乙女は感謝を、愚者に裁きを
注意。
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◆ダンジョン第三十五階層 迷宮研究所 カゲマサside
迷宮研究所へやってきた俺は、引きずって来た冒険者パークスを医療用兼拘束用カプセルへと放り込み、治療を開始させた後とある部屋に向かう。その部屋には、〘実験室〙と書かれたプレートが貼られていた。
俺は、扉を開けて部屋に入ると、そこには注射器片手に迷宮研究所主任のミレンダが椅子に腰掛けていた。
「よう、やってるか?」
「おや、カゲマサかい。ああ、やってるよ。見ていくかい?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
俺は、ミレンダに促されて彼女の隣に立つ。そして、目の前の拘束された人間を見た。
「はっ、ザマァないな。ヤーコプ冒険者ギルド本部副長?」
そう。拘束されていたのは、下着以外すべて剥がされ捕獲されたヤーコプだったのだ。両手両足は、鋼の拘束具で身動きが取れず、口には猿轡が取り付けられていた。目には、黒い目隠しが巻かれていたが涙を流しているのは良くわかる!
「んー!んー!!」
ヤーコプは、肥満体を象徴する腹を揺らしながら何かを言いたそうにしているが、猿轡のせいでなんと言っているかわからない。まあ、興味はないが。
「で、なんの実験をしてたんだ?」
「回復薬さ。今実験してるのは、失った小指を完全に再生させる回復薬なんだけど、思いの外難航しててねぇ。幾つか試行錯誤してるが中々ねぇ」
「ん?それだったら、前に奴隷達に使った身体再生術、あれはどうなる?」
「これさえ出来てしまったら、たとえ古傷だろうと治せるかもしれないのさ。いちいち手術をする過程をすっ飛ばせるんだよ」
「ああ、なるほどね」
過程の簡略化。確かに楽でいい。いちいち身体部位を急速培養しなくてもいいし、機材を用意しなくても大丈夫だ。
「で、これで何回目だ?」
「二五六回目」
おおう。かなり繰り返してるな。それでまだ完成していないとは。
「だけど、今回のは大丈夫さ。ちゃんと、原液の量を調整はしたし」
「ふ〜ん」
「あ、そうだ。ちょっと、ソイツの右手小指取ってくれないかい?」
「おう」
俺は、ヤーコプの右手小指を掴み容赦なく引き千切った。千切った後からは、ドクドクと血が溢れ出てくる。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
「····ぷ。あ、小指はどうする?」
「捨てていいよ」
ヤーコプは、ガタガタと拘束具を揺らしながら痛みに震える。俺は、その様子を少し嗤いながら小指を【ヘルフレイム】で焼失させた。
「さて、上手くいっておくれよ〜?」
そこにミレンダが右手に注射器を差し込み回復役を注入していく。すると、ヤーコプの右手に変化があった。ヤーコプの右手小指がグチュグチュと音を立てながら生えているではないか。
「っ!よしよし、よ〜しよ〜し!いいよいいよぉ!骨の再生は順調!肉の再生も順調!爪は?大丈〜夫!ナイスな仕上がりだねぇ!」
ミレンダは、完全に生えた小指を見て飛び跳ねながら喜んだ。ダークグレーの長髪長身白衣のメガネ美女が喜ぶ絵面で映えるな。目の保養になるぜ。
「おめでとうミレンダ。さて、実験はもう終わりか?」
「いいや、まだまだ試したいことはいっぱいあるさね。ゾンビ化薬にワクチン、狂乱薬、強化薬、興奮剤、幻覚剤なんかをね!」
それヤーコプの身体もつか?いや、替えの実験台はまだまだいるし、問題ないか。
「まあ、疲れたのは事実。どれ、コーヒータイムにしようかねぇ。貴方もどうだい?」
「戴こうか」
俺は、ミレンダが淹れてくれたコーヒー片手にミレンダと談笑する。ああ、こうやってゆっくりするのも久しぶりな気がするなぁ。
「それで笑ったのが、試しに作った笑い薬と悲しみ薬を同時に投与してみると、実験体の表情が凄いのなんの!アレは傑作だったわね〜」
「それはそれは、見てみたかったなぁ。あの時マーロイに行っていたことが悔やまれる」
俺がマーロイに出向いていた頃のことを聞いたり、逆に俺がマーロイで行ったことなどを話したりと、終始和やかに談笑は続いた。しかし正面から見てるとミレンダって、昔は婆さんだったのに今は美人だよな。そうしたの俺なんだけどさ。
「ふふっ、しかし今になってみると、あのとき貴方の下に着かなかったらどうなってたか想像もつかないね」
「ん?婆さん時代か?」
「婆さんいうな。呪うわよ?」
「すまん。しかしそうだな···。その場合は、脱獄しどこぞの国の組織で闇魔導師として、暗躍してたんじゃないか?」
「そうかもねぇ。それだと今の環境とは、比べようもない劣悪な所に身を置くことになっただろうさ」
ミレンダは、しみじみと呟いた後席を立ち、俺の目の前でしゃがむ。え?なに?
「だからこそ、貴方には感謝してるのさ。初めは、こんな役に立たない老いぼれであるアタシなんかを雇って何をするんだと思ってたけど」
「まあ、あの時は戦力拡大に一番積極的だったからな。なんでも引き込んでたさ」
「ふふっ、確かに手当り次第だったねぇ。だけど、アタシはそれに救われたんだ。魔人となって若さと情熱を取り戻し、生きるっていうことを思い出したんだよ」
う〜ん、話が見えてこない。俺への感謝ということはわかるが、当時の俺の行動は打算ありきがほとんどだ。感謝される謂れはないぞ。
「だからね、今言わせておくれよ。
アタシを救ってくれてありがとう」
そう言ってミレンダは、俺の頬に軽くキスをした。
「········はい?」
俺は、少しショートを起こしながらミレンダを見る。ミレンダは、少し顔を赤くしながらそっぽを向いた。
「ま、まあ、これは若くなった影響で出た若気の至りと考えておくれよ?本来アタシは、年食って犯罪者として処刑される身でだったんだ。気持ち悪いだなんて思われるのは、当たり前」
「いや」
ショートから回復した俺は、照れながら言い訳して自分を卑下するミレンダに声をかける。
「気持ち悪いだなんて思わんよ、前がどうあれ今は仲間だ。仲間からの感謝は、素直に嬉しいから受け取るとも。ありがとな、嬉しいよミレンダ」
俺は、多分今年一番の笑顔をミレンダに向ける。彼女の言っていることが嘘かはわからない。だが俺は、とにかく信じることにした。自分のダンジョンに貢献する人物を信じなかったら、俺なんかに忠誠を誓い働いてくれている全てのモンスター達に会わせる顔がない。
「···っ。····はぁ〜、余りからかうんじゃないよ」
ミレンダは、少し呆気に取られた表情をしたあと、顔を真っ赤にして後ろを向き呟く。というか、コイツ恥じらう気持ちがあったんだな。若返りで取り戻したんだろうか。だがまあ、これはこれで可愛いな。
「ふっ、さて話は変わるが、ヤーコプどうする?」
俺は、どこか甘酸っぱい雰囲気を払拭し、完全に蚊帳の外にいたヤーコプに目を向けた。
「あ!ああ〜、もういいかねぇ。実験台は、まだまだいるしコイツ一人に構っているのもねぇ」
「じゃあ、俺が始末する。俺のダンジョンを侮辱したことは万死に値するんでね」
「ふふっ、なら任せるよ。アタシは、捕えた私兵団構成員で実験するからね」
「おう、気をつけろよ」
「そっちこそ」
ミレンダは、そう言うと人造人間や人工魔人達を護衛に実験室を出ていった。
俺は、それを見届けた後、ヤーコプに取り付けられた猿轡を外す。
「おい、目を開けろ。ヤーコプ」
「···っ!き、貴様!誰に向かって口を利いている!私は、冒険者ギルドの」
「チッ、そういうのはいいんだよ」
第一声がそれかよ。自分の立場がわかってないよな?コイツ。
「冒険者ギルドの本部副長だろ?知ってるよ」
「ならば、さっさと拘束を外せ!さもなくば、今にも冒険者共や忠義に厚い我が私兵団が私を救出せんと、襲いかかってくるであろう!まあ、私に平伏し従うのなら取りなしてやらんこともない!」
「お前」
俺は、あまりのヤーコプの態度に怒りを通り越して呆れを抱いた。やはり、現実を正しく認識出来ていない。
「お前の私兵団か?ならば、合わせてやる」
「?貴様は、何を言って」
俺は、実験室のとあるボタンを押すと、実験室の一部の壁が音をたてながらシャッターのように上がっていく。上がった先には、透明なガラス。そのガラス越しにヤーコプの目に飛び込んできたのは。
「アアアアアアアアアァァァァァァ!!!」
「やめろぉ!やめろやめろやめてやめて!やめてくださいおねがいします!やめっ!ガッ!」
「痛い、痛い、痛いぃ!誰が、誰が助けてぇ!」
「ああ!止めて止めて止めて!食べないでよぉ!」
「ひっ!来るな来るな!来るなぁ!俺を、食べるなぁぁ!」
地獄絵図そのものだった。人間の悲鳴が鳴り響き、血が至る所に散らばっている。ヤーコプは、顔面を蒼白にしながらこの光景を見ていた。
皮膚が腐り、目から理性の光が消え失せて、ただ暴れる亡者となった獣人。
必死に懇願しながらも、願い叶わず腹から大量の針を生やして絶命した人間の冒険者。
理性を失った何者かに跨がられ、暴行の限りを尽くされる女エルフ。
有りもしないモンスターに喰われる幻影を見せ続けられる二人の私兵団構成員。
ヤーコプは、あまりに酷い光景に思わず吐いてしまった。胃酸の匂いが部屋に充満するが、俺は換気扇を回して除去する。
「オ、オエエエエエエエ」
「あいつ等は、全員お前が連れてきた冒険者と私兵団の構成員だ。俺のダンジョンで生きたまま捕まったので、実験に利用させてもらったよ」
「··ハァ、ハァ····ハァ···。な、なぜこんな事をするのだ!」
「ん?そりゃあ、ウチの戦力拡大に利用させてもらうのさ。俺は、戦力になるなら何でも利用する質なんでね」
そう。利用出来るなら何でも使うのだ。人間の命だろうが関係ない。〈冥府教〉やナナさんといった明確な格上が存在する以上、命を奪うだけに戸惑っていては駄目なのだ。仲間以外を何もかも利用しつくすのだ。仲間を集め戦力を拡大し、来たる最悪に備える。しなければ、俺が殺される!
「さて、そろそろ始めるかな」
「ヒィ!な、ななな何を始めるのだ!?」
「あ?決まってるだろ。貴様の処刑だよ」
俺は、ダンジョンメニューからモンスター召喚を行い、数体の小さなミミズの如きモンスターを生み出す。
「コイツは、ミートイーターと呼ばれる虫系統モンスターでね。大の肉好きなのさ。あ、人肉もね」
「ま、まさか貴様!」
「さて、まず一匹をお前の右耳にねじ込んでやる」
そう言って俺は、ミートイーターをヤーコプの右耳に寄せる。すると、ミートイーターは喜々として入り込み、肉にかぶりついた。
「ギャアアア!痛い痛い痛い!」
「よぉ〜し、今度は左耳にもねじ込んでやる。片方だと不公平だからな」
「アアアアアアアア!!!誰かァァァ私を助けろォォォォォォ!!!!!」
その後俺は、ヤーコプの至るところにミートイーターをねじ込み、存分に喰わせてやった。コイツは、肥満体だしさぞや多くの肉にありつけることだろう。
やがてヤーコプは、悲鳴を上げながら喰われていき、最後には白骨死体になるまで食われ尽くした。途中命乞いがあったが無視した。因みに、記憶は抜き取ってある。情報は大事。
「よぉ〜し、ご苦労さま。後でゼクトのところに送ってやるからな?」
「キィー!」
俺は、ミートイーター達を労ったあと、防衛作戦最後の仕事を終わらせるため、迷宮研究所主任室へと向かった。
完全に主人公陣営が悪の組織そのものじゃねぇか!書いたの自分ですけども!
ミレンダの話は、やはり拙かったかな。許してください、文才が無いんです自分は。
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