ダンジョン防衛作戦、第三十四階層②
◆ダンジョン第三十四階層 神殿跡
魔王朝から派遣された戦士であるセイとシャンガンは、ダンジョン第三十四階層の〈狂星〉であるミカエルと配下の戦闘天使達に襲われていた。
「ぬおおおお!!攻撃が激しいぞ!!セイ、なんとか出来ないか!」
「うるさい!とにかく数を減らせ!【ダークボンバー】!」
シャンガンが戦闘天使軍団の光弾を避け続け、セイに何とかするよう怒鳴った。対してセイは、光弾の雨を躱しながら闇魔法で戦闘天使と応戦している。
「だがよぉ!俺には対空攻撃ねぇぞ!」
「其処らの樹木を引っこ抜いて投げれば良いだろうが!」
「あ、それがあったか!」
セイの指摘にシャンガンは、ハッとした顔になり生えていた樹木を文字通り引っこ抜いて、構える。
「おおりぃぃやぁぁぁぁ!!」
そして、咆哮をあげながら樹木をぶん投げた。
「っ!!ガアアア!?」
横にクルクルと回りながら飛んでいった樹木は、逃げ遅れた戦闘天使達に当たり何体か撃墜する。
「よっしゃぁ!ザマァ見ろ!」
「あ!おい、馬鹿!後ろだ!」
当たったことにガッツポーズを取るシャンガンだが、セイの叫び声に慌てて後ろに振り向くと、剣を振りかぶった戦闘天使がいるではないか。
「死ね、侵入者」
「はっ!ようやく声が聞けたぜ戦闘天使!だがよぉ!」
しかしシャンガンは、振り下ろされた剣を落ち着いて回避し、顔面に正拳突きを撃ち込む。
「・・ぐ、は・・・・っ!?」
「俺を相手にするには、少々実力不足だなぁ!」
シャンガンの正拳突きは、襲い掛かった戦闘天使の首をへし折り絶命させた。その光景を見た他の戦闘天使は、シャンガンに狙いを定めて集団で襲い掛かる。
「「「仲間の仇だ!」」」
「お?敵討ちか?良いぜ良いぜ?殺気があった方が面白いしよぉ!」
シャンガンは、心底面白そうに拳を構える。そして身体中に魔力を漲らせると、シャンガンの肉体が濃い紫色のオーラに包まれていく。
「さあ、これが俺の戦闘形態、魔王朝起源の肉体強化術《闇纏い》だ!度胸のある奴から掛かってこい!」
「「「おおおおお!!!」」」
戦闘天使達は、シャンガンの変化に恐れることなく突撃していく。シャンガンは、ニィと笑うとその場から急加速し、即座に戦闘天使達の肉体へ拳を振りかぶる。
「これでどうだ?《破聖衝波》!!」
「なっ!?グアアアァァァァ?!!」
その叫び声と共に付きだされた拳。すると、拳から紫色の衝撃波が発生、戦闘天使達に襲い掛かり、戦闘天使達を吹き飛ばしてしまった。
「ガッハッハ!この技はなぁ、聖なる者、特に聖神信者なんかに特効の入る技なのさ!天使であるお前らにもしっかり効いたようだな!」
シャンガンは、高笑いしながら技を自慢する。その間に戦闘天使達は、憎々しくシャンガンを睨みながら絶命していった。
「けっ、うちの雑兵よりかは強ぇが、やはり歯応えがない!これじゃぁ調査も出来ん。もっと歯応えのある敵を出せ!」
そう文句を言いながらシャンガンは、再び樹木を引っこ抜いて上空にいる戦闘天使や指揮官の天使目掛けて樹木を投げ始めた。
◆ダンジョンコアルーム カゲマサside
「《破聖衝波》、だと?」
俺は、魔王朝の戦士であるシャンガンとやらが放った技に驚きを隠せないでいた。
「そんな技が存在するのか。しかし聖なる者ねぇ。勇者にも通用するんだろうか」
勇者も一応聖なる者に区分される。ならば、この《破聖衝波》を習得出来れば、勇者にたいする特効技を持てる。俺がそんなことを考えていると、シロが二枚の資料を持ってくる。
「マスター、こちらがあの二名の《鑑定》結果です。阻害はされましたが、私が《鑑定》したことで突破しました」
「見せてくれ」
「はっ」
俺は、シロから二枚の資料を受け取り、中身を確認する。そしてため息をはいた。
「はぁ~、やっぱりかぁ~」
「ええ、厄介なことです」
資料には、こう記載されていた。
名前 シャンガン・ベイ
種族 魔族
職業 ダンジョンマスター 魔王軍第三軍団所属
レベル 52
ランク A+
スキル 格闘王 闇魔法の達人 破聖拳 気配察知 再生 視線誘導 鑑定
名前 セイ・コーレン
種族 魔族
職業 魔王軍第三軍団所属
レベル 51
ランク A+
スキル 闇魔法の達人 格闘の達人 破聖拳 気配察知 再生 魔力障壁 暗視etc.
等々とあり、俺は予想が的中したことに頭を抱える。魔王朝の軍人二人を殺してしまえば、おそらく何らかの報復を受けてしまうと俺は連想してしまった。
「ど、どうしよう」
「マスター、どうやらセイ・コーレンと〈百魔〉ラファエルが接敵するようです」
「むむっ!」
俺は、連想を中断しモニターへ注目した。
◆ダンジョン第三十四階層 神殿跡
カゲマサがモニターを食い入るように見ている頃、セイは厄介な敵と相対していた。
「うふふ、ほらほら反撃してみなさいなぁ~」
「チィィ!!」
セイが拳を振るっても、ヒラリヒラリと躱しているのは、水色のウェーブがかった髪を持つ美女で頭には輪っか、背中には純白の羽という天使だった。
「糞っ!《破聖衝波》!!」
「うふふ、《魔力障壁》~」
セイが放った《破聖衝波》は、水色天使の《魔力障壁》によって防がれている。セイは、苦虫を噛み潰したよう顔で水色天使を見た。
「糞が、こんなときにシャンガンは居ないんだよな。俺は、どっちかというと支援向きなんだよ」
「うふふ、運が悪い人ね」
「ぬかせ」
水色天使、ラファエルは慈愛に満ちた笑顔で告げると、セイは唾を吐き捨てながら再びラファエルに襲い掛かった。
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