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防衛作戦の後始末②

 色々と過去の話を統合して話数が減少しておりますが、ご了承ください。


◆ダンジョン第三十五階層 迷宮研究所 カゲマサside



 俺は、眠らせたハンネ・ロアンを迷宮研究所の医療カプセルへと入れる。そして、治療液で彼女を満たした後で蝕む病について調べてみた。


「なるほど、肺結核に類似する病か」


 調査した結果、彼女を蝕んでいるのは肺結核と非常によく似た病だと分かった。俺は、すぐさまミレンダの元に飛んでいき共に治す方法を考え始める。後ろからパークスがハラハラといった様子で見ているが気にならなかった。


「肺結核ねぇ。生憎聞いたことない。どんな病気なの?」

「肺結核はな、え〜っと。まず結核だが、結核菌という細菌が直接の原因となって起こる病気で結核菌が起こす腫れ物のようなものだ。最初は炎症から始まって肺ならば肺炎のような病気だという」

「なるほど、要はその腫れ物を治せばいいんだね?」

「細菌を除去するために薬を毎日飲む必要がある。だが、その薬が無いからなぁ。良し、この際だ。前に開発した細菌撃滅薬あったろ。それ使うぞ」

「よっしゃ、今持ってくる」


 ミレンダは、細菌撃滅薬を取りにすっ飛んでいった。さてと。


「おい、どうしたパークスよ。そんな辛気臭い顔をして」

「・・・妹は、治るんですよね?」


 おっと、どうやらまだ不安のようだ。まあ今まで薬を探してきたんだから、こうも簡単に治療法があるとかえって信用しづらいかもしれん。感情的に。

 だからこそ俺は、パークスの目を覗き込んでこう告げた。


「治す。俺は残酷だが約束は、絶対に守る主義だ」


 約束は守る。これは、知性ある生物として当たり前のことなのだ。まあ、容易に破る輩もいるだろうが。

 そこに、薬を取ってきたミレンダが入室してきた。


「持ってきたわ、液状細菌撃滅薬〈ウイルス・デストロイ〉を!」

「よし、では飲ませるぞ!」


 俺は、ミレンダの持ってきた細菌撃滅薬〈ウイルス・デストロイ〉をカプセルから出してベットに寝かせたハンネ・ロアンの口へ持っていく。だが、ハンネ・ロアンの口が中々開かず悪戦苦闘してしまった。


「ちょっと、コイツ口開かねぇんだけど!?」

「だったら、装置を使えばいいでしょうが!」

「あ!そうだった!」


 俺は、直様持ってきた薬剤注入器に細菌撃滅薬〈ウイルス・デストロイ〉を投入し、薬剤注入器の排出口をハンネの口へ取り付けた。


「いざ、注入!」


 俺の掛け声とともにハンネの体内へ流し込まれる細菌撃滅薬〈ウイルス・デストロイ〉。ミレンダは、少しの異常をも確認できるように、医療器具をもって控えている。

 細菌撃滅薬〈ウイルス・デストロイ〉を注入して数分後、俺は薬剤注入器の稼働を止める。そして、ハンネをレントゲン写真で撮影した。


「うん、消えている。肺結核は、綺麗サッパリ消えている。治療は成功だ」


 結果は成功。レントゲン写真には、肺結核の痕跡は全く確認されなかった。


「あ、ああ!本当に、本当に治ったのですか!」

「治ったとも」

「う、うう、ありがとう御座います!ありがとう御座います!」


 パークスは、何度も何度も俺に頭を下げる。顔を涙でくしゃくしゃにしながら何度も下げた。 


「礼なら細菌撃滅薬〈ウイルス・デストロイ〉を作ったミレンダに言え。俺は、薬剤を注入しただけだ」


 俺は、素っ気無く答える。実際開発したのは、ミレンダとミレンダの元で結成された開発チームだし。というか、治療は終わったがまだ作業は終わってないぞ。

 頭を下げるパークスを余所に懐から小さな筒状の容器を出す。中には、緑色の液体で満たされていた。


「ミレンダ、ここに結核菌がある。さっきハンネの体内から採取した。コイツで抗体を作れ」

「あいよ」

「こ、抗体?」


 パークスは、なんの事か全くわからなかったのでその場に立ち尽くしてしまった。

 パークスが立ち尽くしている間、ミレンダはさっさと抗体を作り上げた。


「よし完成。それ、注射っと」


 ミレンダは、抗体をハンネに注射器で投与した。針を指したので、パークスは一瞬ミレンダに掴みかかろうとしたが二人の人造人間(ホムンクルス)に止められた。


「これで処置は終わりだ。後は、この小娘が起きるのを待つだけさ」

「わかった。おい、人造人間(ホムンクルス)125番に137番!彼女のベッドを通常病棟へ運べ!」

「「はっ!」」


 こうしてハンネの治療は、ミレンダ開発の細菌撃滅薬〈ウイルス・デストロイ〉によって完治し事前に採取していた結核菌によって抗体を作成、投与によって結核に対する耐性獲得という形で終結した。















◆迷宮研究所 通常病棟



 ハンネは、漂ってきた良い匂いで目を覚ます。そこは、自分がいた寂れた家屋では無い。白く清潔に保たれた空間だった。加えて自分の格好も違う。かつて着ていた汚れた茶色のワンピースではない。清潔な白い服だった。

 ハンネが余りの環境の違いに驚いていると、一人の男性が駆け込んでくる。その男性は、ハンネにとってはとても懐かしく思い再開を待ち望んだ者だった。


「ハンネ!」

「え?に、兄さん!?」


 ハンネの兄、パークスは涙を流しながら彼女に駆け寄るなり抱き着いた。ハンネは、何が何やらわからず狼狽えるだけ。


「ああ、よかった!本当に良かった!」

「に、兄さん?何が良かったの?それに、ここは何処なの?」

「ここは病院さ!病気を治すところだよ!」

「ぇ」


 ハンネは、そう言われて声を震わせる。病院。つまり自分の病気は。


「治っている。お前が患っていた肺結核は、綺麗サッパリに消えたさ」


 答えたのは、自分を攫った男の声。振り返ると、小さな鍋を持った青年がこちらに歩いてくる。いい匂いは、その小さな鍋から漂ってくるようだ。


「え、えっと」

「ああ、ハイネ。この人はカゲマサさんといって、お前をこの施設に連れてきてくれたんだ」

「俺のことはどうでも良い。取り敢えず食っとけ」


 青年、カゲマサさんは持ってきた鍋の蓋を開ける。中には、小さな白い粒に黄色い何かが湯気を立てて入っていた。


「あの、これは?」

「玉子粥だ。俺の仲間が作ったものでね。旨いぞ。パークスの分もある」

「本当ですか!?」


 玉子粥?

 ハンネは、聞いたことのない料理名に首を傾げるが、取り敢えず食べてみることにする。渡された匙使って米と呼ばれる白い粒と卵をといて加熱したものを掬い、口へと運ぶ。


「熱っ!」

「おっと、言い忘れたが熱いから気を付けろ?」


 カゲマサさんからの注意を耳に入れながらハンネは、今一度玉子粥を口に運んだ。


「美味しい。美味しいよ。それに私、こんなに暖かくて優しい料理食べたことないよ」

「ああ、優しい味だ」


 ハンネが食べまで来たのは、大体冷たい黒パンに僅かに加熱しただけの野草スープぐらいなものだ。

 ハンネは、知らず知らずのうちに涙を流しながら玉子粥を食べ続けた。


 今回はここまで。玉子粥の食レポが下手でごめんなさい。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ハンネ・ロアンが中々開かず ハンネ・ロアンの口が開かず では? もしアンネ・ロアンが開くなら、化け物の完成(笑)
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