、知られざる戦いがあったことなど。
◆ダンジョンのある山 山頂
カゲマサのダンジョンがある山の山頂にて、一人の行商人の姿をした男が座り込んでいた。手元には、バスケットボール程の大きさの透明な容器があり中に黒い液体が入っている。それが、計十個あった。
「ンフフフフ、千人死んだとなれば中々の死の力ですねぇ。これぐらいあれば我らが盟主も、本体もある程度納得するでしょう」
行商人の姿をした男は、ニタニタ嗤いながら容器の一つを指の上で回す。
「ンフフ、ヤーコプ様ぁ。この度はありがとうございました♪我々の死の力集めにご協力戴いて!貴方方の死は、我々“冥府教”が責任持って有効活用致します♪」
行商人の男は、ニタニタとヤーコプ達に感謝を述べながら、顔で彼らを嘲笑って十個の容器と共にその場から去ろうとする。
「あら、それは困るわね」
「ンフっ!?」
突如響いた謎の声に行商人の男は、十個の内九個の容器を捨て置きその場から直ぐに退避する。すると、捨てた九個の容器が砂となり消えたではないか。
「ンフっ!?こ、この力は!?そんなはずが無い!こんな、こんな場所に」
「私が現れる訳がない、でしょう?」
行商人の男は、頭を左右に振りながら否定しようとする。だが、行商人の男の頭上から聞こえた声は、そんな男の考えを用意に砕く。
「あ、ああ」
「あら、今回の個体は随分と臆病なのね?“騎士”?」
「何故、何故ここにいるんだ!ナナ·セブンスゥゥゥゥゥゥ!!!」
行商人の男の頭上に浮かぶ存在、銀髪の幼女でありセブンス帝国の皇祖帝であり邪神によって生み出された最古のダンジョンマスターの一柱、ナナ·セブンスその人だった。
行商人の男、“騎士”はその場で直様抜剣。剣先をナナ·セブンスに向ける。
「喰らえ!《冥炎剣·灼熱地獄》!!」
剣先から放たれる炎のレーザー。その炎のレーザーは、真っ直ぐとナナ·セブンスの元へ放たれるが、ナナ·セブンスは身じろぎすらしない。余裕の笑みを浮かべたままだ。
(当たる!)
“騎士”は、自身の技が当たると確信した。いかにナナ·セブンスといえども、避ける余地がないところまでレーザーが迫ったからだ。
だが、《冥炎剣·灼熱地獄》はナナ·セブンスに当たらず、身体をすり抜けて遥か彼方へと消えた。
「ンフ!?」
「あら、あれで終わりかしら?」
「くっ、ンフフフ、嘗めないことだ!《冥針剣·針山地獄》!!」
“騎士”は、山の地表に剣を突き刺す。すると、山肌からおびただしい数の針が生えてナナ·セブンスへと襲いかかった。
しかし。
「うふふ、これだけなの?」
「そ、そんな馬鹿ナァァ!?」
ナナ·セブンスが何もしていないにも関わらず、針が粉々となってしまった。だが、“騎士”は諦めない。
「な、ならば!《冥血剣·血ノ池地獄》!!」
“騎士”は、ナナ·セブンスの周りを大量の血で覆い隠す
「ふん!」
そして、大量の血を固めて棘や針といった凶器とし、ナナ·セブンスに襲いかからせる。
これならいける。ナナ·セブンスは、血の海の中。躱せる訳がない。そう、“騎士”は判断したのだ。
要はこの“騎士”、ナナ·セブンスを嘗めた。
「あらまぁ、凄い血飛沫ねぇ」
と、“騎士”の真横で声がした。“騎士”は、即座にその場から跳躍して距離を取る。
「ん、ンフフフ、一体何時から」
「貴方が自慢げに血飛沫を飛ばし始めた時からかしら?」
その言葉に“騎士”は、冷や汗を流しながら絶句する。この化け物は、此方が《冥血剣·血ノ池地獄》を展開する直前から自分の横にいたのだ。全く気が付かなかったのだ。
そんなことを考えているときである。
「ん〜、そろそろ気付かないかしら?」
そんなことをナナ·セブンスが呟いたのだ。まるで、“騎士”のことを物事に気付けない愚者として見下しながら。
「な、なにをですかな?」
「あなたの魂」
「は?···っ!?」
“騎士”は、己の内面に目を向けて《多魂操王》を発動する。そして、言葉を失った。
「ない、ナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイナイ!!!!何故何故何故何故何故!私の保有する魂は、二千以上あったはずなのに!」
そう、この“騎士”。マーロイ首長連邦でカゲマサがであった“騎士”の二倍以上もの魂を保有していたのだ。それら全てが一気に消えてしまった。ただ一つを残して。
「何故って、私が消したのよ」
「消したぁ!?ありえん!二千以上の魂を一秒もかけず全て消失させるなど!」
「ええ、そうね?面倒だったわよ?貴方を二千回殺すの」
「は?」
殺した。その言葉に“騎士”は、呆気にとられる。
「ンフフ。お、お前は何を言っている?私は、この通りピンピンとして」
「まあ、貴方からは情報抜きとったから用はないのよね。さようなら」
「ンフ!?こ、コラマ」
待て。そう言おうとした時には、“騎士”は粉微塵にされていた。
(馬鹿な···!?一体、何をどうしたらこんなことが!?)
“騎士”は、困惑しっぱなしだった。技を躱されたと思ったら魂を一つ以外全て消され、最後には訳がわからないまま体を粉微塵にされた。もう訳がわからなかった。
だが、わかったことなら一つだけある。
(ン、ンフフフフフ、あれが、あれこそがこの惑星カーオスにおける最強の一角、か。強い。強すぎる。ランクS+の私をこうも容易く···!)
気に入らない。気に入らないが、納得できる。あれは、強すぎる。それを理解したときにはもう遅かったが。
(私の本体が、警戒を怠らない訳だ)
“騎士”は、そんなことを考えながら肉体と魂諸共消失した。
完全に生命活動を停止した“騎士”を見てため息を吐くナナ·セブンス。彼女は、手をパンパンと叩くと、彼女の配下であるロロ·セブンスが現れた。
「どうでしたか?」
「やはり分体程度では、得られる情報も少ないわね。だけど、“冥府教”の次の目的地が分かっただけでも収穫かしら」
「その目的地とは?」
ナナ·セブンスは、薄く笑いながらロロに告げる。
「未だ戦乱が絶えない南方諸島。そこで“冥府教”は、一波乱起こすつもりね」
ナナ·セブンスは、静かに告げたあとその場からロロと共に転移した。
裏話··ナナ·セブンスの倒した行商人“騎士”は、小物だが今のカゲマサより確実に強い。
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