防衛作戦の後始末①
総合ポイント、6000突破!ありがとう御座います!これからも、こんな拙い作品を温かい目で見ていただけたら幸いです!
◆ダンジョン第三十五階層 迷宮研究所 カゲマサside
ヤーコプを始末した後俺は、迷宮研究所主任室へと向かう。〘主任室〙と書かれたプレートが貼られた扉を開き中に入ると、先に来ていたミレンダと数人の人造人間達が待機していた。
「ヤーコプの始末は終わった。後は、例の冒険者だけだ」
「そうだねぇ。その冒険者が入った医療カプセルには、二人の人造人間を付けてるから、逃げることは出来ないはずさ」
「生命力は?」
「既に奪ってるさ、今や奴はランクFのレベル1の雑魚になってるよ」
俺の問いにミレンダは、ケタケタと笑いながら答えた。俺は、その答えに満足しながら用意された椅子に座りながら待つことにした。
「パークス·ロアンか。さてさて、俺達の陣営に付くか拒否して死ぬか。どうなるかな」
◆迷宮研究所 医療カプセルルーム
数多く並んだカプセル型の機械。その内の一つに緑色の液体で満たされたカプセルがあった。カプセルの前には、二人の男性型である人造人間がタオルと武器を持って立っている。
「まもなく三十分だ。125番」
「わかってる、137番。警戒を怠るな。レベルやランクが最下位まで落ちているとはいえ、冒険者だ。どんな抵抗を見せるかわからん」
125番、137番と呼ばれた人造人間は、そう言い合ってカプセルを見る。カプセルの中には、緑色の液体に浸かった冒険者、パークス·ロアンが空気を送り込む機械を付けられて目を閉じて眠っていた。
そんな会話から数分後、カプセル内で眠っていたパークスが目を覚ました。
(···な、なんだここは?俺は、たしかダンジョンマスターに倒されて、それで)
目覚めたパークスは、始めに何故自分がここにいるのか疑問が生じていた。そして、自分が緑色の液体に浸っていることに気付く。
(こ、これはなんだ!?体がまったく動かせん!が、温かい?それに癒やされていく感じがする?)
パークスがそんなことを考えていると、パークスの入っているカプセルから緑色の液体が抜かれていく。やがて全ての液体が抜かれると、カプセルの蓋が開きパークスを拘束していた装置も解除された。
「一体何なんだ····っ!?」
パークスは、訳もわからず立ち上がると突如として剣を突きつけられる。突きつけたのは、二人の軍服を着た男性だった。
「あ、アンタ達は」
「パークス·ロアン。貴様には、今から着替えてもらい、あのお方に会ってもらう」
「貴様に拒否権は無い。拒否した場合、即座に首が跳ね飛ばされると思え」
「あ、ああ」
二人の軍服を着た男性、人造人間125番、137番の指示にパークスは狼狽えながらも従う。タオルを渡され体に付いた緑色の液体を拭いていると、あることに気が付いた。
(体が何時もより重い?何故だ?奴等に何かされたのか?)
パークスは、疑問に思いながらもタオルで液体を拭き取っていき、用意されていた自分の装備を装着する。この装備も重かった。
「着替え終わったな?」
「ついて来い。あの方がお待ちだ」
パークスの着替えが終わった後、人造人間125番と137番は、パークスの両手首を手錠で拘束し、医療カプセルルームから出た。
医療カプセルルームから出た125番と137番そしてパークスは、通路を歩いていく。その間パークスは、迷宮研究所の通路を観察していた。
(なんという、なんという文明だ。石畳ではないレンガでもない、なんという滑らかな壁か。魔法による強化もなされているだろうが、一体どんな材質の物を使っているんだ?)
通路の壁は、滑らかで一切の汚れがない。ライトもついており、どれもそこらの小国は勿論かのセブンス帝国でも見たことが無い。
「おい」
「っ!?な、なんだ?」
「着いたぞ。この扉の奥にあのお方はいらっしゃる」
「くれぐれも失礼の無いように」
そう言われてパークスは、部屋の中に通された。そこには、数人の男性女性にメガネを掛けた美女、そして。
「先程あったな。パークス·ロアン君」
「ダンジョン、マスター」
◆迷宮研究所 カゲマサside
よし、パークス·ロアンも来たし役者は揃ったな。これで話を始められる。
「さて、パークス君。お前が何故生きているのかわかっているかな?」
「···えっと、俺がアンタになんでもするって言ったからか?」
「そうだ。俺はその言葉を信じてお前を治療し、こうして生かしている。つまり君は、俺に魂を売り渡したのだ」
「···わかってるよ。で、何をさせたいんだ?」
お、パークスは乗り気だな。まあ、治療した恩を考えると当たり前··いや、まだコイツの妹の件があったな。
「なに、それは追々決めていく。今はこれだ。ミレンダ頼む」
「あいよ」
俺は、ミレンダに指示を出すと、ミレンダは懐から一枚の紙を取り出した。
「これは?」
「契約書だ。それに君の本名を書いてもらおう」
「··分かった」
パークスは、契約書に名前を書いていく。書き終わると、契約書が突如として発火。そして、灰になったと同時に灰がパークスの脳へと入っていった。
「なんだコレは!」
「〈脳破の契約書〉という魔道具だ。契約書に書かれたことに違反すると、脳が潰れて死に至らせるものだよ」
「なっ!?何故そんなものを俺に!」
「当たり前だろ?お前は外様の人間だ。そんな奴をすぐに信用できるか」
パークスは、顔を歪ませながらその場に着席して頭を抱える。まあ、これでコイツは俺に逆らえない。
〈脳破の契約書〉に書いた契約内容は三つ。ダンジョンの情報を教えないこと、俺をダンジョンマスターだと教えないこと、ダンジョンの不利となるような行動はしないことの三つである。本当ならダンジョンの不利となるような行動はしないことの一つで良かったが、念には念を入れて三つにしておいた。
「パークス君、何時まで項垂れている?もう後には引き返せないのだ。諦めろ」
「ああもう!分かったよ!やりますよ!やればいいんでしょう!?」
あ、自棄になったな?まあ良い。仕事を果たしてくれたらそれで良い。
「よし、ならばお前は俺の部下だ。その記念に一つ願いを可能な限り叶えたいが何かあるかな?」
「っ!?···何でもですか?」
「それが叶えられる願いならば」
「じゃあ、俺の妹を、妹の病気を治してください!」
やはり来たか。捉える際に跡切れ跡切れに聞こえたけど、まあそれくらいならお安い御用だ。
「ふむ、お前の妹か。治したあとはどうする?一人にするのか?」
「それは···」
兄としては、危険なことには巻き込めないって感じか。よし。
「もし妹をダンジョンに移住させるなら、研究所外にある魔人街に部屋を用意しよう。なに、魔人といっても元人間達だ。喰われはしない」
「···わかりました。妹は、このダンジョンに移住させます。ですが、もし妹に危害を加えたら」
「ふっ、その時は俺を一発殺そうとしていいぞ?」
その言葉に多少溜飲を下げたのか、口を閉じるパークス。俺は、新たな部下が出来たことに喜びながら立ち上がった。
「パークス、お前の妹の居場所を教えろ」
◆セブンス帝国南部の村 とある家屋
「ケホッケホッ」
セブンス帝国の南部にある村で一人の女性が咳き込んでいた。その女性は、パークスの妹であるハンネ·ロアン。一年前から謎の病を患い床に付していたが、一ヶ月前から病状が悪化し日に日に命を擦り減らしている。
今日もハンネは、ベットの上で咳き込みながら兄の帰りを待っていた。
「兄さん···」
少しボサッとした金髪を垂らしながらハンネは、待ち続ける。薬を買ってくると言って飛び出していった兄パークスを。そして同時に諦めてもいた。
「もう、私は長くない」
ハンネは呟く。日に日に回数が増える咳に失う頻度が多くなっている意識、そして増える吐血。その状態で一ヶ月も持ったのだ。流石に限界が近いことは、分かっていた。だから、兄の帰還を目にすることを諦めていた。
そんな時だった。
不意に家屋の扉が開かれる。そして、一人の人間が入ってきた。その人間は、黒い仮面を被り黒い外套を身にまとった青年だった。
「···金目の物はありませんよ?」
ハンネは、余りの怪しさに泥棒と考えてそう言ったが、青年は首を横に振る。
「狙いは金じゃない。お前だ」
「私?こんなだらしのない女を?それに私は」
「重度の病だろ。知っている」
ならば何故?と言おうとした時、ハンネは青年にお姫様抱っこされた。
「ふえ?」
「俺は、お前の病気を治しに来たものだ」
「え?え?」
「今はお眠り。【スリープ】」
そこでハンネの意識は、途切れた。
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