ダンジョン確認作業⑤
◆ダンジョン第三十階層 湿地帯 カゲマサside
勇者の卵であるアリアを人間牧場の纏め役に任命し、ゴミを処理した後俺は、キラーのいる第二十五階層の暗黒街から第三十階層の湿地帯に移動した。
俺は、湿地帯をゆっくりと進みながら第三十階層を見回す。水に覆われた大地に何やらマングローブのような木々が生い茂っている。木々には、小さなカエル型やトカゲ型モンスターが張り付いて此方を見ていた。しかも、所々に小さな湖がありワニ型モンスターが群生。地べたには、ヘビ型モンスターが這いずり回っている。
そんな第三十階層を歩いている俺だが、群生しているマングローブモドキの先に、巨大な岩山を見つけた。そして、その岩山から此方へ数匹のナニかが向かってくることも。
「あれって、確かワイバーンだよな?プテラノドンにそっくりだから間違えちゃうんだよなぁ」
向かって来たのは、数体のワイバーンだった。形はプテラノドンだが、体長はプテラノドンのそれより遥かにデカイ。そんなデカイ生物が俺の目の前に次々と着地する。すると、ワイバーンの背中からモンスターが降りてきた。
「お待たせして申し訳ありませんマスター!私は、この第三十階層を守護する」
「コンダだろ?知ってるとも」
「はっ!私如きの名前を覚えていただき光栄でございます!現在は、クロ様の元で守護の他に飛竜部隊の指揮を任されております!」
降りてきたのは、人形のヘビだった。ヘビの頭にヘビ特有の細長い体躯、太い腕と太い脚。軍服に身を包んだ彼の強さはというと。
名前 コンダ
種族 エルダーボア・ヴェノム
職業 〈狂星〉 第三十階層守護者
レベル 59
ランク A+
スキル 毒蛇王 槍術の達人 人化 身体能力強化 熱源感知 再生 魔力障壁etc.
と、こんな感じだ。普段は、人化しているらしいが本領はエルダーボア・ヴェノムとなった時からだそうだ。
「では、クロ様の居る竜岩城へご案内します!どうぞ、ワイバーンにお乗りください!」
俺は、その言葉に甘える形でコンダの操るワイバーンに乗り込む。そして、全員騎乗したのを確認した後、ワイバーン数体は一気に飛び上がった。
飛び上がった後、俺はコンダの話を聞くことになる。最近は、侵入者の数が下降気味で新兵の実践訓練の機会が少なくなったこと。第十五階層の〈狂星〉ポイズンと戦法が被ったので新しい戦法を考えていること。ドラゴンの出産数が増えたこと。魚が旨いこと等々、様々なことを聞けた。
「マスター!間もなく発着場に降ります!振動にお気をつけを!」
「おう」
俺は、平気だったが中々の振動だったぜ。さて、俺が降り立ったのはあの巨大な岩山の頂上で、そこにはワイバーンの他にも羽の生えたカエルやワニ、挙げ句の果てにはドラゴンまでいた。
「此方です、マスター」
「おう。····お前ら、任務ご苦労さん!これからも頼むぞ!」
「「「ッ!ははっ!」」」
俺がモンスター達を労うと、モンスター達は一瞬喜色満面になったが、直ぐに表情を引き締めて跪く。
「彼等への労い、感謝します。彼等も更に励むことでしょう」
「だといいな。さて、クロの所に急ぐぞ」
俺とコンダは、頂上の発着場から階段を降りて、竜岩城に入っていった。
◆第三十階層 竜岩城
竜岩城の内部は、入り組んだ鍾乳洞で出来ていた。松明が取り付けられ、周囲を照らしているが全体的に暗い空間が続く。巨大な泉がある空間や滝の流れる空間など様々な空間が存在しており、ダンジョンに居るという感覚を薄れさせる。
警備隊として、リザードマンや龍人の混成部隊が存在しており、湖の中にはカエル型モンスターや水棲のトカゲ型モンスター、ワニ型モンスターなどが潜み、数多くの罠が仕掛けられている。勿論監視カメラゴーレムや魔導砲も配備済みだ。
さて、そんか空間を抜けて俺とコンダは、クロの待つ竜岩城玉座の間へやって来たのだが。
「コンダ、俺が来る前に侵入者が来てたのか?」
「はっ。確かにマスターがお越しになられた数分前、一人の冒険者が転移罠にかかりました」
「成る程、だからこうなったのか」
俺とコンダが見たのは、玉座の間の中央でクロが侵入者であろう冒険者に尋問しているところだった。
「おい、いい加減にしろ。貴様等冒険者ギルドは何を企んでいる」
「お、オレはなにも知らないんだ!ただ依頼されたから来ただけで」
「そんな職業に付いているのに何を言って···おお、マスター」
尋問していたクロは、俺の姿を認めるなり臣下の礼をする。
「おう、クロ。尋問は順調か?」
「それが、あまり芳しくなく···。これがあの冒険者の《鑑定》結果です」
俺は、クロが手渡した資料に目を通す。
名前 シーク・カルカッタ
種族 人間
職業 冒険者ギルド情報部所属職員
レベル 36
ランク B
スキル 隠密の達人 聞き耳 影魔法 料理 忍耐
ふむ、成る程成る程。人間にしては中々のステータスだな。しかし情報部ねぇ。···まさかナナさんが関わってたりしないだろうな?
俺が考え込んでいると、クロが耳元で言葉を口にする。
「マスター、その資料にある通り奴は冒険者ギルドの間者。あくまで自分の愚考ですが、冒険者ギルドは我等がダンジョンに攻め混む算段なのでは?」
「あり得るな。今まで間者なんて放ってこなかったし。放ってきたのは、ロシフェル聖王国だけだ。···良し」
俺は、資料をクロに渡すと侵入者である冒険者ギルド情報部職員の前に立つ。視覚共有とかされたら面倒なので、幻影でまったく別の姿となってからだが。
そして俺は、一つのスキルを使う。
「《真実》。お前は、誰の命令でここに来た?」
「ッ!!??··ぐ、が····冒、険者ギ、ル··ド、ホン···部副··長!!」
おお、思いの外粘ったな。しかしスキル《真実》には勝てなかったらしい。・・・冒険者ギルド本部副長か。本部のNo.2かね?
「《真実》。本部副長とやらは、何を考えている?」
「ダ、ダ、ダン、ジョンの··利益、を····一人占めするため」
お、だんだん口調が滑らかになってきたな。しかし俺達のダンジョンを攻略して、利益を一人占めってか?コイツ、勇者サユリが負けたこと知らないのか?
「《真実》。本部副長は、勇者サユリの攻略失敗をどう見ている?」
「単に弱かったから、と」
・・・随分と自国の勇者に冷たいな。
「これが最後だ。《真実》。本部副長は、どれだけの戦力を用意する?進軍予定は?」
「ランクD冒険者五百人にランクC冒険者百人、ランクB冒険者二十人、雇ったごろつき紛いの私兵団千人、外部からの協力者二人。進軍予定は、一週間後」
中々の戦力だな。というか、それだけの人数をダンジョンに押し込められるか?いや、本部副長としての権力使えば行けるか。
俺は、吐いた情報部職員を【ヘルフレイム】で焼き殺し、DPにした後、クロに命じる。
「クロ、至急各〈六将〉をコアルームに呼び寄せろ。俺は、念のためナナさんに報告してからコアルームに行く」
「はっ、了解しました」
そう言って俺は、ナナさんへの通信魔導具がある部屋に転移した。
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