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ダンジョン防衛作戦、第三十四階層⑤


◆神殿跡周辺の森 三番領域



 〈第三の邪眼〉を額に取り付け、より禍々しいオーラを放つようになったシャンガン。これには、流石のミカエルも冷や汗を流しながら口を開く。


「これは····、魔力量が増大した?身体能力まで?」


 ミカエルは、そこまで口を開いたが以降は頭の中で思考を行う。


(まさか、魔王派のダンジョンマスターにこんな切り札があるなんて。下手すれば下位の〈狂星〉でもあっさり殺られかねない··!)


「おいおい、何固まってんだぁ?来ないならこちらから行くぞ!」


 そこに痺れを切らしたシャンガンが突撃、ミカエルに拳を振るう。


「っ!チィィ!」


 ミカエルは、既のところで回避し羽で上空へと退避。そして。


「そんなに死にたいなら殺してやる!【熱雨(ヒート·レイ)】!」


 シャンガンに向けて再び【熱雨(ヒート·レイ)】を放射。熱線が次々とシャンガンに襲いかかる、が。


「またそれか!無駄だ無駄だ!」


 シャンガンは、あろうことが放たれた熱線を全て拳一つで相殺していくではないか。


「チッ!ならばこれならどうだ?!【熱弾(ヒート·バレット)】!」


 ミカエルは、シャンガンに【熱雨(ヒート·レイ)】が効かないことに舌打ちをしながらもバスケットボール並の大きさである【熱弾(ヒート·バレット)】を生成、発射した。


「む」


 【熱弾(ヒート·バレット)】は、亜音速並のスピードでシャンガンに飛んでいき、シャンガンの腹に着弾。そのまま爆発しシャンガンを閃光で覆い隠した。


「あ」


 ミカエルは、思わず情けない声を出してしまう。戦場で敵の姿を見失うのは、あまりにも致命的である故だからだ。ミカエルは、慌てて《魔力感知》を発動し。


 シャンガンが既に自分の背後へ移動していることを突き止めた。


「ふっ」


 だがそれは、あまりにも。


「気付くのが遅いわ間抜けめ!」


 遅すぎたのだ。


 ミカエルが振り向いたと同時に、禍々しいオーラを纏った蹴りがミカエルの顔面を直撃。ミカエルは、そのまま地上へと落下していった。


「そらぁ!追い打ちだ!」


 シャンガンは、ダメ押しとばかりに拳をミカエルの腹へと叩き込み、ミカエルを大地へめり込ませた。

















◆ダンジョンコアルーム カゲマサsaid



「おいいいいいい!!!??」


 俺は、ミカエルの顔面が蹴られて血液を撒き散らしながら落下していく様をみて悲鳴を上げる。


「し、シロォ!ミカエルが!ミカエルが!やはり、ここは俺が行くべき」

「いえっ!」


 俺は、ミカエルのピンチに自分が行くことを提案するが、シロは珍しく怒鳴って止めた。思わず俺は、ビクッと体を震わせて動きを止める。シロは、思わず怒鳴ってしまったことを詫びたあと、言葉を続けた。


「··マスター。確かに貴方様が出向けば、かの侵入者は討ち果たされましょう。しかしそれでミカエルの気は済みません。おそらくマスターの手を掛けさせたと、自分を追い込むでしょう。私としては、部下のそんな姿は見たくありません」

「···だが、あのシャンガンとかいうダンジョンマスター、〈第三の邪眼(サード·アイ)〉を付けて大幅にパワーアップしてるぞ?大丈夫なのか?」

「ご心配なく」


 俺の不安にシロは、自信をみなぎらせた顔で答える。


「マスターのダンジョン幹部がこれしきのことで負けはしません。だから、マスター。貴方様を彼女を信じてあげてください」


 俺は、その言葉にハッとなる。


(····ああ、何ということだ。自分はまた失敗を。ここは俺のダンジョン、そのダンジョンを守ってくれている彼女等を信じていなかったのか俺は。···恥を知れカゲマサァ!部下を、仲間を信じぬ男など所詮死ぬだけだと知れ!)


 仲間を蔑ろにした人間の結末など、大体が悲惨なものだ。俺も前世の世界でも、部下を蔑ろにした人間は、軒並みしっぺ返しにあったかの如く衰退していくのをこの目で見てきている。俺は、その衰退していく者たちと同じ存在になりかけていたことを恥じた。


「···ふぅー、ふぅー、わかった。ミカエルに任せる。信じるぞ?」

「··フフ、ありがとうございます。マスター」


 俺は、深呼吸をしたあとミカエルを信じることにした。何故なら、俺が丹念に育てた精鋭達の一人だからな!


 そんな俺の姿を見てシロは、嬉しそうに微笑んだ後モニターに視線を移した。

















◆神殿跡周辺の森 三番領域



 蹴り飛ばされ、殴られて地面にめり込まされたミカエルは、意識が少し朦朧となりながらも近くにあった岩に頭を強打し、無理矢理意識を取り戻す。


「お〜お〜、中々派手なことしやがる。というか痛そうだな」

「黙れ。貴様は必ずここで殺す」


 シャンガンが少し引くが、ミカエルは意に介さず殺意を漲らせて立ち上がる。額からは、ポタポタと血液が垂れていた。


「おほっ、スゲェ殺意。だがな?殺意だけじゃあ俺は殺せないぜ?」

「五月蝿い、私は·······はぁ!」

「あ?」


 ミカエルは、突如として殺意を霧散させた。そして、空を見上げる。頬は、赤く火照っておりまるで愛おしい者をみたような雰囲気だ。その変わりようにシャンガンは、思わず殴ろうとしていた拳を止める。


「·····はい!·····当然ですわ!····わかりました!私にお任せくださいませ、マスター!」


 内容を見るにどうやらダンジョンマスターと連絡を取っているようだ。そして、マスターどの通話を終えたミカエルは、不気味に笑い始める。


「ふ、ふ、ふひひひひひ、ヘヘヘへへへへ、ほほほほほほほほ」

「うわっ、気持ち割ぃ。なんだ?まさか、ガチでイカれたか?」


 あまりの不気味さにシャンガンは、素で気持ち悪いと言ってしまった。だが、ミカエルが気にした様子はない。


「ああ!我が偉大なる神にして愛しきマスター!貴方様の信頼、このミカエルしかと受け取りました!見ていてくださいまし!あのゴミ野郎を亡き者にして見せましょう!ああ、マスター!マスタァァー!マスタァァァァァァァァー!!!!」

「···うわぁ」


 シャンガンは、ミカエルのあまりの狂信ぶりにダンジョンモンスターであることを忘れてドン引きした。それと同時に警戒態勢を取る。今の叫びと同時に、ミカエルの魔力量が段違いに上昇したのだ。


「チッ、やりにくい敵だなぁ!ええっ?!」

「さあ、ゴミ野郎!今この場でその首、愛しきマスターへの手土産になりなさい!」


 シャンガンとミカエルは、再び激突した。

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