ダンジョン防衛作戦、第十六階層③
◆ダンジョン第十六階層二番領域
プラギと対峙したガルシアは、帝国の冒険者として潜入する際に聞いた〈神罰者〉マリアンナ・ミルムの言葉を思い出していた。
『ガルシア。貴女には、セブンス帝国南東部にあるドミニク辺境伯領のダンジョンについて、調べてきてほしいのです』
『セブンス帝国の?ああ、あの〈未開の魔窟〉とゆう通り名で有名なダンジョンですね?何故調べるのです?』
『私は、そこのダンジョンマスターと接触したことがあります』
『っ!?本当ですか!?』
『ええ。その際は、“冥府教”絡みでお互いの利益が合致した結果、痛み分けとなりましたが』
『ロディックの件ですか・・・。分かりました。要するにあのダンジョンの今後の動向について、把握したいのですね?』
『それもありますが・・・私が知りたいのは、その、ダンジョンの戦力です』
マリアンナは、少し歯切れが悪そうにする。ガルシアは、そんなマリアンナの様子に少し疑問符を浮かべる。
『戦力ですか?』
『ええ。・・・許してください。貴女をかのダンジョンに派遣することを。かのダンジョンは、私から見て成長力はどのダンジョンよりもトップクラス。私が潜った時から遥かに成長していたら、貴女の命を危機に晒してしまう』
『マリアンナ様・・・』
マリアンナが吐いたのは懺悔。ロシフェル聖王国で一番、〈未開の魔窟〉について知っていると自負するマリアンナだからこそ、あのダンジョンの成長力を危惧していた。そして、あの用心深いダンジョンマスターのことも。
『貴女が万が一ダンジョンマスターに出会ってしまったら、その時は』
『マリアンナ様、私は大丈夫です。ロシフェル聖王国聖騎士団に入った時から、覚悟は出来ています』
『・・本当にすみません。貴女に聖神のご加護があらんことを』
それらの言葉を聞いたときは、今思えば無礼なことに半信半疑だった。マリアンナがあのダンジョンから帰還して、まだそれ程経っていない。そんな短期間で成長するとは思えなかった。
プラギの存在を確認するまでは。
「オオォ!!」
「くぅっ!【聖光盾】!」
プラギの斧による一撃を【聖光盾】で防ぐが、すぐに《魔力吸収》のスキルで魔力を吸われ耐久力が低下、破壊された。
(強いっ!マリアンナ様の懸念は、大当たりです!)
《鑑定》で見た限り、ダンジョンにおける幹部クラスと思われるが、どの辺りなのかがわからない。最高なのか、中堅なのか、下級なのか。
「くっ、いいえ、今は生き残ることを優先しましょう!死んでしまったら何もかも無駄になってしまう!」
「安心しろ!貴様が死ねば、我等がダンジョンは一時の安心を得ることが出来る!無駄にはならんさ!」
そう言ってプラギは、再び斧を振り下ろす。ガルシアは、慌てて側面に回避した。が、振り下ろした斧から生じた衝撃波で、大きく吹き飛ばされてしまう。
「なんて、パワーですか!?」
「ふん!この程度で驚くな神官!【スリープポレン】!フゥーーー!!」
プラギは、勝利を確実にするべく、手の平から花粉を放出。そして花粉を息で吹き飛ばした。
「っ!?ね、眠気が」
「隙ありだ!死ねぇ、神官!」
ガルシアが突如として眠気に襲われ、その場に膝をついた。当然プラギは、その隙を逃さずガルシアに急接近し、斧を振り下ろした。
(だ、駄目、眠気が)
当のガルシアは、幾度もやって来る眠気で意識が朦朧としており、反撃が困難だった。その姿を見てプラギは勝利を確信した。
バリッ。
「はっ?」
ガルシアの来ていた法衣に魔法陣が展開され、そこから青白い雷が放出されるまでは。
プラギは、あまりの展開に硬直し青白い雷を喰らってしまった。
その間ガルシアの脳内では、再びマリアンナの言葉が響いていた。
『と、言ってもやはり不安です。なので、こちらを用意しました』
マリアンナが取り出したのは、一着の法衣だった。
『これは?』
『この法衣には、とある魔法が付与されており、貴女の命の危機に際して発動します。万が一の保険ですが』
『なるほど。で、その魔法とは?』
『それはですね』
「ガアアアアア!!クソ、クソクソクソ!!イテェぞ畜生ガアア!!」
プラギは、魔法陣から放出された青白い雷に身を焼かれうずくまっていた。その姿を見たガルシアは、朦朧としながらも笑みを浮かべる。
「発・・動、したの・・ですね。【聖雷収束砲弾】が。命拾いしま、した」
ガルシアは、マリアンナに感謝しつつ残った魔力を集める。
(この程度の魔力では、10秒が限界。でも、それだけあれば十分!)
「・・・結界魔法、【反転結界】!!」
その瞬間、ガルシアの周囲に結界が展開される。それと同時にスキル《超速再生》で傷を完治されたプラギが立ち上がった。
「ヌゥゥゥ!ふざけやがってぇ!」
「ふふっ、酷い顔ですこと」
ガルシアは、怒り心頭のプラギにせめてもの意趣返しに笑ってやると、プラギは更に怒り斧をブーメランの如く投げつけた。
「これで死ねぇ!」
「いいえ!私は死にません!何故なら!」
ガルシアは、手に持つ小さな石を地面に叩きつける。
「私の勝利だからです!」
石を叩きつけた瞬間、ガルシアが一瞬光った後、その場から忽然と姿を消した。プラギの投げた斧も空を切る。
「なっ!?ガっ、ッッ~~~~~~!!!!」
逃げられた。
そう確信したプラギは、声にならない怒りをあげた。
こうして、第十六階層での戦いは終わった。ガルシアが逃亡、冒険者+私兵団全滅という結果で。
無理矢理終わらせた感が凄い・・・。
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