ダンジョン防衛作戦、第六階層①
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◆ダンジョン第六階層 ダンジョン攻略部隊
ヤーコプ率いるダンジョン攻略部隊は、ゴブリンやオーク等をなぎ倒しながら奥へと進んでいき、遂に第六階層の前まで来ていた。
「ふん、やはり只の片田舎ダンジョンよ!我が戦力にかかれば造作もないわ!」
「ええ、ヤーコプの旦那の言う通りで」
ヤーコプが自信満々に言い放ち、ネクソスが嫌らしい笑みを浮かべながら肯定する。
「倒したの俺等だぞ?アイツの私兵団は全く動かなかったじゃないか」
「しかもちゃっかりお宝取ってるし」
ダンジョン攻略部隊で前衛を任されていた冒険者達は、後方にいたヤーコプと私兵団の態度に不満を滲ませる。
「落ち着け、立場はあっちが上なんだ。何かあって報酬を無しにされたいのか?」
「パ、パークスさん!」
冒険者達は、この場では最高ランクの冒険者パーティーの一つであるランクB冒険者のパークスの姿を見て慌てて口をつぐむ。
「まあ、気持ちも解るよ。実際彼等は、ダンジョン攻略という意識は皆無さ。ダンジョンを宝の山程度にしか見てないよ」
「···糞、嘗めてやがる」
「でも、今は進むしかない。俺達も彼の話に乗ってしまったんだからね」
「···はい」
パークスの言葉に冒険者達は、まだ不満を滲ませつつも納得して持ち場に戻っていった。
その後、少し休憩を取った後、ヤーコプは吠える。
「良いか!これより第六階層に行くぞ!布陣は、何時も通り冒険者共を前に我が私兵団を私の護衛だ!行け!」
ヤーコプの指示で冒険者達は、少し躊躇しつつも第六階層に踏む混んでいく。それに続いて私兵団もゾロゾロと続いていった。
「クックック、このダンジョンを攻略出来れば、私は更なる富と栄誉を得るだろう。そうなれば冒険者ギルド本部長の地位も夢ではない!」
「ヤーコプの旦那、その際は是非とも俺を」
「解っとる。私が本部長と成った暁には、冒険者ギルドの要職にしてやろう」
「へっへっへ、楽しみにしてますぜ旦那」
ヤーコプは、ダンジョン攻略後の己の姿を夢想してニヤニヤと笑い、ネクソスはそれに追従する形で笑った。
そんな二人を見ているのは、二人の黒ずくめ。顔はフードを深く被って良く見えない。
「む?何をしておるのだ。さっさとお前達もいけ!」
ヤーコプは、未だに留まっている二人の黒ずくめを急かす。二人の黒ずくめは、返事をすることなく第六階層に降りていった。
「チッ、外部での凄腕だとの噂だったが、余り使えんな」
「まあまあ、旦那。奴等は強いし戦闘じゃ役に立ちますぜ」
「ふん、だと良いがな!では、私達も行くとしよう」
そう言ってヤーコプとネクソスも第六階層に降りていったのであった。
しかし二人は気付いていなかった。いや、気付けなかったのか。
もう既に辺りが認識阻害の結界で覆われ、自分達の戦力がどうなってしまったのかが、全く認識出来ていなかったことを。
ヤーコプとネクソスは、第六階層への階段をおりていき、“ソレ”を踏んだ。
「ん?何だ?こ」
「なっ、罠」
ヤーコプとネクソスが気付いたときは、既に時遅し。二人は、設置された罠の光につつまれ、その場から消え去った。
「報告。ダンジョン防衛作戦第一段階、敵戦力の分断、成功」
◆ダンジョン第六階層 砦 マキアside
・・・遂にこの時がやって来た。
「マキア様、転移罠に掛かった冒険者及び私兵団が各領域に現れました」
部下である〈百魔〉のトロールキングの言葉を受けて、我は座っていた玉座からゆっくりと立ち上がる。
「···皆の者、マスターの作戦第一段階が成功なされた。これより第二段階の各個撃破を行う」
「「「はっ!」」」
「行くぞ。ダンジョンに踏みこんだ愚か者共を、血祭りにあげるのだ···!」
我は、偉大なるマスターのダンジョンに土足で踏みいる盗っ人共を見据えて、静かに怒りを滾らせながら再び口を開く。
「それで現れた領域は」
「はっ!一番領域と四番領域、七番領域です!」
「うむ、では増援として部隊を送れ。細かい調整はドングルに任せる」
「はっ!」
我は、トロールキングのドングルに指示を出すと愛用の金棒を持って歩き出す。
「···敵は全て、皆殺しだ」
そう呟きながら。
◆ダンジョン第六階層 一番領域
マキアが立ち上がり進み出した時と同じごろ、第六階層一番領域に転移させられた冒険者と私兵団達は、苛烈な攻撃に晒されていた。
「糞っ!糞っ!ふざけるなよ!何だよこれ!何なんだよコレ!」
「口動かす暇あるなら手を動かせ!」
複数の冒険者パーティーは、一纏まりになって攻撃を凌いでいた。敵は、第一階層で出会ったゴブリンやオーク等だったが、動きがまるで違う。
「糞がっ!モンスターの癖に連携だとぉ!?」
第一階層のゴブリンやオーク等は、冒険者を見るなり連携も無しに襲いかかってくる。しかしこのゴブリンやオーク等は違う。しっかりと前衛後衛と別れて攻撃し、傷を負っても直ぐに後続と交代、傷を癒してから直ぐ戦線復帰をしてくるのだ。そのせいで敵の戦力は全く減る気配がない。
「ぐっ、この、モンスターの分際で、ギャア!!」
「ヒッ!く、来るガァ!?」
「た、助け、ゴハっ!?」
対して冒険者と私兵団側の戦力は減る一方だ。共に転移してきた私兵団は、統率が取れていない。おまけに敵がゴブリンやオークだったので侮り、安易に仕掛けて殺害されていった。第一階層での体験もあるだろうが。
「チッ、使えない!」
冒険者側のリーダー格である男は、私兵団を見てそう吐き捨てた後、敵が後退していくのを見た。
「ん?何故後退を?」
冒険者パーティーのリーダー格の男は、疑問を覚えたがこれを良い機会と捉える。
「良し、何故か解らんが敵は引いた。お前ら、さっさとここから撤退するぞ」
「て、撤退ですか?」
「当たり前だ!こんなとこにいては命が幾つあっても足りん!」
冒険者パーティー側は、即座に撤退を決めた。彼等は、このダンジョンの難解さを痛感し、無理と悟ったのだ。
しかし、それがわからない愚か者達がいた。
「撤退だと!?ふざけるな!少しでもお宝を多く手に入れねぇと、ヤーコプの旦那に付いてきた意味がなくなるぜ!」
「奴等が消えた今がチャンスだ!宝を探せ!」
「奴等、案外びびったんじゃないのか?ヒヒヒ!」
と、あまりにも現状が見えていない発言にリーダー格の男は、言葉を失った。
(馬鹿な!?ここまで現状を認識出来ない輩を本部副長は雇っているのか!?馬鹿すぎる!)
男は、この時点で私兵団達を見捨てることにした。足手まといを抱えたところでなんの意味も無いからだ。
「お前等、さっさと行k」
ドオオオオオオオォォォォォォンッッッ!!!
男は、仲間の冒険者に声をかけたその時、私兵団達がいた辺りで、大きな爆発音が響いた。男は、何事かと振り替えると。
そこには、大きなクレーターと辺りに飛び散った肉片の数々。男は、その場で何かが爆発して私兵団達が殺されたことが解った。解らされた。
思わず飛んできたであろう方向を見て、言葉を失う。
(魔導砲、だと)
本来ダンジョンでは目に掛かることの無い兵器の登場に男は、呆然となり。
次に飛んできた魔導砲によって肉片と化した。
その後も魔導砲による砲撃が行われていき、十数分後。
「マキア様、こちら一番領域〈百魔〉ゴブテツ。一番領域所属の部隊により敵掃討完了。これより後始末に掛かる」
彼等は全滅した。
戦闘描写で難しいわ、本当に。
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