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ダンジョン前での一幕

地の文も難しいなぁ。( ;∀;)


◆ダンジョン手前の村 冒険者ギルド支部



「何度言ったら解るのかね!!」


ダンジョン前に作られた村にある冒険者ギルド支部。その受付カウンターで、一人の肥満の男が怒鳴り声を上げた。


「今から我々は、かのダンジョンを攻略しに行くのだ!!さっさとダンジョンに入る許可を出さんか!この冒険者ギルド本部副長であるヤーコプに逆らうのか!!」

「し、しかし、このダンジョンは危険です。第六階層に向かった冒険者パーティーが潜いましたが、誰一人として帰還してないのですよ?中には、名の知れた冒険者パーティーも」

「ええい!それは奴らが無能だっただけであろう!それに戦力なら問題あるまい!!」


冒険者ギルド本部副長、ヤーコプは冒険者ギルド支部の一角にいる集団を見る。


「私には、千人の私兵にランクB冒険者が二十人も居る!更には、私の権限で手に入れた魔剣や魔導具も潤沢に持ってきたのだ!この戦力があれば、こんか片田舎のダンジョン程度、容易に攻略出来るわ!」


ヤーコプは、自信満々に言い放つ。対して対応していた冒険者ギルド支部の支部長は、益々困り顔になった。


「で、ですが、ダンジョンの奥は未だに未解明です。いくら数を用意したところで返り討ちに会うとしか」

「おいおい、聞き捨てならねぇな支部長さん。俺達がそこまで頼りなく見えるかい?」


情報がないから危険と訴える支部長の言葉に反応したのは、ヤーコプではなくその後ろにいた柄の悪い男。


「おお、ネクソス!我が私兵団の団長よ!」

「俺達は、以前からダンジョンに潜った経験がある。それに、今回は兵や魔導具もたくさんあるんだ。そんな戦力で攻略出来ないダンジョンなんざ、帝都にある〈帝王の迷宮〉か東方大陸の〈大魔王の迷宮〉ぐらいだろうよ」

「うむ!そうであろう!いかにダンジョンでも、千人を越える戦力を弾き返せるものか!」

「ぐむう」


支部長は、ネクソスとヤーコプ言葉を聞いて益々不安が募った。明らかに油断している。大量の兵と魔導具があれば攻略できるとたかを括っているのだ。


(というか、冒険者ギルド本部副長でありながら、このダンジョンの不規則性を理解していないのか?それとも理解していてコレなのか?今代の副長は、随分と愚鈍だな)


このダンジョンは、非常に謎である。第一から第五階層までなら、ランクD冒険者で余裕である。産出される魔剣や魔導具、鉱石で利益が取れる。しかし第六以降は全くの謎。潜った冒険者パーティーが皆行方不明になったのだ。中には、ランクB冒険者パーティーが連合を組んで挑み、結局行方不明となったケースもある。極めつけは。


(かの勇者パーティーも、以前破れ去ったのだ。お亡くなりにはならなかったので良かったが、第六からは異常なまでに難易度が跳ね上がっていると見るべきだろう)


勇者パーティーが破れ去ったことを受けた支部長は、支部長の許可なく第六階層に潜ることを禁じた。冒険者の命を守ることを優先した結果である。


(しかし、よりにもよって)


やって来た本部副長は、そんな危険性を無視してダンジョンに入れろとわめき散らしている。目の奥に宿る欲望を隠す気もなく。


(恐らくこのダンジョンを攻略し、自分の管理下に起きたいのだろう。自分の利益の為だけに)


もはやヤーコプの頭の中には、ダンジョン管理における利益しかないのだろう。そう判断した支部長は、溜め息を吐く。


「はあ~~~、解りました。許可致します。しかし、ダンジョンに潜るのは万全の準備を施してから」

「ふん!初めからそう言っておれば良いのだ!ネクソス、行くぞ!」

「へい」


ヤーコプは、ようやく許可した支部長を睨み付けながらネクソスを伴って冒険者ギルド支部から出ていった。


「···ふ~」

「だ、大丈夫ですか?支部長」

「ああ、大丈夫だよ。たまに居るんだああいうのが。今回は渋々許可をだしたし、少しは痛い目を見て懲りてくれると良いんだが」

「あの、その件ですが。冒険者ギルド本部から手紙が来ています」

「何?本部から?わかった、すぐ確認しよう」


支部長は、部下の持ってきた手紙を読み、少し驚いた後、笑った。


「なるほど、な。了解した。その通りにすると本部に手紙を送ってくれ」

「はい!」


支部長の命令に部下は、返事をしながら駆けていく。それを見ながら支部長は、空を仰いだ。


「ふふ、あの副長も運が尽きたな」














◆冒険者ギルド支部隣 宿屋



夜。


冒険者ギルドの隣にある宿屋のとある一室では、四人の冒険者が集まっていた。


「どう思う?今回の依頼」


そう訪ねたのは、部屋の借り主であるBランク冒険者の人間パークス・ロアン。金髪碧眼で腰に差してある水色の魔剣が特徴の剣士。


「正直、来なきゃ良かったと思ってます」


自信無さげに言ったのは、少し尖った耳に緑色の髪を生やしたエルフの青年タロ・エルーゼン。背中に長杖、腰に短剣を差している。パークス・ロアンのパーティーメンバーだ。


「···激しく同意」


そう呟くは、手の中で人形をいじくり回す不気味な男。黒い外套を身に纏い、何度も人形をいじくり回しては止め、いじくり回しては止めを繰り返している。名をドトール・マリオネット。同じくパークス・ロアンのパーティーメンバー。


「このダンジョン、なんか不気味なのよねぇ~。こう、生存本能が刺激されるって言うの?ピリっ!てくることが多いのよ」


そう話すのは、パーティーの紅一点であり猫の獣人であるエマ・ニャントル。武胴着を着ており、武装は何もなかった。


「やっぱり皆もそう思うか···。報酬に釣られて来たけど、断って帰ろうかな?」

「ですが、依頼を断ってあの副長が何を言い出すか。我等の評判を落とそうとするかも知れませんよ?」

「···やりそう。アイツ性格悪そうだもん」

「ここまで来た時点で遅いんじゃない?」


パークスは、パーティーメンバーの言葉に溜め息を吐いて呟いてベットの上でうつ伏せになる。


「只の片田舎ダンジョンの攻略って聞いてたのに···あの副長騙したなぁ」

「···来てしまったからしょうがない」

「そうですね。ダンジョン攻略は明日だと聞きましたし、今回は早く休みましょう」

「そうね。じゃあむさい男共、お休み~」

「···むさいは余計」

「あははは、ではパークス。おやすみなさい」

「うん、おやすみなさい」


パーティーメンバーは、そう言って部屋を出ていった。そして一人だけになったパークスは、ボソッと呟く。


「そうだ、ここまで来てしまったんだ。やるしかない。





待っててくれ、妹よ。必ずお前の病気を直す薬を持ち帰ってやるからな」


パークスの呟きは、夜の空へと消えた。


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