防衛準備
短いかも。
◆ダンジョン コアルーム カゲマサside
『ああ、それ?私が誘導したのよ』
セブンス帝国皇祖帝であるナナ・セブンスは、通信魔導具越しにあっけらかんと言い放った。
「···何故ですか?とうとう俺も用済みなので、始末しようと?」
『そんなわけ無いでしょう。あの本部副長には、良く悪い噂を聞くので、確実に始末出来る環境に放り込んだだけ』
「ならば、貴女のダンジョンで始末すれば良い」
『私のダンジョンは、安定して稼げるダンジョンをコンセプトにしています。一気に千人以上殺したら、国民に怪しまれるわ』
一通り話した後ナナさんは、ハァと溜め息をついて呟く。
『まあ殺し過ぎると“冥府教”が動き出して、引っ捕らえるのが楽になるんだけど』
(それが本音かよ、くそったれが!)
要するにナナさんは、俺を“冥府教”を誘き寄せるためのカモにしたいのだ。チッ、いい気分ではないな。
「···もう良いです。それで報酬は?まさか只働きって訳じゃないんですよね?」
『勿論用意してあるわ。今そっちに転送させるから、ちょっと待ちなさい』
その言葉から約一分後、俺の後ろに魔法陣が展開され、魔法陣から大量の金銀財宝が出現したではないか。
「これは?」
『1000万DP相当の財宝よ。前金としてあげるわ。今回の仕事をクリアしたら、更に追加で5000万DPの財宝を送ります』
・・・すげぇな。こんな額のDPをポンッと出せるとは。今の俺のダンジョンにおけるDPだって、約800万程だというのに。試しに財宝をダンジョンに吸収させると、本当に1000万のDPとなった。
「···全て皆殺しで大丈夫ですか?」
『問題ないわ。後釜は私が決めたから』
(冒険者ギルド本部にも権力を持ってるのか··)
そりゃあ自分のダンジョンに入ってくる輩だ。コントロールしたくもなるか。
「了解しました。直ちに軍隊を編成し、圧殺します」
『そうしてちょうだい。···失敗したら、1000万DP返してもらうわよ?』
「···はい」
そう言い残してナナさんは、通信魔導具を切った。俺は、少しその場に止まった後、僅かに口を開き、
「···いらねぇ手間かけさせやがって」
と、吐き捨てて、〈六将〉の待つ部屋に転移した。
◆ダンジョン 会議室
俺は、ナナさんとの一連のやり取りを〈六将〉の皆に伝える。
「···千人以上の兵隊ですか」
「そうです姉上。だからこそ直ちに軍を」
「···」
「しかしナナ・セブンスとやら、カゲマサ様をなんだと思っているのか!カゲマサ様は、便利屋ではない!」
「む~!ムカつくの!」
「キラー、ワイズちゃん、落ち着くっす。今のオイラ達には、到底敵わないっすよ」
シロとクロは、やってくる冒険者の軍隊の対処について話し合っている。ゼクトは沈黙。キラーとワイズはナナさんの態度に憤り、ゴブイチが宥めている。
「というわけだお前ら。これから対冒険者ギルド本部副長の手勢に対する対策会議を行うぞ」
俺の一声で五人は、瞬時に静まり俺の言葉に耳を傾ける。
「敵の規模は、先程話した通りだが」
「ランクD冒険者五百人にランクC冒険者百人、ランクB冒険者二十人、雇ったごろつき紛いの私兵団千人、外部からの協力者二人、ですね?」
「そうだシロ。冒険者のランクだけ見ればそこまで驚異じゃない。しかし問題は、本部副長の私兵団と外部協力者の存在だ。どこまで強いのかわからん。故に万が一を考えて、総力戦に移行できるよう準備を整えろ」
「はっ!」
何時もそうだがダンジョン防衛は、必須の事柄だ。手を抜けるわけがない。抜けば死ぬ。
「シロ、お前は各階層に会った作戦を立案しろ。俺は、来るべきときに向けて鍛練を開始する」
「はっ!」
「他の連中は、直ぐ様階層に戻り兵器や罠などの点検を行え。本番に動きませんでしたでは堪らないからな」
「「「「はっ!」」」」
「は~い!」
「よし、解散!」
俺の人の声で〈六将〉は解散し、各々の階層に戻って行った。
その後、ダンジョンでは大急ぎで防衛作戦の立案、軍隊の編成。兵器・罠の配置が行われた。
ゴブイチ率いる第六~第十階層では、ゴブリンやオーク、トロール、オーガの新兵が増員され、火炎放射器や魔導砲などが配備された。
ワイズ率いる第十一~第十五階層では、飛行部隊による爆撃体勢を確立。荒野で身を隠す為の認識阻害魔導具も配備。
ゼクト率いる第十六~第二十階層では、各階層全域に猛毒の毒素をばらまいた。勿論階層兵士達は、毒耐性を獲得しているため何ら問題はない。更には、ダンジョン機能で日照りを強化し、体力の即時低下を狙っている。
キラー率いる第二十一~第二十五階層では、暗黒街に暗闇を利用したデストラップを多数設置。更には、豪華に見えるように塗装した瓶などをおいて罠に誘導する物も置いた。兵器も充実している。
クロ率いる第二十六~第三十階層では、各砦の強化に迅速な対応が出来るよう部隊を編成。ドラゴンに騎乗して戦う竜騎兵部隊も編成した。
シロ率いる第三十一~第三十五階層では、純粋に兵士の練度強化を行い、基礎を伸ばした。更には、綿密な情報収集体制と連携の強化も念頭に行った。
迷宮研究所では、所長のミレンダと武器開発部門長であるアイアンの主導のもと、新兵器開発にかかっている。開発に成功した兵器は、直ぐ様量産されて兵士に渡っていく。更には、研究所預かりの一部人工魔人達も各階層に配備した。
俺は、第三十五階層にある闘技場で、番人であるギオや人工魔人と組手を何回も繰り返した。ギオのパワーへの対処や人工魔人達の多彩な攻撃に対応出来るよう何度も何度も繰り返した。
そして、様々な準備を整えていき、
あっという間に一週間が過ぎ去った。
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