ダンジョン防衛作戦の合間
◆ダンジョンコアルーム カゲマサsaid
俺は、シャンガンがミカエルの【極熱砲】に飲み込まれた瞬間を見届けた後、同じく見届けていたシロへ口を開く。
「なあ、シロよ。あれで終わったと思うか?」
「···死んではいないでしょうね。ただ、ミカエルの【極熱砲】を受けて無傷では無いと思われます」
「だろうな。奴は腐ってもダンジョンマスター。いくらでも耐える手段は思いつく」
例えば、土壇場でダンジョンメニューの道具創造で頑丈な盾を生み出すとか、モンスターを盾代わりに召喚するなど様々な方法がある。
「シロ、ミカエルに伝達。治療が済み次第、早急にシャンガンを拘束。ダンジョンの外に放り出せ」
「しかしマスター。どこにお捨てになるのですか?」
「ああ?海にでも捨てとけ。あれ程の強者なら、普通に泳いで帰るだろうさ。魔王派のダンジョンマスターを殺せば、絶対にトラブルになる」
「わかりました。直ぐに伝達します」
シロは、そう言ってミカエルへ連絡を行う。その間俺は、モニターの側に縛り付けられた存在へと声を掛けた。
「という訳だ。貴様は海に捨てる。精々泳いで帰るのだな」
「····」
その存在は、不快感を露にした顔で俺を見る。不満バリバリといった感じだ。
「何とか言ったらどうだ?魔王軍第三軍所属、セイよ」
「····大魔王様の言った通りだな」
そう、その存在とはラファエルによって捕らえられてコアルームまで輸送されていたのだ。勿論道中に〈魔封じの手錠〉を付けて反抗を封じている。
「大魔王、ロワンさんだな?俺について何か言ってたか」
「ああ。お前のダンジョンは、中々に異質だからな」
「異質、ね?」
異質だと言われて俺は、少し首を傾げる。
「見当がつかないようだな」
「まあな。俺は、自分にとっての最善を選んでいると考えているからね」
「···ふん、ダンジョンモンスターを軍隊の如く運用し、後方支援や人間に対する諜報活動も怠らず、外界の存在までも勢力に迎え入れ戦力拡大、まるで国だな」
「何言ってるんだ?お前たちもナナさんもやっているだろう」
「そこまで見境なくはしてない。だが、お前はまるで急かされるように戦力拡大を行っている。なあ、〈未開の魔窟〉のダンジョンマスターよ。お前は、それほどの戦力を手にして何を目指す?」
う〜ん、コイツの言いたいことがわからん。戦力拡大なんて、他のダンジョンマスターだってやってるし、同僚の吸血鬼ダンジョンマスター、アルカだって現地の人間を吸血鬼にして使役しているではないか。
「そりゃあ、生きるためだ。何者にも害されない力を手にして俺は、限界まで生き抜くことが目的よ」
俺の目的は、依然として変わらない。力を手に入れて何者にも害されないダラダラ生活を実現するのだ!
「···なんとも、単純な目的だな。その力で世界を思うがままに操りたいとは思わないのか?」
「くだらんな。何故そんな面倒なことをしなければならない?統治とか人員とか、考えるのが面倒くさい」
そんなことよりも、ダンジョンに引きこもって漫画を読んだり、コタツに入りながら蜜柑を食べてゴロゴロしていたい。
「···随分無欲なことで」
「無欲?強欲だよ、セイくん。俺は、自分の欲望を実現するためにどんな力でも求めるのだ。それを強欲と言わず何と言うんだ?」
「···」
セイは、俺の解答に口を閉ざし黙り込んだ。俺は、そんなセイを横目にモニターへと目を向ける。モニターには、全身に大火傷を負いながらもジタバタと藻掻いているシャンガンの姿があった。しかし、治療が終わったミカエルを筆頭に、戦闘天使部隊に取り押さえられて、無力化されていた。
「さて、シャンガンは捕らえられた。後は、お前等を海に放り出すだけだな。【ゲート】」
俺は、なるべく魔王朝に近い海に繋げた。そして、ミカエルのいる第三十四階層にも【ゲート】を出現させる。
「さて、最後に言いたいことは?」
「···お前、これからも狙われるぞ」
「そうか。ならば、更に力をつけなければな」
俺は、そう言ってセイを【ゲート】の先へ蹴り飛ばした。同時にミカエルもシャンガンを【ゲート】の先へ蹴り飛ばしていた。
「さて、残りは」
「マスター、第三十五階層の森部分に転移された私兵団と冒険者ギルド本部副長ヤーコプ、私兵団団長ネクソスを確認。直ちに始末します。後、Bランク冒険者チームが一組です」
「わかった。絶対に生かして返すな。こればかりは、俺も行かせてもらう」
「はっ!」
俺は、シロの承諾を経たので俺はダンジョン第三十五階層へ転移した。
◆魔王朝付近の海域
「ドワァァァ!!??」
「···くっ!」
蹴り飛ばされたシャンガンとセイは、真っ逆さまになり海へと落ちていく。
「オオオ!?このままだと海面に叩きつけられるぞォォ!!」
「ヌゥ···っ!手錠がいつの間に!?」
セイは、いつの間にか〈魔封じの手錠〉が外れていることに驚きながらも魔法を発動させる。
「間に合え!【グループフライ】!」
飛行する魔法を発動させたセイに、肉体から白いオーラが発生し落下が止まった。そして、同様に白いオーラが発生したシャンガンも空中で滞空している。
「ふう〜、助かったぜ。ありがとな!」
「礼は良い。ところで、ここは何処だ?あのダンジョンマスターは、魔王朝付近の海と言っていたが」
「お?あっちの方から兄貴の魔力を感じるぞ!あっちじゃねぇか?」
シャンガンは、海の広がる地平線を指さしながらセイに話す。
「ふむ···。良し、さっさと戻るぞ?」
「おう!···で、分かったのか?」
「分かったよ。大魔王様の基準で言えば合格。アレは、神代に現れた黒き大災害に対抗できる可能性を有する者だ。この世界は、単純で強固な信念を持つイカれた者が強い」
セイは、薄っすらと笑いながら答えた。
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