ダンジョン防衛作戦、第三十五階層①
難産でした。
◆ダンジョン第三十五階層 外周部
Bランク冒険者の人間パークス・ロアン率いる冒険者パーティーは、面倒な者の相手をしていた。
「さっさとその宝を寄越したまえ!この冒険者ギルド本部副長であるヤーコプに逆らうのか!」
「ですが、ダンジョンで得た宝は各冒険者達の物と決まってきます!それを決めたのは、他ならぬ冒険者ギルドの初代ギルド長なのですよ!?」
「ええい、黙れ!さっさとその宝を寄越すのだ!私に逆らってタダで済むと思っているのか!?」
事の発端は、パークス・ロアン等この階層を探索している時に見つけた宝箱から大量の金塊を見つけたことにある。それを目ざとく見つけたヤーコプが残っていた私兵団を率いて、パークス・ロアン等に金塊を寄越すように迫ったのだ。
そこにパーティーメンバーの一人であるエマ・ニャントルがロアンの耳元で囁く。
「・・・ねえ、パークス。こいつら全員ぶっ飛ばしていい?」
「駄目だ、エマ。仮にも冒険者ギルドの上役だぞ?」
エマは、ヤーコプに相当苛立っているようで暴力的になっていた。
「そうですよ、エマ。腹が立つのは分かりますが、ここは抑えてください」
「・・・そうそう。暴乱猫は、感情を抑えてね」
「誰が暴乱猫よ!・・・まあ、落ち着いたから感謝するわ」
そこに同じくパーティーメンバーのタロ・エルーゼンとドトール・マリオネットがエマを抑える。エマは、怒りながらも落ち着きを取り戻す。
「さっ、一旦離れましょう。本部副長の相手は、パークスがしてくれますから」
「わかったわよ!」
そしてタロ・ドトール・エマは、その場から離れた。その後度々ヤーコプの怒鳴り声が聞こえてきたが、次第に怒鳴り声は消えていき、完全に無くなったあとパークスは戻ってきた。
「はあ〜、ヤーコプ副長からはこちらが宝を見つけたら俺等の物になるけど、ヤーコプ側で見つけた宝は有無を言わさずあちらの物だってさ」
「結局いつもどおりですか」
「そういうことだ。後、俺達が先に奥地を調査しろって」
「何それ!私達を生贄にする気!?」
「・・・ヤーコプは?」
「私兵団に守られながら高みの見物」
「「「はあ〜」」」
ヤーコプの明らかに自分達を使い潰そうとする意思にため息が出る。
「仕方無いさ。相手の譲歩はここまでが限界だしな。他の冒険者達は、既に奥地に行ってしまったらしいし」
「行くしかない、かぁ」
「恐ろしい目に合わないか不安ですね」
「・・・本当にね」
四人は、再び溜め息を吐いた後装備を確認し、ダンジョン奥地へと歩いていった。
「ふん、やっと行きおったか。これだから無能は」
「へっへっへ、全くその通りですなぁ」
「そうだ!私は冒険者ギルド本部副長だぞ!奴等にとって私の命令を聞くことは、当たり前のことではないか!あの商人もそう言っておったぞ!」
パークス達が去ったあとヤーコプは、身勝手に叫びネクソスが煽てる。
「それに下賤な亜人風情めが、私に向けて不遜な目を向けおって!ランクB冒険者でなければ、どんな目に合わせてやろうかと」
「全くその通りで。ところで旦那、あれはなんですかね?」
「ん?」
ネクソスは、何かを見つけて上空を指差す。釣られてヤーコプも上空を見上げた。そこには、幾つもの黒点が対空していた。
「な、なんだあれは!」
「モンスターか?だとしたら不味いな。おい、お前等!一箇所に集まれ!旦那を守るんだ!」
ネクソスは、即座に部下を呼び寄せてヤーコプの周りを固める。
「弓兵、魔導師!あの黒点を何時でも攻撃出来るようにしとけ!」
「はっ!」
ネクソスは、そう指示を出すと自らも剣を抜き、辺りを警戒する。陸からのモンスターを危険視してのことだ。
ネクソス等が警戒し始めてから数分後、未だに黒点には動きがなかった。
「・・・動きませんね」
「ただのイタズラか?」
私兵団からは、何時までも動かない黒点に疑問を覚える者たちが現れ始めた、その時だった。
突如として黒点から、複数の小さな黒点が十つ程が落ちてきたのだ。そして複数の小さな黒点十つは、私兵団つまりヤーコプ等のいるここに落ちてきている。
「やべぇ!お前等、衝撃に備えろ!」
ネクソスは、部下達に指示を出すが部下達は何故か動かない。
「おい、何してる!さっさと動け!」
「そ、それがぁ!動けないんすよぉ!まるで、金縛りに合ったみたいにぃ?!」
その言葉にネクソスは、タラリと冷汗をかきつつ自分だけでもと盾を構える。
そして十つの黒点は、どんどんとネクソス等私兵団に近付いていき、初めて正体が分かった。
「は、羽が生えた、人間だと!?」
ネクソスは、驚愕の声を上げる。その黒点の正体は、竜の如き羽を持ち筋骨隆々だというのは当たり前、また十人それぞれに異なった特性が存在し、異様な存在感が漏れ出ている。
「な、何をしておる!敵だぞ!さっさと戦わんか!」
ヤーコプは、唾を飛ばしながら私兵団に命令する。しかし、誰もが動かなかった。いや、動けなかった。
「そいつ等は、もう動けやしない」
すると、十人の敵の内一人が口を開く。どうやら、言葉を発する知能はあるらしい。
「何故なら、オレの《麻痺の魔眼》のせいだからな」
その言葉にネクソスは、少し後退しながらも敵の様子を窺う。敵は、さっきを放ちながらも未だに手を出してきていない。
ならばとネクソスは、内の一人に《鑑定》を行った。
名前
種族 特殊型死虫魔人
職業 迷宮研究所直轄部隊、第三隊隊長
レベル 35
ランク A
スキル 超速再生 脳強化 気配察知 空間魔法 身体能力超強化 麻痺の魔眼 熱源感知etc.
これを見たネクソスは。
軽くチビッた。
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